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修理特化の追放鍛冶師  作者: 進藤
第1章 追放鍛冶師と壊れた古代兵装

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12/17

#12 壊れた古代兵装を前に


巨大な古代兵装は、動かなくなっていた。


五メートルを超える巨体。


両腕には巨大な刃。


胸の魔力炉は、消えかけた灯火のように弱く光っている。


「……終わったのか?」


ダインが剣を下ろす。


レオンは首を振った。


「終わってない」


「え?」


「止まっただけだ」


レオンは巨大兵装へ近づく。


そして胸部に手を当てた。


――ポッ。


小さな魔力が、レオンの手のひらに伝わってくる。


「……まだ生きてる」


アインが解析する。


『魔力反応――極小』


『生命活動に類似する反応を確認』


「やっぱりな」


レオンは頷いた。


「こいつは壊れてる。でも、死んでない」


ダインが巨大兵装を見る。


「じゃあ……直せるのか?」


「分からない」


レオンはモノクルをかけ直す。


「でも、調べることはできる」


レオンはまず右腕を見る。


巨大な刃が取り付けられた腕。


装甲には無数の傷がある。


「右腕……」


モノクルに情報が浮かぶ。


『魔力回路――多数断裂』


『関節部――損傷』


『魔力伝達率――十三パーセント』


「ひどいな」


次に左腕。


『魔力伝達率――二十パーセント』


そして脚。


『右脚――魔力伝達不良』


『左脚――損傷軽度』


最後に胸。


レオンの表情が変わった。


「……これは」


「どうした?」


ダインが近づく。


レオンは胸部を指差した。


「魔力炉は壊れてない」


「じゃあ、何が悪い?」


「炉から全身へ魔力を送る回路だ」


レオンは胸部を軽く叩く。


――カン。


「ここから四方向に回路が伸びてる」


「四方向?」


「右腕、左腕、両脚」


レオンは順番に指差した。


「でも、全部途中で壊れてる」


ダインが黙り込む。


「……だから、あんな動きだったのか」


「ああ」


レオンは頷いた。


「こいつは壊れた身体を無理やり動かしてた」


「普通なら動けないだろ」


「だから問題なんだ」


レオンは巨大兵装を見上げる。


「誰かが、動かし続けるように作ったのかもしれない」


その言葉に。


アインが反応した。


『否定』


「え?」


『古代兵装の基本設計を確認』


『損傷状態での強制稼働機能は、本来の仕様ではありません』


レオンが目を細める。


「じゃあ、誰かが後から細工した?」


『可能性があります』


「……誰が?」


『不明』


しばらく沈黙が続いた。


レオンは巨大兵装の胸部を見つめた。


「こいつは、何と戦ってたんだろうな」


ダインが答える。


「俺たちじゃないのか?」


「違う」


「どうして?」


「さっきの動きだ」


レオンは言った。


「俺たちを倒すことだけが目的なら、もっと効率よく攻撃する」


「でも、こいつは?」


「壊れた身体で、ただ命令を繰り返してた」


レオンは小さく息を吐く。


「まるで……ずっと同じ命令を実行し続けてたみたいだった」


ダインは何も言えなかった。


その時。


巨大兵装の胸部から。


『……命令』


小さな声が響いた。


レオンが顔を上げる。


『……敵……排除』


「まだ動けるのか!?」


ダインが剣に手を伸ばす。


「待て」


レオンが止める。


巨大兵装は動かない。


ただ、胸の魔力炉が弱く点滅しているだけだった。


『……命令……』


レオンは静かに話しかける。


「もう戦わなくていい」


『……』


「今は休め」


魔力炉が一度だけ強く光った。


『……修復者』


「……!」


レオンが目を見開く。


「今、何て言った?」


『修復者……』


それだけだった。


魔力炉の光が弱くなる。


そして。


完全に沈黙した。


ダインが呟く。


「……修復者、か」


「俺のことを言ってるのか?」


『可能性――高』


アインが答えた。


レオンは巨大兵装を見る。


「……俺が?」


返事はない。


レオンは工具袋を開いた。


中から銀針を取り出す。


「少しだけ調べてみる」


「今から?」


「ああ」


レオンは胸部の装甲に銀針を当てた。


――カチッ。


内部の魔力回路が、モノクルに映し出される。


「……やっぱり」


「何か分かったか?」


「この回路」


レオンは目を細めた。


「俺が知ってる古代兵装の回路と、少し違う」


「違う?」


「ああ」


アインの回路。


先ほどの古代兵装の回路。


そして目の前の兵装。


同じ古代兵装なのに、構造が微妙に違っている。


「こいつらは同じ場所で作られたはずなのに……」


レオンは考え込む。


「修理方法も違うかもしれない」


「じゃあ、どうする?」


レオンは銀針をしまった。


「まずは、修理する場所を探す」


ダインが目を丸くする。


「ここじゃダメなのか?」


「道具が足りない」


レオンは周囲を見回す。


古代金属の壁。


壊れた装置。


朽ちた工具。


「この兵装を直すには、もっと設備が必要だ」


アインが周囲を解析する。


『周辺に複数の施設を確認』


「施設?」


『武器製造区画』


『魔力回路研究区画』


そして。


『修復施設――存在する可能性があります』


レオンの目が輝いた。


「修復施設……」


ダインが嫌そうな顔をする。


「またお前が喜びそうなものを見つけたな」


「当たり前だろ」


レオンは工具袋を肩に掛けた。


「壊れた武器を直すための施設だぞ」


「はいはい」


ダインが苦笑する。


「行けばいいんだろ?」


「もちろん」


レオンは歩き出す。


だが。


数歩進んだところで足を止めた。


「……アイン」


『はい』


「この遺跡」


『はい』


「いったい、何体の古代兵装を作ったんだ?」


アインが少し間を置いて答える。


『正確な数は不明』


「不明?」


『記録が破損しています』


レオンは振り返る。


巨大兵装が、暗い工房の中で静かに眠っている。


「……一体だけじゃないってことか」


『その可能性があります』


レオンは少し考えた。


そして。


「だったら、急ごう」


ダインが聞く。


「何で?」


レオンは笑った。


「もし他にも壊れた兵装がいるなら――」


工具袋を軽く叩く。


「そいつらも直してやらないとな」


ダインは呆れたように笑った。


「お前、本当にそればっかりだな」


「鍛冶師だからな」


三人は。


古代兵装が眠る工房を後にした。


向かう先は。


遺跡のさらに奥。


まだ誰にも開かれていない。


古代の修復施設だった。


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