第37話 元部下と模擬戦
暇を持て余している間に俺は広間で一人訓練をすることにした。
今の鈍った俺では全盛期ほどの実力を発揮できないからだ。
そんな状態で絶死の戦場に立つほど傲慢ではない。
「にしても、本当に鈍ったもんだな」
体を動かすごとに、剣を一太刀振るごとに。
魔法を一度使うごとに自分が鈍っていることを実感させられる。
自分自身がイメージしている体の動きと実際の動きが全くもってリンクしていない。
「はぁ、この剣をこうやってちゃんと振るのも久しぶりだしな」
アリエルから貰い、俺が解任されたときに変換したはずの宝剣。
ハイスカイ王国にとっての国宝。
吸魔剣マジック・イーター。
イリアに渡してもらったこれで何とか戦況を変えないといけない。
「レイス様、鍛錬でございますか?」
「……いつの間に。てか、いつ入ってきたんだよエスカ」
暇を持て余して鍛錬をしていると後ろからエスカが声をかけてくる。
本当にいつの間に戻ってきたのか。
全く気配を感じなかったぞ。
「今さっきですね。レイス様が真剣に鍛錬をしているようだったので邪魔しては悪いかなと思いまして」
「邪魔なんかじゃないさ。それよりも久しぶりに模擬戦でもしないか? 自分がどれだけ鈍ってるかを確認しておきたい」
「それは良いですけど、どのくらいでやりますか?」
「できる限り全力で。相手に怪我をさせないレベルで魔法の使用もありにしようか」
エスカ相手なら俺も余すことなく全力で戦うことができる。
魔法も使えるし、こいつは今のハイレス王国の騎士だ。
つまりはゴリゴリの現役。
そんな相手と模擬戦をしていたほうが自分がどれだけ鈍っているのかわかりやすいだろう。
「わかりました。武器も使っていいですよね?」
「当たり前だ。俺もこいつを使うつもりだからな」
鞘から愛剣を引き抜いてエスカに見せる。
元々俺の部下だったこいつは俺の戦い方をかなり熟知している。
だから、苦戦は免れないだろうし三年間も前線を離れていた俺と三年間騎士として生きてきたエスカとだったら圧倒的な差が生まれているはず。
「やっぱりあなたが持っていたんですね。まあ、何も見なかったことにしますよ」
一応は一国の宝剣だからな。
俺みたいな一般人が持っていると問題になるのかもしれない。
ハイレス王国はハイスカイ王国の物を全て引き継いでいるが、この宝剣だけは俺が持っているから引き継ぐことが出来ていない。
「助かるよ。じゃあ、やろうか」
「ええ、いつでもいいですよ」
俺たちは広間にて、互いの得物を構えながら真剣に向かい合う。
エスカの持っている武器は槍だ。
相変わらず、構えから隙がない。
下手に飛び込んだら串刺しにされかねない。
この緊張感、強者を相手にしたときに威圧感。
本当に久しぶりだ。
「さて、どう攻めたもんかな」




