第33話 これからの目標
「まずは、レイスが一番気になっているであろうことからお話ししますね。どうして《《私が生きているのか》》を」
その言葉をアリエルが言った途端に座っている面々の顔に緊張が走る。
それはもちろん俺も同じだ。いや、俺が一番緊張しているのかもしれない。
ルルアだけはあまり緊張していないように見えるけど、それは仕方のない事だろう。
「私がレイスを解任した後に、ハイスカイ王国はグランド帝国の侵攻に遭いました。そこでお父様やお母様は全員亡くなりました」
「……」
アリエルが話したことは俺が全て知っていることだった。
付け加えるとするならば、目の前にいる少女アリエルも殺されているはず。
それが俺の知っている事前情報だった。
「ですが、私は逃がされました。お父様の手によって。結果として私は命を得てアリエル・ハイスカイは死にました」
「どうやって逃げ切れたんだ。グランド帝国はお前の生首を掲げてたんだぞ?」
俺はこの目で見た。
だから、あの国を《《滅ぼした》》。
イリアの指揮下に入って、テラソルスの騎士としてグランド帝国を滅ぼした。
あの生首が偽物だったとは考えづらい。
「偽物ですよ。お父様の最後の魔法です。あれのおかげで私はこうして逃げ延びることが出来ました。あなたがグランド帝国を滅ぼしたのも聞きましたよ」
「陛下の魔法……そうか。幻影魔法か」
ハイスカイ王国の国王、アレス・ハイスカイ陛下の固有魔法。
その可能性を完全に失念していた。
「で、私はあなたが使っていたこの隠れ家に身を隠していたんです。エスカには感謝しないといけないですね」
にひひっと彼女はイタズラ娘のように笑っている。
もう二度とみられることが無いと思っていた顔だ。
本当に良かった。心の底からそう思う。
「その感じで言うと、エスカがアリエルの面倒を見ていたのか?」
「面倒というほどでもないですよ。ハイレス王国の騎士である彼がそうそう私に構っているわけにもいかないでしょうしね」
「食料品や生活必需品を届けてもらったのか。あいつ、知ってて俺に黙ってたな」
さっき森であった時にこの事を言わなかったとか。
次会ったら絶対に一発は殴る。
「そうです。それで、どうしてテラソルス王国の王女様と公爵であるイリアがこんな辺境の地に? ハイレス王国を侵攻するにしても、偵察にあなた方が来るなんてことは無いでしょうし。訳ありですか?」
「ああ、そのことなんだがな」
当事者二人に話をさせるのは流石に酷だと判断した俺は二人に代わって現状の説明をした。テラソルスがルナセリアの侵攻を受けて陥落したこと。
その調査にエスカが向かったことも一応付け加えて話しておいた。
このことを知らないことを見るに、本当にアリエルはもうハイレス王国との関りは無いようだ。
「なるほど、それでレイスの隠れ家に一旦身を隠すことにしたんですね」
「そうなります。お邪魔してしまって申し訳ありません」
「いえ、イリアが謝る事ではないですよ。そもそもこの場所はレイスの所有物なので今の私はごく潰しみたいなものです」
「おい、ごく潰しは俺の職業だ。勝手にとるなよ」
俺はアリエルの軽口に軽口で返す。
でも、俺は三年間ごく潰しをしていたわけだから軽口ではないのかもしれない。
うん、絶対にイリアには俺がごく潰しをしていたことを秘密にして貰わないといけない。
「それで、アルカ殿下は今後どうするおつもりですか?」
「……私としては王国を取り戻したいと考えています。可能かはわかりませんが」
「……」
イリアも黙ってはいるが頷いている。
同じ意見のいう事は見て明らかだ。
ルルアは疲れてしまったのかウトウトしている。
本当に緊張感がない奴だ。
「……なるほど。レイスはこれからどうするの?」
「アリエルが生きてるとわかった以上は俺はお前と一緒に居ることにする。問題なければだけど」
「問題があるわけないでしょう。私もあなたとは会えないと思っていたのでこうして会えてうれしいです」
「いきなり解任されたときはびっくりしたけどな。ま、こうして会えたからいいや。これからアリエルはどうしたい? 君がしたい事を俺が成して見せる」
昔からアリエルがしたい事を成すのが俺の目標だった。
だから、今回もアリエルがやりたいことを達成するために動くことにしよう。
「では、一つだけお願いがあります」
「何なりとどうぞ」
妙に畏まった口調で俺はアリエルの前に膝まづく。
そして、アリエルは告げるのだった。
「では、テラソルスを奪還することにしましょうか」
笑顔で、さも当たりまえのように。




