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修理特化の追放鍛冶師  作者: 進藤
第1章 追放鍛冶師と壊れた古代兵装

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#16 右腕に戻った力


――カン。


――カン。


――カン。


古代の修復工房に。


金槌の音が響いていた。


レオンは巨大な古代兵装の右腕と向き合っている。


「……あと少し」


モノクルを通して。


右腕内部の魔力回路を確認する。


『魔力伝達率――四十二パーセント』


「ここだな」


レオンは関節部分を指で叩く。


――コン。


鈍い音が返ってきた。


「やっぱり」


ダインが尋ねる。


「何が分かった?」


「関節の中に、わずかなズレがある」


「ズレ?」


「ああ」


レオンは右腕を見ながら説明する。


「回路そのものは繋がってる」


「でも、魔力が関節を通るときに少しだけ詰まってる」


「それが力を落としてるんだ」


ダインは腕を組む。


「じゃあ、そこを直せば?」


「もっと動く」


レオンは工具を取り出した。


「問題は……」


右腕の関節を覗き込む。


「普通の工具じゃ届かない」


「じゃあどうする?」


レオンは少し考えた。


そして。


古代銀の細い棒を手に取った。


「これを使う」


「それで?」


「関節の内側に入れる」


レオンは古代銀をさらに細く加工していく。


――カン。


――カン。


――カン。


一本の細い銀線が完成した。


レオンはそれを慎重に関節へ差し込む。


「ここ……」


少し動かす。


「……あと二ミリ」


さらに調整する。


「これでいい」


銀線を固定する。


そして。


最後に銀針を取り出した。


「接続する」


――カチッ。


その瞬間。


右腕全体に青白い光が走った。


――ゴォン。


巨大な腕が。


ゆっくりと持ち上がる。


「おお……!」


ダインが声を上げる。


右腕が。


肩から持ち上がる。


肘が曲がる。


手が握られる。


――ギギギ……。


長い眠りから目覚めるように。


古代兵装の右腕が動いた。


『魔力伝達率――六十一パーセント』


レオンは頷く。


「よし」


「一気に上がったな」


「ああ」


レオンは右腕を見つめる。


「これなら戦うための腕として使える」


ダインが笑う。


「じゃあ、こいつも戦えるようになるのか?」


レオンは首を振った。


「まだだ」


「まだ?」


「右腕が動くだけだ」


レオンは巨大兵装の全身を見る。


「左腕も壊れてる」


「左脚も損傷してる」


「胸の魔力炉も安定してない」


「それに……」


レオンは胸部の奥を見る。


「記憶回路も壊れてる」


ダインが少し驚く。


「記憶?」


「ああ」


レオンは古代兵装の頭部を見る。


「こいつはただの武器じゃない」


「命令を理解してる」


「言葉も話せる」


「だったら、何かを覚えているはずだ」


その時。


古代兵装の胸部が。


――ポッ。


青白く光った。


『……記憶』


レオンが振り返る。


『……修復者』


「どうした?」


『……記憶……一部……復旧』


レオンとダインが顔を見合わせる。


「何を思い出した?」


古代兵装はしばらく沈黙した。


そして。


『……第一工房』


レオンの目が細くなる。


「第一工房?」


『……兵装製造』


『……修復』


『……管理』


「それは、この工房のことか?」


『……違う』


古代兵装の声が震える。


『……もっと……大きい』


レオンは黙って聞いていた。


『……多数の兵装』


『……多数の鍛冶師』


『……そして……』


そこで。


声が途切れた。


「そして?」


『……緊急封鎖』


レオンの表情が変わる。


「緊急封鎖?」


『……警告』


『……全兵装停止』


『……管理者命令』


そこで記憶が途切れた。


古代兵装は再び沈黙する。


ダインが口を開いた。


「つまり……」


「昔、この場所で何かあった」


レオンが答える。


「ああ」


「しかも、兵装を全部止めなきゃならないような何かが」


レオンは工房を見回した。


ここには。


大量の修理設備がある。


古代兵装も眠っている。


そして。


誰もいない。


「それを知るには」


レオンは立ち上がった。


「記憶回路を直す必要がある」


ダインが苦笑する。


「また修理か」


「ああ」


レオンは笑った。


「俺は鍛冶師だからな」


そして。


古代兵装の頭部へ近づく。


「次は右腕じゃない」


「記憶を直す」


「そんなことまでできるのか?」


「やってみないと分からない」


レオンはモノクルをかける。


古代兵装の頭部内部。


そこには。


無数の細い魔力回路が走っていた。


しかし。


その多くが黒く変色している。


「……ひどいな」


「どうする?」


「まずは壊れている回路を探す」


レオンは静かに目を細めた。


「それから」


銀針を手に取る。


「壊れた記憶を、一つずつ繋ぎ直す」


古代兵装の胸部が。


小さく光った。


『……修復者』


「ああ」


レオンは答える。


「もう一度、思い出せるようにしてやる」


工房の中に。


再び金属音が響く。


――カン。


今度の修理対象は。


腕でも。


脚でも。


武器でもない。


長い年月の中で失われた。


古代兵装自身の記憶だった。


そして。


その記憶の奥には。


古代兵装たちが眠りについた理由が。


隠されている。



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