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第三十七話


背もたれの無い丸椅子に腰を下ろし、近くのテーブルを背もたれ替わりに寄りかかる

右足に食いつかれた傷口からは、血が滲み出ている。幸か不幸か、傷自体は

対して深くはなさそうだ。これなら布で縛って止血して、なんとかなるかもしれない。


少し呼吸を整えてから、俺はこの中を探索し始めた。


狭く窓も何も無い廊下を抜ける。そこにはエアシャワーがある。かなり大型で

通路のように長くなっている。もちろん動いてはいない。俺はその中を通り、

扉を開けた。左右にかかっている白い防塵服。服というよりはスーツに近いかも

しれない。俺はこの防塵服を手に取る。そしてその袖口を強引に引き裂き、

太股の傷にあてがった。少しキツめに縛って、軽く跳ねてみる。

少しはマシだな。


通路は暗く、足音が響く。手を壁につけながら慎重に歩く。

どのように歩いたのか、通路の壁際にガラス窓がある。手すりや、案内板が

あることから、客人を通す時の通路のようだ。埃で汚れた窓ガラスを手で

擦って拭き、中を伺う。


何を研究していたのか不明だが、部屋の中は白いカビのような物がびっしり

敷き詰められている。机、椅子、研究用のビーカー・・・何から何まで全部だ。

これは嫌な感じがする。俺はすぐに持っていたマスクを被った。


・・・地面に何かが転がっている。眼を細めてじっくり転がっている物を伺う。

よく見れば、地面に人間が転がっている。ひと目では気がつかなかった。

なぜなら、大量の白いカビ、そして無数のキノコのようなものがその人間を

覆ように生えているからだ。口や目、腹部を突き破って、生えている大きなキノコ。

この光景・・・昨日の首吊り死体とよく似ている。生えている量が桁違いだが

いつ頃からこれは存在しているのだろうか? 疑問は尽きないが、

ここからは離れた方がいいだろう・・・


暗い廊下、足音が反響して、自分の後ろから誰かが着いて来ているんじゃないかと

思わず錯覚してしまう。何度も振り返り、後ろを確認してしまう。

そんな廊下に濡れた後がある。俺自身ずぶ濡れだが、当然俺じゃない

こんな崩壊した建物だ。どこかから水漏れしてたって不思議はない。

しかしその濡れた後は、まるで何かが歩いたかのように交互に続いている。


・・・これは・・まさか・・・さっきの化物がこの中を・・・・

さっさとここを出て行こう。濡れた後を避けつつ、俺は進んだ。

廊下の先の十字路。だが道が塞がり、ひとつの部屋だけがかろうじて

勧めそうな状態だ。他に道も無い。姿勢を低くしながらその道を進む。

部屋の前まで来た。扉が傾き、普通には開きそうにも無いが、

一応、俺は手を掛け引っ張ろうと試みる。



ガウンッ!! ガウウゥゥゥンッッ!!!




突然響く音。間違いない、これは銃声だ! かけていた手を離し、

傾いたドアの隙間から中を覗く。


鈍い音と共に二人の人間が倒れている。防護服姿で銃を持った兵士だ。

ほどなく地面を鮮血が伝う。その横で足音がする。足首しか見えなくて

良くは分からないが、誰かがいる。そいつは兵士の顔からマスクを剥ぎ取った

そしてゆっくりコツコツと音を立てながら部屋を出た。


もう足音は聞こえない。大丈夫だろうか・・・

俺は傾いた扉を何度か蹴り飛ばし、開くことが出来た

中には二つの死体。よく見れば胸元に穴が空いている。二つの死体ともだ

こんな暗がりで正確に胸元だけを射抜いたのか? 信じがたいが・・・

まぁ何にせよ出会わない事を祈ろう。俺は死体から何かないかと

探した。銃の弾、それと肩に付けられたホルスターライト

俺は自分の肩に付けた。少しでも明るいほうがいいが、これが原因で見つかっても

嫌だな。使うのは本当に見えないほど暗いところにしよう。



しばらく歩いた先、重たい防火用の扉を開けると非常階段がある。

その階段を登り、また重い防火用の扉を開けると、光が差し込んだ。

外だ・・・・間違いなく外だが、そこに広がっている光景は眼を疑うものだ


机や椅子などが乱雑に置かれた目の前の部屋が真っ二つに割れて、

下には瓦礫の山が積み上がり、向かい側にも同じ様な光景が広がっている。

どうやら建物がここにあったが、なんらかの理由で倒壊してしまっているようだ。

俺が落ちた崩れた地面とは少し違うように感じる。なんというか

自然に倒壊した訳ではなく、故意に倒壊させているような・・・

倒壊したのは今日昨日ではない。部屋の所々に雑草とコケが生えている。


理由はともかく、ここからでは下に降りることが出来ない。また別のルートを

探さないといけない。ただ目の前にある机、オフィスデスクのような

机の引き出しが気になり、俺は乱雑に置かれた机の引き出しを開けて回った。


炭酸飲料のコーラだ。未開封、机の中に入って雨風から守られていたからか、

状態も悪くはなさそうだ。赤と白のラベル、世界で一番売れている飲み物。

俺は早速、蓋を開けた。パシュッ・・・と、勢いよく抜ける炭酸。そして香る

独特の甘い香り。俺は一気に喉に流し込んだ。痛みにも似た強い炭酸の刺激が

喉を突き抜ける! 胃に貯まると炭酸が支配し、腹が苦しくなる・・・

だが、やめられない何かがこの炭酸飲料にはある。喉を鳴らしながら、次へ次へと

俺はこの炭酸飲料を流し込んだ。





「・・・・ウェ・・・・・・ゲエェェェェェェ・・・・!!!!」





胃から解放されるように勢いよく口を通り、体外へと排出される炭酸ガス!


「ぷははぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・うまいッ!!!!!!」


思わずデカイ独り言が口から出てしまう。しかし、それほどこの飲み物は美味い。

炭酸飲料は様々なものがあるが、これほど何時飲んでも魅力を感じる飲み物は他に無い。

さすが世界で愛飲されている飲み物だけの事はある。後はポテチでもあれば

なんて流石に贅沢か? 俺は最後の一口を流し込み、ペットボトルから口を離した・・・






その瞬間だった・・・・






口から離したペットボトルが轟音と共に砕けるッ! 俺は思わず腰から地面に倒れ込んだ。

ペットボトルの底の部分だけが、俺の右手にある・・・。辺りを見回すと、入ってきた扉の壁に

穴が空いている。これは・・・狙撃された!? 俺は伏せながら机に隠れた。













・・・・まずいな。




狙われてる・・・・・・・










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