初めての出会い4
やがて三人は木々が途切れた広場へ辿り着いた。
周囲には崩れた石柱と瓦礫が散らばり、奥には暗い穴を開けた遺跡の入口が見える。
『この先にゴブリンがいるんだね』
『そうなり!
油断は禁物なりよ!』
『わかってるわ。
ちゃんと倒すから、約束はちゃんと守ってね』
スラちゃんに疑問符が浮かんだ。
『約束……?
なんの事なりか?』
『手伝ったら、宝石について教えてくれるって言ったでしょ?
知ってるんだよね?』
『あ、あー!
そう、そうだったなりね!』
あからさまに動揺するスラちゃんを見て、レッドとルナは顔を見合わせた。
『わかってるなり!
スラちゃんにどーんとまかせるなり!』
『ゴブリンを倒せば
女神ノ涙の手がかりが手に入る。
……負けられないわね』
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ルナが杖を掲げると幾筋もの光が広場へ降り注いだ。
鏡ノ扉から呼び出された英雄たちが武器を構えて並び立つ。
『行きましょう、レッド!』
広場の奥から魔物たちが次々と姿を現した。
剣と盾を持つゴブリン。
小柄な身体に骨の兜を被ったゴブリン。
敵は広場の入口を塞ぐように横へ広がると、盾を持つ者を前に、武器を掲げた者をその後ろへ並べた。
正面から力任せに突っ込めば、足を止められたところを一斉に囲まれる。
数を頼みに押し寄せる敵を前に英雄たちは一歩も退かなかった。
レッドが剣を正面に構えその左右へ召喚された英雄たちが広がる。
背後ではルナが全員を視界に収められる位置まで下がり、杖を胸の前に掲げた。
先に動いたのは魔物たちだった。
盾を構えたゴブリンが奇声を上げながら突進し、その隙間を縫うように棍棒や短槍を持つゴブリンたちが襲い掛かる。
レッドは最初の盾を剣の腹で受け止めた。
腕に鈍い衝撃が走る。
押し込まれながらも踏み止まり身体を捻って盾の向きを逸らすと、勢いを失ったゴブリンが隣のゴブリンへぶつかった。
敵の隊列がわずかに乱れる。
その瞬間、ルナの足元に刻ノ魔法陣が広がった。
杖から放たれた淡い光が敵の間を駆け抜け、先頭にいた魔物たちの動きを縛りつける。
完全に止まったのは一瞬だけだった。
だが、英雄たちにはそれで十分だった。
一人が正面から盾を弾き上げ、もう一人が低く身を沈めて懐へ潜り込む。
連続した斬撃が敵の陣形を左右に切り分けた。
レッドも開いた中央へ踏み込み、振り下ろされた棍棒を剣で受け流す。
返す刃がゴブリンの武器を跳ね飛ばし、続く一撃がその身体を捉えた。
倒された魔物は青い霧となって消え、跡には僅かな光だけが残る。
しかし、広場に静けさが戻ることはなかった。
遺跡の入口や崩れた石柱の陰から、新たな魔物たちが次々と姿を現す。
一群を退けるたびに別の一群が押し寄せ、英雄たちの呼吸は少しずつ荒くなっていった。
魔物たちは数に任せて左右から回り込み、ルナを狙おうとする。
レッドはすぐさま後方へ下がると、ルナへ迫った短槍を剣で払い落とした。
そのまま敵との間へ割って入り、横薙ぎの一撃で二体をまとめて後退させる。
空いた場所へ英雄たちが駆け込み、追撃を重ねた。
光と刃が幾度も交差する。
やがて最後の一体が霧となって消えた時、広場の奥から重い足音が響いた。
現れたのは、これまでの魔物より一回り大きなゴブリンだった。
頭には立派な骨の兜を被り、片手には長い槍、もう片方には身体の半分を覆うほどの盾を構えている。
『な、なんだゴブ!?』
突然押しかけてきたルナたちに驚きながらも、ゴブリンはすぐに槍を構え直した。
地面を蹴ると、その巨体からは想像できない速度で突進してくる。
狙われたレッドは剣を立て、槍の穂先を受け止めた。
金属同士が激しくぶつかり合い、甲高い音が広場へ響き渡る。
勢いを殺しきれず、レッドの靴が地面を削った。
さらにゴブリンは盾を振り回し、近づこうとした英雄をまとめて薙ぎ払う。
まともに受ければこちらの陣形が崩される。
レッドは正面から注意を引きつけたまま、槍の連撃を受け流し続けた。
突き。
薙ぎ払い。
再び突き。
攻撃のたびに風を切る音が鳴り、穂先がレッドの頬や肩をかすめていく。
その間に二人の英雄が左右へ回り込むが、ゴブリンは盾を大きく振って近づかせない。
守りは固く、正面にも側面にも隙がなかった。
ルナはゴブリンの動きを追いながら、時計を模した杖へ力を集める。
槍が大きく振りかぶられた瞬間、杖の先から光の輪が放たれた。
淡い光がゴブリンの腕へ絡みつき、振り下ろされるはずだった槍が一瞬だけ空中で止まる。
『……!』
レッドはその隙を逃さなかった。
剣を下から跳ね上げ、槍の穂先を大きく逸らす。
同時に左側の英雄が盾へ武器を叩きつけ、守りを外へ押し開いた。
右側から回り込んだ英雄の一撃がゴブリンの足を捉える。
大きな身体が傾いた。
それでもゴブリンは倒れず、怒りに任せて盾を振り回す。
レッドは飛び退いて直撃をかわすと、地面を強く蹴った。
開かれた盾の内側へ、一気に踏み込む。
光と刃が交差し、レッドの剣がゴブリンの胸元を打ち据えた。
『ゴブブブ……!』
ゴブリンの手から槍が落ちる。
巨体は大きく揺らぎ、その場へ片膝を着いた。
まだ意識はあるようだったが、再び武器を取る力までは残っていなかった。




