第34話 アリエルと辺境でぐーたらするために
「奪還って簡単に言うなよな。もうテラソルス王国は陥落してる。それに、多分だけどルナセリアが昔から王国と取引をしていた。だから、兵士たちもすでにルナセリアに吸収されてるはずだ」
今回の侵攻はただ攻め落とされたわけじゃない。
完璧に売国されたような形だ。
つまり、俺たちが奪還に仕える兵力はほとんどない。
「そうなのですか? だとしても、レイスがいれば。いえ、私の一番の騎士がいれば奪還程度容易いでしょう?」
「簡単に言ってくれるけどな。どれだけの労力がかかるかわかってるのか? それにそんなことをしたらただじゃすまないぞ?」
「レイス、やろうと思えば可能なのか!?」
俺とアリエルが話しているとアルカが興奮気味に立ち上がる。
国が取り戻せるかもしれないとわかって彼女も興奮を隠せないようだ。
「……可能か不可能かで言えば可能だろうな。確率はかなり低いが」
今回は動かせる兵力が少なすぎる。
何よりも、今の俺にそこまでしてやるメリットがない。
命を懸けるに値するほどの目的があるわけでもないのだ。
「じゃ、じゃあどうか私の国を助けてくれないか! 報酬はなんだっていい! 私の体でも金でも。用意できるものは全て渡す。だから……」
「私からもお願いです。私が差し出せるものであればなんだって差し出しますからテラソルス王国を救っていただけませんか?」
「……ものすごく断りづらい雰囲気になってるんだが。いや、う~ん」
ここで俺が簡単に頷いてしまうわけにはいかない。
今の俺はアリエルの騎士のつもりだ。
アリエルの意見を聞きたいのだが……
「レイスお願いしますね。あなたなら何とか出来るでしょうし。お二人もここまで真剣に頼んでいるわけですし」
「簡単に言ってくれるよな。本当にさ」
「簡単だとは思っていませんよ? 私はただ、あなたを心の底から信用しているだけですので」
アリエルは曇りなく俺の事を真っすぐ見据えてくる。
こんな信頼を向けられたら騎士として、答えざる負えない。
全く、どうやら俺は再び一国と正面から戦わないといけないらしい。
しかも、今回に関しては増援や援護はほとんど望めない。
「わかった。やるよ。やればいいんだろ? だけど、やるにしてももう少し戦況の把握はしたい。エスカがここに立ち寄ると言っていたし、それまでは待機だ」
もしかしたら、ハイレス王国の支援を受けれるかもしれないしそうでなくともエスカが一人ついてきてくれるだけでかなり変わる。
情報も欲しいからまずはエスカを待つことにしよう。
「アルカ殿下、レイスを貸し出すのでもし王国を取り戻した暁には穏やかな辺境の地を私たちに下さいませんか?」
「辺境と言わず、王都の一等地でもいいのですが……」
「いえ、私はレイスと二人でゆったり過ごしたいので。せっかくお父様にもらった命ですから。ただのアリエルとしてゆったり過ごしたいんですよ」
アリエルは微笑みながらそう言う。
確かに、昔からアリエルは穏やかな生活を望んでいた節がある。
そう言う意味では確かに賑やかな王都よりも辺境の地の方がゆったりできるのかもしれないな。
「わかりました。そういう事であれば。テラソルス王国を奪還した暁には辺境の地を丸々お譲りいたします」
「では、交渉成立という事で。レイス、私たちの穏やかな辺境ライフのためにも頑張ってくださいね」
「わかったよ。アルカ、追加で俺もお願いいいか?」
ゆったり過ごすのであれば俺もアルカに一つ要求をしておきたい。
「この際いくらでもいいぞ。国が取り戻せるならな」
「じゃあ、一生生活に困らないくらいの金をくれ。その金で辺境の地で一生ぐーたら過ごすからさ」
「わかった。それでいいぞ」
こうして俺は一国を敵に回すことと引き換えに一生アリエルと辺境の地でのんびりする権利を得た。
まあ、国を取り戻せたらの話だけどな。




