表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

第三十二話


鬱蒼とした森。俺はまた、あてもなく歩いている。ポケットに突っ込んだ瓶を

取り出し、薬を2錠、手の上に乗せる。俺は薬を見つめながら、またどこかで

この薬が手に入らないだろうか? より多く・・・この薬を・・・

そんな都合のいい事を考えていた。 口に含み、唾液で薬を喉に流し込み、

俺は再び足を進める。


歩いていると、木々の隙間や、地面に見慣れないものが落ちている。

何かの破片のようだ。そしてその破片は熱を帯び、一部の破片はうっすら煙が

上がっている。かなり広い範囲に破片が点在している・・・一体どうなっているんだ?


しばらく歩きながら考えていたが、さっき見えた黒煙、何か関係がありそうだな。

分かる範囲で調べておく方がいいだろう。破片が徐々に大きな物へと変わっていく。

どうやら破片の大元にたどり着きそうだ。



薄暗い森に急に光射す場所が現れた。木々がなぎ倒され、地面が荒々しくえぐられている。

えぐられた地面は方向性があるようだ。俺は目線をその方向へ辿らせる・・・

遠くに何か見える。どうやら散らばっていた破片の正体のようだ。

俺は警戒しながら、近づいていく。



えぐられた地面の終着点。そこには飛行機のレドームから主翼前までの部分があった

小さく火がくすぶり、中からは黒い煙が上がっている。俺は中を覗いた。

中は簡素で、旅客機のような座席が一切無かった。そして奥に操縦室が見える

何があるかは分からないが、ここは調べておくか。



黒煙が上がる中、口元を袖で抑えつつ、俺は中を歩き、操縦室に辿り着いた。

中はかなり酷い状況だ。操縦席は二つ有り、双方にパイロットが座っている。

片方の座席のパイロットは何かの衝撃を受けたのか、被っているヘルメットが

ひしゃげ、顔が潰れ、胴体には機体の破片が無数に突き刺さり

すでに事切れている。もう片方のパイロットは機体に下半身を挟まれて

腹部から下が悲惨な状態だ。だが、こちらのパイロットはまだ息があるようだ。

これじゃ俺がどのように手を施しても助からないだろう。死んでしまうのは

時間の問題だ。ならせめて、何か有益な情報だけでも得られないか? 

俺はパイロットに話しかける。


「おい・・喋れるか?」


俺はパイロットの肩を揺すり、意識を確認する。


「た・・・助けて・・」


「大丈夫。助けが来る」


もちろん嘘だ。だが、安心させれば少しでも言葉を引き出しやすく

聞きやすくなるかもしれない。俺はパイロットの腕を掴み、頷いた。


「サン・・プル・・・が・・・」


サンプル? 何か積んでいたのか?


「回収した・・・サンプルが・・・逃げ・・・」


パイロットはその後大きく息を吐くと、そのまま息を引き取った。

サンプル? 回収? 何かここで回収したのか? これだけじゃ分からない。

聞きたかったのは、この場所の説明とか、どういった状況なのかとかなんだが

またいらない言葉を聞いてしまったな。やれやれ・・・


まぁ仕方がない。ここから回収できる物があるかどうか。

俺はこのパイロットのフライトスーツのジャケットに眼を止める。

たしか・・うろ覚えの知識だが、これって救命胴衣みたいなものだったはず・・・

早速パイロットのジャケットを脱がす・・・


かなり時間が掛かった。ぐったりとした人間から引き剥がすのに、こんなにも

時間と労力を使うとは。だが手には入れた。俺はジャケットを着てみた。

少し重い感じだが、保温性は高そうだ。暖かいに越したことはない。

他には・・・無いのか。拳銃の一つもあれば良かったんだが・・・

まぁこれだけでも手に入ったのなら良しとするか。




森を歩くと点々と散らばっている残骸が目に止まる。大きなタービン。羽の一部が地面に

突きたっていたりと、なかなか物々しい状態だ。こんな物が突然振って来て

森に住んでる動物達はいい迷惑だろうな。






・・・・・





ふと思うが、今までになんらかの野生動物や愛玩動物ペットを見ていない。

普通これだけの地域、街の中を歩けば、野生化した犬の一匹には出会っても

おかしくないはずだ。それが見当たらない。痕跡すら無かった。

俺が失念して見落としていたという可能性がなくもないが・・・



歩いた先、森が終わり、アスファルト舗装された道路が目の前に通り

挟んだ向かい側に小さなガソリンスタンドが見えた。

何かあるかもしれない。調べるか・・・


ガソリンスタンドの給油設備、洗車場、その何処もが錆びて今にも崩れて

しまいそうだ。ずいぶん前から使われていないのだろう。

ガラス張りになっている建屋の中を覗く。内部は広い。荒らされている

様子も無い。だが、ふと地面に眼を向けると、埃まみれの地面に

一組の足跡がある。新しいもののようなので、警戒しなければいけない。


足跡は奥の部屋に続いている。俺はそれをなぞるように歩く。

居る! 確実に・・・俺は意を決し部屋に入り、ナイフを構えた!!


・・・・・


居る・・居るには居るのだが、そいつはすでに息絶えていた。

眼を見開いたまま、天井からぶら下がって・・・

足元には折りたたみ式のパイプ椅子が横たわっている。

見たところ外傷はない。自ら命を絶ったように見える。

まぁこんな世界だ。気が滅入っちまって、吊りたくなる気持ちも

わからなくはない。


部屋の片隅にこの人物の所有物であろうカバンが置いてある。少し大きめの

リュックサックだ。俺は男の顔を見た後、カバンに手を伸ばした。







・・・・・






運がいい・・・中には缶詰が入っていた。

今日は飢えをしのげそうだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ