↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣も鎧も装備できない遊び人ですが、指輪なら何個でもつけられるので最強でした ~拾った建国の名剣は物干し竿にしています~  作者: 黙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/48

第26話 一人足りない

腹が減ってる時に、客が来た。

松明を持ち、腰に剣を下げ、背中に弩を背負った男たち。最後に降りてきた男が、砂を払いながら立ち上がった。顎に古い傷がある。こいつが頭目らしい。

頭目は、光る街を見回して、口笛を吹いた。


「本当に、あったぜ」


それから、俺たちに気づいた。目を細めて、俺の顔をじろじろと見る。


「その顔……ハルカの遊び人か」

「誰だよ、お前」

「伯爵様の手の者さ。門の前で、サボテンタを抱えて沈んでいくのを、砂丘の陰から見てたんだよ。真似したら、このとおりだ」

頭目は、にやりと笑った。

「遊び人が案内役とはな。伯爵様が、さぞお喜びになる」


後ろの男たちが、げらげら笑った。

笑いながら、俺たちを放って、広場の壁へ散っていく。


「変な絵ばっかりだな」

「おい、こっちだ!」


広場の脇の通りから、声がした。

通りの突き当たりの壁一面に、大きな絵が彫られていた。

杖をついた男が、歩いている。旅の袋を背負い、足元には輪の紋様が道のように続いて、その先に波が描かれていた。縁取りに、金が埋め込まれている。

頭目が、のみと槌を取り出した。


「金だ。剥がせ」


男たちが壁にとりつく。

かん、かん、と石を叩く音が響いた。杖の男の顔が、欠けて落ちた。


「やめてください!」


マレだった。帳面を抱えたまま、壁の前に飛び出していく。


「神代の壁画ですよ!? 誰も読んだことのない記録かもしれないのに……!」

「どけ、小娘」


男の一人が、マレを突き飛ばそうと腕を伸ばした。

その腕を、つかんだ。

そのまま放り投げる。男は広場を横切って、反対側の家の壁にめり込んだ。

のみの音が、止まった。


「……撃て!」


頭目の声で、弩が四つ、こっちを向いた。

矢が飛んでくる。一本は俺の胸に当たって、足元に落ちた。一本はマレの顔の前で、見えない何かに弾かれた。

マレが、ぺたんと尻もちをついた。


「……い、今、目の前で」

頭目の顔から、色が消えた。

「ば、化け物か……散れ! 宝は奥だ、奥を探せ!」


男たちが、ばらばらに走り出した。奥の通りへ。来た道へ。


「ノア!」

リゼが叫んだ。

「一人も逃がさないで! 逃がしたら、伯爵にここがばれる。全部、荒らされる!」


サボテンタも、番人も、壁の絵も。

俺の飯も。


「……分かった」




近くの二人は、すぐに捕まえた。頭と頭をごつんと合わせたら、静かになった。バルトが、もう一人の足を払って押さえこんでいる。

残りは、奥へ走っていった。

あっちは、まずい。

広間に飛び込んだ時には、もう遅かった。


番人の輪が、赤く光っていた。

振り下ろされた枝の下で、男が一人、動かなくなっていた。もう一人は壁際まで飛ばされて、それきりだった。

頭目が、腰の壺を振りかぶっていた。


「燃やせ! サボテンタなら、火で焼ける!」


油壺が、番人の幹で割れた。松明が投げ込まれる。

ぼっ、と火が上がった。

番人の枝が、のたうった。

……焼けたら、サボテンタが生まれなくなる。


走った。

燃えている幹に飛びつき、上着を脱いで、火を叩く。熱い。髪の先が焦げる匂いがした。

その背中に、別の番人の枝が叩きつけられた。

床に膝をつく。


痛え。

痛えけど、火を消すほうが先だ。

二度、三度と枝が来る。そのたびに床が割れる。それでも、上着を振り下ろし続けた。

火が、消えた。


顔を上げると、頭目が、松明を握ったまま固まっていた。


「……な、なんで、魔物をかばって……」

「焼いたら、飯が生まれなくなるだろうが」


頭目の首根っこをつかむ。腰を抜かしていたもう一人も、反対の手でつかむ。

二人を引きずって、広間を出た。

背中で、番人たちの赤い光が、ゆっくりと緑に戻っていった。




広場に戻ると、男たちが石畳に並べられていた。リゼとバルトが、男たちの持っていた縄で、まとめて縛ったらしい。

マレは、壁画の前にいた。

欠けた神の顔を、じっと見上げている。それから、両手を壁にあてて、目を閉じた。


「……〈旅人の神の壁画〉」


壁画の下には、腰の高さほどの石板がはめこまれていた。細かい文字が、びっしりと刻まれている。マレは、そっちにも手を当てた。


「〈西の港へ至る道の記録〉……」

マレは、石板の文字を指でなぞった。

「読めない字です。名前しか、分かりません」


それでも、帳面を開いて、一字ずつ写し始めた。


「先生なら、読めるかもしれません」


門で見たものは、書いて送れ。あのおっさんの声が、聞こえた気がした。

縛った男たちの前に、バルトが立っていた。一人ずつ、指で数えている。


「……落ちてきたのは、九人だった」


広間で動かなくなったのが、二人。ここに縛ってあるのが、頭目を入れて六人。

八人だ。

砂の山のほうを見た。男たちが抱えて降りてきたサボテンタが、いなくなっていた。

頭目が、縛られたまま、喉の奥で笑った。


「上で、馬を待たせてある」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。