表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/39

第三十六話


俺は座席と白い風船に埋もれる。エアバックが開いたというのにすごい衝撃だ。

俺はエアバックを前方に押し出しつつ、ドアを開け、外に出た。


バチャ・・・


冷たい感触が、手足に伝わる・・・


水だ。地面からゆっくりと水が湧き、辺りを水場へと変えてゆく。

辺は薄暗く、俺は上を見上げた。


遠くに見える空、周りは何かの施設後だったのか、空間が有り、それがいくつかの

層になっている。かなり広い範囲が深く陥没し、俺は地上数十メートルから落ちてきたらしい

断層の途中、鉄骨の出っ張りに、先ほどの兵士がぶら下がっている。

逃げ遅れて巻き込まれ、あの鉄骨に突き刺さったらしい。眼を見開き、こちらを見ている

俺があの兵士のようになっていてもおかしくは無かった。

車の中にいたとはいえ、よく死ななかったものだ。さすが装甲車というべきか。

と、関心している場合じゃない。地上への出口を探さないと・・・

どうやらこの場所からじゃ装甲車は走らせていけないようだ。

残念だが、車は諦めてここを歩いて出るしかない


水が膝上にまで達している。これ以上増える気配は無いが、ゆっくりとはしていられない

俺は水を掻き分けて、歩き始めた。


バチャッ!!


重く跳ねる音がした。 瓦礫か何か・・・しかし、そこで奇妙なものを目撃した。


岩のように無骨で何枚かに連なった突起物。魚の背びれのような

それが水面に出て、水を波打たせながら進んでいる! 

瓦礫が水流に流されているのかと眼を疑ったが、それは明らかに

右へ左へと移動している。意思があるかのように・・・


まるで古いサメ映画のワンシーンだ。俺は一歩、足を後ろへ下げた。

すると察するようにピタッっと動きが止まる。まさか・・・な・・・

ほんの少し足を後ろに下げただけ俺に気づいたっていうのか?

もう一歩、俺は足を下げる・・・


サーッ


その無骨な背びれは俺に向かってゆっくりと近づいてきた!!

間違いない! 眼か、音か、波の振動か、匂いかもしれない。なんらかの

方法で俺の位置が水中からわかるんだ! この背びれのような物が

何なのかは分からないが、近づくのは危険だ! 


その時だ。ダラリと鉄骨に突き刺さっていた兵士の死体がずり落ち

水面に大きな波紋と水しぶきを上げる! 目の前まで来ていた無骨な背びれは

急に反転し、物凄い速さで落ちた死体の場所まで近づくッ!

ザブンと大きな水しぶきが一度上がり、そこを中心に水面には大きな波紋が

できる・・・。死体は視界から消えていた。


ブクブクと泡立ち、そして鮮血が水に広がる・・・。過剰ともいえる量だ

水の中で何が起こっているのか考えたくは無いが、想像は容易に付く。

引き込まれたらアウトだ。水の中に体が浸かっているのはまずい!

俺は辺りを見回す。崩れ落ちた壁面にわずかな隙間が見える。おそらく何かの

部屋だろうが、そこまでたどり着ければ逃れることができる。

・・が、かなりの距離がある。今、走り始めてあの場所までいく間に

気づかれたら、間に合わないかも・・・だが、今さっき落ちてきた死体を

貪っているのなら、俺を無視するかもしれない。何にせよ、動くなら

この瞬間しかない!! 俺はひと呼吸し、意を決して走り始めた。


膝上まで水が有り、水底は瓦礫で走りづらい。俺は振り返り、死体が引き込まれた場所を 

確認する。・・まだ追ってきてはいないみたいだ。まだ余裕がある。これなら


ドブンッ!!


踏み込んだ足が地につかず、そのまま体全身が、水の中へと吸い込まれていく!

暗がりで気がつかなかったが、平坦になっているわけではなく、川の深みのように

穴が空いている場所がある。人間くらいなら軽く飲み込めるくらいの深みが。

俺は水面に顔を出す。予想していなかった。泳がなくてはならない。しかし

小銃を抱えての泳ぎはぎこちなく、うまく泳げない。


もう少しだ・・・もう少し・・・もう目の前に目的の部屋が見えている。


・・・・


よしっ! 手が届いた! その瞬間だった。右足に何かがぴったりと

張り付いたのがわかった。瓦礫に届いた手を離し、小銃を構えようとしたが

一手遅かった。右足が抜けるような感覚と同時に、俺は水中に引きずりこまれる!!


突然の水中、肺に酸素を貯める暇なく、苦しさで頭がいっぱいになる!!

だが、この瞬間、またあの感覚が俺に現れる。


俺は水中で眼を見開き、脚に絡みついた何かに眼を向ける。

全体は人間と似ているが、骨と革だけの見た目、あばらが浮き上がり

皮膚はひび割れた硬いウロコのようになっている。それ以上に特徴的なのは

背中の突起。背骨が変形し、背中から皮膚を突き破り、ヒレのようになっている。

そして手は人差し指から徐々に長くなっており、小指は特に長く、それだけで身長の

半分位はありそうだ。目は白く濁り、見えていないかもしれない。

そんな未知の生物が今、俺の右脚にしがみ付いている!


化物の裂けた口が、開くと、口いっぱいに敷き詰められた歯が姿を現す!

あれに噛まれでもしたら致命傷だ! その口は俺の太股に噛み付こうと

している! 間に合うか・・!?


俺は小銃を向け引き金を引いた! だが、歯はゆっくり太股にめり込んでゆく!! 








「・・・・・・・・・ぶっっはああああぁぁぁっっ!!!!」








俺は水面に顔を出し、大きく深呼吸をした。


さっきの化物に弾は命中した。ダメージを追わせられたかは分からないが、

奴の口は俺の太股から外れた。一応の効果はあったんだろう。

そして俺から距離を取った。今ならこの瓦礫を登り、顔をのぞかせている

部屋へと入ることができる。









体中が濡れ、水を吸った服は重く、冷たい。そして部屋に入って自分の

足の痛みに気がついた。脹脛ふくらはぎあたりに締め後が、そして

太股にはいくつかの歯が突き刺さっていた。その歯は少しピクピクと痙攣

している。クソッ! 俺は刺さった数本の歯を抜き、地面へと投げ捨てた。

抜いた歯の傷口からは血が染み出している。


足を引きずりながら、部屋にあった椅子に腰を落とし、一息付く・・・








この部屋・・・・










辺りを見回すと、見た事もない機器が並べられている。

汚れ曇ったガラスケースに鉢植えのようなもの。シャーレやスポイトも大量に

机には置いている・・・何かの研究室だったようだ。








まぁ・・・ひと息入れられるなら・・・・・


どこでもいいがな・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ