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修理特化の追放鍛冶師  作者: 進藤
第1章 追放鍛冶師と壊れた古代兵装

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#11 地下から来た古代兵装


――ドォォォン!


遺跡全体が、大きく揺れた。


天井から砂埃が落ちる。


床にも、細かな亀裂が走った。


「な、なんだ!?」


ダインが剣を抜く。


ブラックファングたちも一斉に身構えた。


アインはレオンの前に立つ。


『危険』


その声には、今までにない緊張が混じっていた。


『地下より、高出力の魔力反応』


「どれくらいだ?」


『現在の私の出力――約十倍』


「十倍……?」


ダインの顔が引きつる。


「そんなの、勝てるのか?」


レオンは答えず、床に手を当てた。


――ドン。


また地面が揺れる。


「……おかしい」


「何が?」


「揺れ方だ」


レオンは立ち上がる。


「地下から何かが上がってきてる」


その瞬間だった。


――ドゴォォォン!


床が突然、爆発した。


「うわっ!」


ダインが後ろへ飛び退く。


レオンも、とっさに横へ転がった。


その直後。


巨大な腕が、床を突き破って現れた。


――ガギィィィン!


黒銀色の金属。


人間の身体ほどもある巨大な手。


そして――。


「来るぞ!」


アインが叫ぶ。


床がさらに崩れた。


――ドゴォォォン!


地下から、巨大な身体が姿を現す。


高さは五メートルを超えている。


全身を黒い古代金属で覆い、頭部には目らしいものがない。


胸の中央には、巨大な魔力炉。


そして両腕には――。


巨大な刃が取り付けられていた。


「……あれが、古代兵装」


ダインが呟く。


アインが敵を解析する。


『識別――失敗』


『登録番号――抹消』


『兵装名称――不明』


巨大兵装が、ゆっくりと顔を上げる。


その瞬間。


両腕の刃が青白く光った。


「アイン!」


『了解』


アインがレオンの前へ飛び出す。


巨大兵装が右腕を振り下ろした。


――ブォンッ!


「受けるな!」


レオンが叫ぶ。


だが、間に合わない。


――ガキィィィン!


巨大な刃と、アインの右腕が激突した。


凄まじい衝撃が工房を揺らす。


アインの足が床へ沈み込む。


「アイン!」


『問題ありません』


そう答えた直後。


アインの右腕に――。


ピシッ。


細い亀裂が入った。


「……!」


レオンの表情が変わる。


「アイン、下がれ!」


『了解』


アインが後ろへ飛ぶ。


しかし、敵は追ってくる。


――ドン!


巨大な兵装が一歩踏み出す。


――ドン!


さらに一歩。


そのたびに床が揺れる。


「強すぎる……」


ダインが剣を握り直した。


「まともに戦ったら、アインでも押し切られるぞ」


「分かってる」


レオンは敵をじっと見つめていた。


モノクルに大量の情報が流れていく。


赤い警告。


魔力異常。


回路断裂。


装甲損傷。


そして――。


「……見つけた」


レオンが呟いた。


「何を?」


「こいつの弱点だ」


巨大兵装が再び腕を振り上げる。


「アイン!」


『はい!』


アインが前へ出る。


――ガキィン!


今度は正面から受けず、敵の刃を横へ弾く。


巨大兵装の胸部が、一瞬だけ露出した。


「今だ!」


レオンが叫ぶ。


「ダイン!」


「なんだ!」


「アインの右側を援護してくれ!」


「分かった!」


ダインが走る。


巨大兵装がアインへ左腕を振り下ろす。


「させるか!」


――ガキン!


ダインが剣で攻撃を受け流す。


完全には止められない。


だが。


ほんの一瞬。


敵の身体が止まった。


「アイン!」


『理解しました!』


アインが敵の左腕を押さえ込む。


右腕。


左腕。


両方が一瞬だけ止まった。


胸部が完全に露出する。


「今だ!」


レオンが敵の胸へ走った。


「レオン! 危ないぞ!」


ダインが叫ぶ。


「分かってる!」


レオンは敵の胸部に手を当てた。


――カン。


軽く叩く。


「……やっぱりだ」


もう一度。


――カン。


「こいつは暴走してるんじゃない」


レオンのモノクルに、内部構造が映し出される。


「壊れた魔力回路を、無理やり動かしてるんだ」


「どういうことだ!?」


「普通なら、壊れた回路があれば魔力は流れない」


レオンは敵の胸を指差す。


「でも、こいつは違う」


黒い魔力が、壊れた回路を無理やり通っている。


「壊れた回路にまで魔力を流して、無理やり身体を動かしてるんだ」


「じゃあ、どうする!?」


レオンは銀色の針を取り出した。


「止める」


「止めるって……どうやって?」


「壊れた回路を、一時的に切る」


ダインが目を見開く。


「そんなことしたら、こいつは動けなくなるんじゃないか?」


「それでいい」


レオンは答えた。


「動けなくなれば、修理できる」


「なるほど……!」


レオンは敵の胸部へ銀針を突き刺した。


――カチッ。


「一本目!」


次。


――カチッ。


「二本目!」


そして三本目。


――カチッ!


「三本目!」


その瞬間。


敵の身体が大きく震えた。


『警告』


アインが叫ぶ。


『魔力出力、上昇!』


「まだだ!」


レオンは針を押し込む。


敵の胸から黒い魔力が噴き出した。


――ゴォォォォッ!


「ぐっ……!」


レオンの身体が吹き飛ばされそうになる。


「レオン!」


ダインが手を伸ばす。


「大丈夫だ!」


レオンは踏ん張った。


そして敵の胸部を睨む。


「こいつは魔力を増やしてるんじゃない!」


「じゃあ何なんだ!?」


「痛みを無視してるんだ!」


レオンは叫んだ。


「壊れた回路を無理やり動かしてる!」


敵の両腕が再び動き始める。


「アイン、あと少しだけ頼む!」


『了解!』


アインが敵の両腕を押さえる。


――ガキィン!


右腕を止める。


――ガキィン!


左腕を止める。


「ダイン!」


「任せろ!」


ダインも敵の前に立ち、アインを援護する。


「今だ、レオン!」


「ありがとう!」


レオンは金槌を取り出した。


「壊れた回路は――」


金槌を構える。


「休ませる!」


――カンッ!


胸部を叩く。


巨大兵装の右腕が止まった。


「一つ!」


――カンッ!


左腕も止まる。


「二つ!」


――カンッ!


胸部の魔力炉の光が弱くなる。


「三つ!」


巨大兵装の動きが止まった。


「あと一つ……!」


レオンは最後の魔力回路を見る。


それは、胸部から全身へ魔力を送る中心回路だった。


「これを切れば――」


だが。


その瞬間。


巨大兵装の胸部から声が聞こえた。


『……痛い』


レオンの手が止まった。


「……!」


『……痛い』


機械の声。


しかし。


そこには確かに苦しみがあった。


レオンは敵を見る。


「お前……」


巨大兵装は動けない。


ただ、胸の魔力炉だけが弱く点滅している。


「ずっと壊れたまま、戦ってたのか?」


『命令――遂行』


『敵――排除』


『修理――不要』


レオンは歯を食いしばった。


「……誰だよ」


返事はない。


「お前に、そんな命令を出したのは誰だ?」


『……』


しばらく沈黙が続く。


そして。


『命令者――』


声が途切れた。


魔力炉が激しく点滅する。


『……存在……不明』


「……命令者が分からない?」


『記憶――破損』


『記憶――破損』


『記憶――破損』


同じ言葉を繰り返す。


レオンは静かに息を吐いた。


「分かった」


最後の回路へ銀針を差し込む。


「もう戦わなくていい」


――カチッ。


そして。


最後に金槌を振り下ろす。


――カン。


巨大兵装から、すべての魔力が抜けた。


――ズゥゥン。


五メートルを超える巨体が、ゆっくりと膝をつく。


そして。


完全に動かなくなった。


「……止まった」


ダインが呟く。


アインも敵へ近づく。


『魔力反応――極小』


レオンは首を振る。


「死んでない」


「え?」


レオンは敵の胸部へ手を当てる。


「眠っただけだ」


しばらくすると。


――ポッ。


消えていた胸部の魔力炉に、小さな光が灯った。


『……修復者』


レオンが顔を上げる。


『修復……を……』


そこで声が途切れた。


レオンは巨大兵装を見上げる。


「……直せるのか?」


ダインが尋ねる。


レオンは少し考えた。


「分からない」


そして。


工具袋を握り直す。


「でも――」


レオンは笑った。


「直してみたい」


アインが静かに告げる。


『レオン』


「ん?」


『あなたは、やはり鍛冶師です』


「今さら?」


『はい』


アインの目が淡く光る。


『戦うより先に、壊れている場所を見つける』


レオンは黒い剣を拾った。


「それが俺のやり方だからな」


その時。


工房の奥から――。


――カチッ。


小さな音がした。


三人が振り返る。


床に置いていた黒い鞘の剣が。


ひとりでに浮かび上がった。


――シュン。


黒い刃が鞘から抜ける。


そして。


剣先が――地下を指した。


『未修復の古代兵装を確認』


アインが告げる。


『地下深部――反応、一体』


レオンは剣を見つめた。


「……まだいるのか」


黒い剣が。


ゆっくりと震える。


まるで。


「早く来い」


そう言っているようだった。


レオンは工具袋を肩に掛けた。


「行こう」


ダインがため息をつく。


「また修理か?」


「ああ」


レオンは笑った。


「壊れてるなら、直さないとな」


――古代遺跡の地下深く。


眠っていた最後の兵装が。


ゆっくりと目を開いた。


その胸に刻まれていた紋章は――。


アインとも。


先ほどの古代兵装とも違っていた。


そこに刻まれていたのは。


一本の剣と――。


鍛冶師の金槌。


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