09. くまさんは時を遡った
みぃちゃんが死んでしまい、くまさんは葬儀会場を抜け出し走っていました。
しかし、気が付くとみぃちゃんの家の前にいて、そこでは…?
…え?
僕は目の前の光景が信じられなかった。
みぃちゃん?
「何でくまさんがこんな所にいるの?」
あの日、僕がみぃちゃんの家に帰ってきた日の、みぃちゃんのままだった。
「え?お母さん、何か言った?」
「えっ…いや!?何も!」
「家の中に入れてあげよう、可哀想だよ」
みぃちゃんがひょいっと僕を持ち上げる。
僕はまじまじとみぃちゃんを見つめた。
間違いない。あの日のみぃちゃんだ。これは、もしかしなくても…タイムスリップしたのでは!?
「もう、お母さんったら」
みぃちゃんが呆れて笑う。
みぃちゃん、みぃちゃん!
僕はこの前とはまた別に泣きそうになった。再会してこれほど嬉しいことはないだろう。
僕はみぃちゃんにしっかりと抱きついた。
そしてこの時僕は決意した。
もしも僕が本当に時を遡ったのなら、この、目の前のみぃちゃんが生きているのなら、僕は今度こそみぃちゃんを守ろう。何があっても、と。ぬいぐるみの僕なんかに出来ることなんて、あるのかわからないけれど。でも、やってみせるんだ!
※※※
僕はまずみぃちゃんを観察した。
みぃちゃんだ…!と嬉しい気持ちは一旦我慢する。
みぃちゃんは昔より大人びた顔になった。でも、昔のような元気さはない。よく見れば、少しやつれて、目の下には隈がある。笑うときも、少しぎこちない。でも、気丈に振る舞っている。
僕は次にみぃちゃんのお母さんを見た。
みぃちゃんのお母さんは、前より顔にしわが増えていた。まあ何年も経ったんじゃ仕方ないけれど。そして太っていたけれど、みぃちゃんと同じく少しやつれていた。
あと、ずっと眉間にしわを寄せている。すぐ声を荒げ、その度にみぃちゃんはビクリと怯えているようだ。そして時折かかってくる電話にはさらに声を荒げていた。
耳をそばだてる。電話の声の主は、みぃちゃんのお父さんの声だった。話の内容はよく聞こえない。
みぃちゃんは暗い目をしてため息をついた。そして僕を連れて、リビングを出る。
みぃちゃんが僕を机の上に置いて、寝た。僕も眠たくなったけれど、睡魔に抗った。
明日、みぃちゃんは家を出たらもう帰ってこない。なら、僕は何をする?
もちろん、みぃちゃんを助ける。でも、どうやって?
記憶を遡っておばさんたちの話を思い出す。
…そうだ、確か、事故でみぃちゃんは死んでしまったんだ。なら、少しでも時間を稼いで一分一秒でも、みぃちゃんの行動を遅らせよう。
でも、みぃちゃんはいつ事故に遭ったんだ?登校中?下校中?それとも、放課後どこかに行っていたのか?
わからない。じゃあ、一日中みぃちゃんを近くで見よう。そして、みぃちゃんを守る。
気がつくと僕は眠りについていた。
※※※
「行ってくるね、くまさん」
みぃちゃんの声でハッと目が覚める。ポンと頭に手をのせられた。僕は慌てて動かないように努めた。そして、部屋を出たみぃちゃんの後をこっそりついていく。
みぃちゃんは昔と違って背が伸びたこともあり、歩くのが速かった。時々小走りになりながら置いてかれないように歩く。
「…さん、おはよー」
みぃちゃんが誰かに声をかけられていた。男の子だ。その子はみぃちゃんと違って、笑顔だった。
気がつくと、学校に着いていた。大きな門に、たくさんのみぃちゃんと同じ服をきた人たち。眠そうな子も、楽しそうに笑っている子も、たくさんいる。みぃちゃんも笑っているけど、やっぱりぎこちなかった。
「何あれ?ぬいぐるみ?」
おっといけない。僕が動いているところを見られたらだめだ。物陰に隠れて、みぃちゃんと距離が開きすぎないようにしながら、ぼくは着いていった。
第二章「TURN2」開幕です
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