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第三十五話


建物の陰に隠れながら、一歩一歩慎重に足を進めていく。

装甲車の真後ろの建物まで来ることが出来た。ここでタイミングを測る。

装甲車傍に立つ兵士は少し落ち着きが無いように感じる。挙動がおかしい

常に首を振り、辺りを見回している。 困ったな。 あんな風に警戒されてると

ちょっとした音でこちらに気づかれる。


どうにか注意を逸らせないだろうか・・・





ズズズズズ・・・・・





? なんだ? 地鳴りのような音。足から腹の上に伝わる振動。

兵士は首を振り、銃を構え臨戦体勢を取っている。どうやら俺の気のせいって

訳ではないようだ。今のが何なのかは分からないが、少し急ぐ必要がありそうだ。

俺は近くに落ちていた小石を拾う。そして装甲車の前まで投げた。


カツン・・・・


小さな音だが、緊張している相手には効果は十分。そんな音にも銃を構え

そして音がした方向に意識が集中している。俺はゆっくり装甲車までいき、

車体に張り付く。引き金に指を掛け、慎重に狙う。


・・・・・


あれだけ緊張していると言うことは、こういった状況には慣れていないと

考えられる。ということは、ここではない何処かからここに来ている。

つまり此処とは違う場所の情報を持っている可能性がある・・・

俺は引き金から指を外し、銃を腰元にしまう。

後ろから近づき、慎重に距離を詰める・・・




今だッ!!




俺は兵士の背中から覆いかぶさるように飛びつき、持っている銃を掴む!

そして胸元に引っ張るようにして相手の首を銃で締め上げる!!

兵士も抵抗し、もみ合い状態がしばらく続いた。


俺は兵士から銃を奪い取り、倒れ込んだ兵士に銃を突きつける。


「ひいいいぃぃいッッ!!!!」


兵士は怯え、顔を手でふさいでいる。


「いいか!? 動くなよ!!」


右手で銃を構えながら、左手で相手のマスクを剥がす。

これでマスクが手に入り、相手の言葉がこもらずに済む・・・


「今から質問をする・・・お前はそれに答えろ・・!」


強めの口調で脅しを掛ける。兵士は素直に頷いている。


「あんた達は何だ? 何が目的でこんな場所に、こんな装備で

 来ている?」


男はしばらく震え、言葉にすることを躊躇っているようだった。

俺は銃口を男の目の前にちらつかせる。


「サ・・・サンプルだ。サンプル・・・研究機関に届ける為の

 サンプル回収だ。ホントだ・・・」


サンプル・・・そういえば飛行機での兵士もそんな事を言っていたな。


「どこの組織だ?」


男は俺の質問に対し、首を振る


「し・・知らない。ホントだ! 嘘じゃない・・・俺達も聞かされて

 いないんだッ!! 俺達はただ回収の仕事を回されただけだッ!!」


兵士と言っても下っ端じゃそんなものか・・・俺は質問を変える。


「あんたの所属している組織の名前は?」


男は装甲車を指差す。指さした先を俺は目で追う。そこには何かの

ロゴマークが付いている。地球をモチーフにした形にカプセル型の薬と

注射器が象られている。どうやらこのロゴマークの会社が所属組織って

ことらしい。しかし妙だな・・・組織の名前が刻印されていない。

普通こういうロゴを作るときは組織名がわかりやすく示してあるものだろ?

ロゴは組織の顔だ。そこに名前が分からないなんてあるだろうか?


「で? この組織の名前は?」


男は首を振る。俺は強めにもう一度同じ質問をしたが、男は首を振り続けた。


「知らない・・知らないんだッ! 信じてくれッ!! 俺達だって

 何も聞かされていないッ!」


どうやらこれ以上は無意味か。だが他の質問ならまだ情報として

引き出せそうだ。


「あんた、さっき「回収の仕事」を回されたって言ってたが、

 どういう事だ? 他の仕事もあるのか? 他にどんな事をやらされるんだ?」


男はしばらく考えるように黙ってから、話し始めた。


「・・・お、俺達は回収を任されている。他にも運搬だったり

 戦闘後の処理だったり、基本的に「処理」や「回収」がほとんどだ。

 それ以外の仕事もあるかもしれないが・・・俺には分からない・・」


戦闘後の処理? 戦闘・・・


「戦闘後の処理って・・その戦闘って具体的にどんな事だ?」


「それは分からない・・・何と何が戦った後かなんて・・・

 ただ、悲惨な状況の後始末をやるんだ。薬莢を拾ったり、臓物や肉片をバケツに詰めたり

 あたり一面が真っ赤に染まってて、その洗浄作業だったりするんだ。」


男は俯き、間を取った後に話を続ける。


「一度だけ、作業中に一度だけ見たことがある。ヘリに積み込まれている姿を

 おそらくそれが戦っていたものだと思う・・。けど・・・なんというか・・・

 人間には見えなかった・・・人というよりはゴリラというかなんというか・・・」


まるでゲームや漫画の世界だな。 次はなんだ? 巨大な生物兵器とドンパチか?


 と、冗談はいいとして、訳の分からない情報が引き出せて、余計に分からない

事になったぞ。まぁ整理すると、こいつらは仕事でここに来ている。

そしてその仕事の内容は、サンプル回収と悲惨な現場の後始末。そしてこのロゴマークの

組織が関わってる事か・・・


「あんた、どこから来たんだ? 組織があるって事は住居や賃金。身元証明だってできるんだろ?

 あんた自身の事を詳しく話してくれないか? それと分かる範囲でいい

 今が何年だとか世界情勢だとか、近況の情報をできるだけ詳しく話してほしい。」


男は胸元で小さく手を振る。


「身元や名前は与えられたものなんだ。他の情報は知らされていない

 元々俺自信、どんな人間だったかなんて分からない

 俺もここの・・・いや、ここかどうかは分からない。もしかしたら似ている違う場所から

 引き上げられたのかもしれないが・・・」


「引き上げられた?」


「あぁ・・・俺は、いや、他の連中もきっと同じだ。自分が分からない状況で目が覚めて

 何日も何日も彷徨って、そしたらこの組織に拾われた。そして身元をくれた。

 隔離壁の向こう側に街があって・・・」


隔離壁。そういえば古い新聞の記事にそんな事が書かれていたな。


「街・・その部分についてもう少し詳しく・・」





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ッ!!!!






ものすごい地鳴り! なんだ!? 足元が急に沈んだ。エレベーターに乗った時

みたいな感覚! 何かまずいッ!!


「ヒイイイィィィッ!!」


男は一目散に走り出した。もう少し隔離壁の外にある街について聞きたかったが

仕方がない。ここから離れる方が今は重要だ。俺は目の前の装甲車の扉を開き

乗り込んだ。さて、鍵は付いたままってのが、いかにも新米って感じで

正直助かる。俺はキーをまわし、エンジンを掛ける。

エンジンは軽快に動き出し、俺はアクセルを踏み込んだ。








ドゴオォオオォォオオオオオオオオオオォオォオオオオオオ!!!!!!!!












轟音と共に宙を舞う感覚・・・・




まるでジェットコースターに乗っている気分だ。

エアバックが開き、俺は顔面をエアバックにうずめる。













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