第32話 生きていた最愛の主君
「れ、レイスなのですか?」
「ああ。正真正銘レイス・グランバードだ。久しぶりだな。アリエル」
「久しぶりですね。三年ぶりと言ったところでしょうか?」
「そうだな。てっきり俺はお前が死んだんだと思ってたんだが、本当に生きててよかった」
俺はなりふり構わずアリエルを抱きしめた。
もう二度と見ることは無いと思っていた姿。
聞くことは叶わないと思っていた声。
アリエルの存在を確かめるかのようにして彼女を強く抱きしめる。
「懐かしいですね。こうやってあなたに抱きしめられるのは」
「三年ぶりだからな。もう少しこうしてても良いか?」
「私的には全然大丈夫なんですけどね。後ろの方々がポカンとしていらっしゃるので先に説明をしたほうが賢明かもしれません」
アリエルにそう言われて後ろを振り返るとアルカたちは三人ともその場に立ち尽くしてポカンとしていた。
完全に置いてきぼりって感じだな。
ありゃあ。
「あ、アリエル様!? どうしてあなたが生きていらっしゃるのですか? 三年前に亡くなったと聞いたのですが」
「久しぶりですねイリア。そのことも含めて説明いたしますので、まずは座られてはいかがですか? お茶でも出しますよ」
「いえ、殿下にお茶を淹れさせるなんて…」
「今の私は王女でもなんでもありません。ただのアリエルです。そう言うわけで敬語も不要ですよ?」
アリエルはイリアにとても落ち着いた口調でそう言う。
イリアはどう対応をすればいいのか困ったらしく、俺に視線を送ってくるが俺は首を左右に振って彼女に諦めろと暗に伝えた。
「で、ですが……」
「えっと、その人は誰なのだ?」
「ルルアは知らないのか。まあ、傭兵だったもんな。いちいち国の王女の名前なんか憶えてられないか」
微妙な空気になりかけたところでルルアが首を傾げて問いを投げかけてくる。
説明するのは俺が一番適任かな。
「この人は、元ハイスカイ王国の第一王女で俺の主君だ」
「え!? ハイスカイ王国の王族はみんな死んだんじゃなかったのか?」
「ちょ、ルルア。いくら何でも失礼だぞ!?」
アルカは焦ったようにルルアの口を塞ぐ。
そう言えば、アルカとアリエルって面識があったのかな?
「大丈夫ですよ。本当に今の私はただのアリエルですので。それよりもどうしてレイスがアルカ殿下とイリアを連れてこんな辺境の隠れ家まで来ているのですか? そう簡単に連れ出せる人たちでもないでしょう」
「色々あってな。俺もまさかここでアリエルに会えるなんて思ってなかったよ」
「にしては、感動が薄そうですね。もっと涙を流したりしてもいいんですよ?」
「……なんだか、まだ実感がなくてな。もしかしたら夢なんじゃないかとも思ってる」
もう死んだと思っていた人物が突然目の前に現れたのだ。
流石の俺も同様くらいするし、夢なんじゃないかって疑いもする。
「それもそうですね。ま、一旦座ってくださいよ。いろいろお話もあるようですしね」
そう言って俺たちに着席を促したアリエルは一人キッチン部分に消えていった。
「れ、レイス。本物だと思いますか?」
「間違いなく本物だな。俺自身戸惑ってるがそれよりも、アリエルが生きててよかったって言う気持ちが勝ってる」
「でも、一体どうしてなんだろうな。私もイリアも生きてるなんて聞かせれてないぞ?」
「それは今からあいつが説明してくれるだろうさ。とりあえず、座ろう」
俺は疑問符を浮かべる二人に着席を促す。
そんな俺の背後からルルアが抱き着いてくる。
「どうした?」
「良かったな。主君が生きてて」
「ふっ、ありがとな。ルルア」
俺はルルアの頭を撫でながら礼を言う。
きっと彼女は気が付いていたのだろう。
俺が全く立ち直ってなどいなかったことを。
短い付き合いなのにそこまで見抜けるのだからルルアの洞察力は本当にすごい。
「俺たちも座るか」
「うん!」
こうして俺たち二人もリビングに設置されている椅子に座る。
真ん中にはそれなりに大きな机が置かれておりそれを囲む形で俺たちは腰を下ろした。
今からどんな話がなされるのか。
少しだけ緊張感を抱きながら。




