#14 古代魔力鉱石を探して
修復工房を出たレオンたちは、地下へ続く通路を進んでいた。
壁に刻まれた古代文字を、アインが読み取っていく。
『採掘区画――前方』
「もうすぐか」
レオンは歩きながら地図を見る。
「ここで魔力鉱石を手に入れれば、修復炉を動かせる」
ダインが肩を回した。
「やっと古代兵装を直せるんだな」
「ああ」
レオンは頷いた。
「ただし、良い鉱石が残っていればな」
「残ってなかったら?」
「……探す」
「結局それかよ」
ダインが苦笑する。
やがて。
通路の先に巨大な扉が現れた。
扉には。
一本の鉱石のような紋章が刻まれている。
アインが扉を解析する。
『採掘区画』
『封鎖状態』
「また封鎖か」
レオンは扉を見る。
だが今回は。
扉の横に小さな装置が残っていた。
「これなら……」
レオンは装置を調べる。
内部の魔力回路は、完全には壊れていない。
「ここに魔力を流せば開く」
「アインに任せれば?」
「いや」
レオンは首を振った。
「これは古代兵装用じゃない」
「違うのか?」
「採掘設備用だ」
レオンは銀針を一本取り出す。
「なら、俺の仕事だ」
――カチッ。
銀針を回路に差し込む。
――カチッ。
もう一本。
そして。
「これでいい」
レオンが装置に触れる。
――ゴゴゴゴゴ……。
巨大な扉が開いた。
中から。
冷たい空気が流れてくる。
「……広いな」
ダインが目を見張る。
そこは巨大な地下空間だった。
天井は見えないほど高い。
壁には無数の採掘跡。
そして。
地面には。
青白く光る鉱石が埋まっていた。
「……あった」
レオンの目が輝く。
「魔力鉱石だ」
ダインも近づく。
「これが?」
「ああ」
レオンは鉱石を一つ手に取る。
モノクルを覗く。
『古代魔力鉱石』
『純度――八十二パーセント』
「十分使える」
「じゃあ、これを持って帰れば――」
「待て」
レオンが止める。
「どうした?」
「この鉱石」
レオンは壁を見る。
「採掘されてない」
「え?」
「自然に埋まってる」
「それが普通じゃないのか?」
レオンは首を振った。
「違う」
近くの採掘跡を指差す。
「こっちは全部、採掘された跡がある」
そして。
青白い鉱石が大量に残っている壁を見る。
「なのに、ここだけ手をつけてない」
ダインが首を傾げる。
「どうしてだ?」
レオンは鉱石へ手を当てる。
――ジジ……。
小さな魔力が流れた。
「……魔力が濃すぎる」
「危険なのか?」
「たぶんな」
レオンは周囲を見回した。
「だから残したんだ」
アインが解析する。
『高濃度魔力反応』
『通常の魔力鉱石とは性質が異なります』
「やっぱり」
レオンは鉱石を見つめる。
「これは普通の燃料じゃない」
「じゃあ何だ?」
レオンは少し考えた。
「古代兵装の核に使う素材だ」
ダインが驚く。
「核?」
「ああ」
レオンは説明する。
「魔力炉を動かすだけなら、もっと純度の低い鉱石でいい」
「でもこれは?」
「兵装そのものを動かすための素材だ」
レオンは青白い鉱石を見つめた。
「つまり――」
その時。
アインが突然立ち止まった。
『異常反応』
「何だ?」
『採掘区画の奥』
『巨大な魔力反応を確認』
ダインが剣に手をかける。
「敵か?」
「分からない」
レオンは耳を澄ませる。
何も聞こえない。
だが。
モノクルには確かに魔力反応が映っていた。
「行ってみよう」
三人は鉱石の壁を抜けて奥へ進んだ。
そこには。
巨大な採掘装置が残されていた。
しかし。
装置は止まっている。
その中央には。
一本の巨大な鉱石が固定されていた。
青白い光。
その大きさは。
人間の身長ほどもある。
「……なんだ、これ」
ダインが言葉を失う。
レオンはゆっくり近づく。
モノクルを覗く。
そして。
目を見開いた。
「……魔力鉱石じゃない」
「じゃあ何だ?」
レオンは答えた。
「加工前の魔力核だ」
「魔力核?」
「古代兵装に使うための素材」
レオンは周囲の装置を見る。
「しかも、これだけ大きければ――」
アインが解析する。
『推定魔力容量――極めて高い』
『古代兵装一体分の魔力炉を構築可能』
レオンは息を呑んだ。
「一体分……」
ダインが周囲を見る。
「じゃあ、ここで古代兵装を作ってたのか?」
「違う」
レオンが答える。
「ここは素材を作る場所だ」
「素材を?」
「ああ」
レオンは装置を調べる。
「採掘した鉱石を加工して、魔力核にしていたんだ」
そして。
装置の奥に刻まれた文字を見つける。
レオンが読む。
「……兵装用魔力核」
さらに。
「第一工房へ搬送」
レオンの目が細くなる。
「第一工房?」
アインが地図を解析する。
『第一工房――位置情報を確認』
「どこだ?」
『現在地より、さらに地下』
ダインが頭を抱える。
「まだ下があるのかよ……」
レオンは苦笑した。
「どうやら、この遺跡は思ったより大きいな」
その時。
レオンは巨大な魔力核の表面に、小さな傷を見つけた。
「……これ」
「どうした?」
レオンが傷を指でなぞる。
「誰かが加工を途中で止めてる」
「途中で?」
「ああ」
モノクルを覗く。
「この魔力核、本来ならまだ完成してない」
「じゃあ、どうしてここに残ってる?」
レオンは黙った。
そして。
遺跡の奥を見る。
「……何かが起きたんだ」
古代兵装。
修復工房。
そして。
大量の未完成の魔力核。
すべてが。
ある日を境に。
突然止まっている。
「戦争でもあったのか?」
ダインが呟く。
「分からない」
レオンは首を振る。
「でも、これを見れば分かるかもしれない」
レオンは魔力核を軽く叩いた。
――カン。
「古代兵装を直せば」
「記憶も戻るかもしれない」
アインが静かに答える。
『可能性があります』
レオンは頷いた。
「なら、まずはこれを持って帰ろう」
巨大な魔力核を見上げる。
「修復炉を動かすには十分すぎる」
ダインが苦笑する。
「……持って帰るって、これを?」
「もちろん」
「どうやって?」
レオンが黙る。
巨大な魔力核。
三人。
そして。
長い地下通路。
レオンは少し考えて。
「……台車を作る」
「そこからかよ!」
ダインの声が採掘区画に響いた。
レオンは笑った。
「鍛冶師だからな」
三人は。
巨大な魔力核を運ぶ準備を始めた。
まだ誰も知らない。
この魔力核が。
古代兵装を修理するだけではなく――
失われた古代技術を再び動かす鍵になることを。




