表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
749/754

第744話 停滞



 あの症状が毒によるものだったのか、異能やスキルによるものだったのか、それとも他に原因があるのか? 


 今の俺に分かるわけもない。

 が、この時間に症状が出ないってことは。

 回避できたのでは?


「何で黙ってんだ?」


 もちろん、時間がずれてる可能性はある。

 数分後に咳が始まる可能性は消えてない。


「おい!」


 消えちゃいないが、希望は見えてきた。


「聞いてんのか?」


「……ああ」


 ただし、そうすると。

 流れが大きく変わってくる。

 2人に咳症状が出てロビーに行く流れ、俺が襲われる流れからは完全に外れてしまう。


 なら、どう動くべき?


「有馬ぁ、今日のおまえはおかしいぞ」


「ほんと、朝からずっとおかしいわね」


「……」


「それで、有馬くん、魔法云々はあれだけど、ビーチに戻るとまずいのかしら?」


 やはり、ここは前回通り。

 この後の時間は宿のロビーで使いたい。

 だから。


「いえ、そういうことではないです。ただ……宿の方に異形の気配らしきものを感じたので」


 今はこの方便を許してほしい。


「なっ!」


「ビーチじゃなくて宿に?」


「はい、確実ではないですが」


 とはいえ、完全なる方便というわけでもない。

 襲撃犯の正体が異形で今も宿の中に潜伏している。

 その可能性は低くないのだから。


「そういうこたぁ先に言えよ。んで、古野白はどうなんだ? 感じんのか?」


「……いいえ、私には感知できないわ。けど、有馬くんの方が精度が高いから」


「ちっ、しゃあねえ。ビーチじゃなく宿に向かうぞ」


「ええ」


 とりあえず、少しは流れを戻すことができそうだ。






「有馬、どこが怪しいんだ?」


「……ロビー付近だと思う」


「はあ? ロビー?」


「さっきボクが通り抜けた時は何の問題もなかったけど?」


「私も特に異常を感じなかったわ」


「でしたら、その後に現れたのかもしれません」


「そうね、そういうことになるわね」


「まっ、中に入りゃ分かんだろ」


 と言って武上が走りだす。

 続くのは古野白さんと里村。

 俺と幸奈はその後だ。



「ねえ、功己」


 幸奈が顔を近づけてくる。


「さっきの話、ほんとなの?」


 そうか、見抜かれていたか。


「半分はな」


「えっ、半分?」


「あるいは3分の1」


 隠れているかもしれない襲撃犯は異形か異能者か普通人。

 なら、そう考えてもいいだろ。


「何? どういうこと?」


「後で説明する」


「もう、そればっかり」


 悪いな。






「おい、どこにもいねえじゃねえか」


「気配も感じないわね」


 その通り。

 今のロビーには俺たち5人だけだ。

 けど、だからといって、油断はできない。

 前回も前々回も僅かな隙をついて襲われているのだから。


「有馬くんはどう?」


「はっきりとは感知できません、が」


「が?」


「不穏な空気を感じます」


「確かに、嫌な感じがするような」


「ええ、ですのでもう少しここに留まりませんか?」


 油断せず警戒しながら待つ。

 とりあえず今はこれしかないが、どうだ?


「……そうね、警戒を続けましょう」


 ありがたい。

 なら。


「ところで、武上、体に問題はないか?」


「あ? いきなりどうした?」


「戦闘になるかもしれないんだ。体調は大事だろ」


「……まあな」


「それで?」


「問題なんてねえ」


 そうか、症状はないんだな。


「里村は?」


「えっ、ボク?」


「ああ」


「ボクも大丈夫だけど」


 よし。

 2人とも異状はない。


「私も問題ないわね」


「わたしも……」


 古野白さんも幸奈も。


「私たちより、有馬くんこそどうなの? 怪我や疲労は?」


「まったくありませんね。今すぐにでも戦えますよ」


「あれだけ戦ったのに?」


「ええ」


「ほんっとタフだよねぇ」


「……」


 あの時間から数分経過したが、武上、里村に自覚症状はなし。

 古野白さん幸奈も健常そのもの。

 何の問題もない。

 なら、もう大丈夫。

 とまでは言い切れないが、少なくとも今は襲撃者に注力できる。


「で、警戒するってあれか? ここで立ってるだけか?」


「いいえ、もう一度ロビーを見て回りましょ」




 再度捜索にあたること30分。

 皆で隅々まで見て回るも、異形も異状も見つからない。


「どこにも何もねえぞ」


 当然、襲撃なんて起こるわけもなく。


「っとに異形が隠れてんのかよ?」


 武上が苛立ち始めてしまった。

 と同時にこっちの焦りも募ってくる。


 もし、ここで襲撃者が現れなかったら?

 この流れのままに時間を過ごしていいのか?

 時間遡行を使わなくていいのか?


「……」


 もう既に前回、前々回の遡行時刻は大幅に超えている。

 今すぐ発動しても寝室には戻れない。

 おそらくは朝食が始まる直前ってところだろう。

 だから、時間遡行を使うなら今だ。

 毒が仕込まれる可能性が高い朝食前に戻ること、そこに大きな意味があるのだから。


 けれど、今回は武上が生きてる。

 この時間になっても症状が出てこない。

 もうこれは、武上の命を救うことができたと考えていいんじゃないのか?

 3度も死へと誘ってきた強制力、収束力を振り切ったと?


 であるなら、残る懸念はあの襲撃のみ。

 危険なのは他の誰でもない、俺ってことになる。


 この流れ、この状況で時間遡行を使う必要は……。


「古野白ぉ、気配はどうなってる?」


「感知できないわね」


 ない。

 時間遡行を焦る必要なんてないはずだ。

 ならば、今回はここからが勝負。

 必ず襲撃者を捕まえてやる。



「有馬はどうだ? 何か捉えてねえか?」


「有馬くん?」


「……微妙な感じです、さっき以上に」


「微妙だあ?」


「それって、どういうことかしら?」


「……」


 思考に入り込んでいたせいで、上手く言葉が出てこない。

 と。


「皆さん、どうしました?」


 三隅さんと美藤さんだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ