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地獄の番犬3

『仕方ねぇな……

 見つかるまで付き合うけどよぉ。

 他になんか手がかりはねぇのかぁ?』


レッドは考える。


『他って言っても……

 手がかりは“()()()()()()”って事と……

 あとは……

 神殿みたいな場所かな』


夢の中で見た景色。


そこには、女神ノ涙を見つけるルナの姿があった。


『なんだそりゃ』


ケルベロスは呆れ果てた声を出す。


『ったく……

 大事なもん探してる割に頼りないったらねぇなぁ』


否定できず、二人は黙り込んだ。


その時。


前方から、聞き慣れない声が響いた。


『おい、準備出来たか?』


ルナたちは足を止め、岩陰から前方を窺った。


そこにいたのは、二体の魔界犬だった。


一体は白い毛を持つ大柄な犬。


もう一体は、その手下らしい魔獣。


『大丈夫でやんすよ』


手下が得意げに答える。


『儀式は成功してるでやんす……

 これで悪魔は戻れねぇでやんす』


『!』


ルナとレッドが顔を見合わせる。


魔界犬は笑った。


『呪いの儀式で悪魔払いとは洒落だよなぁ。

 争うよりこっちの方がよっぽど楽に葬れるってもんだ』


『悪魔を全員消したら、褒めてもらえるでやんす!』


誰かに命令されている。


しかも、その命令で悪魔たちが戻れないようにしている。


『悪魔が戻れないのって……』


ルナは声を潜めた。


『あの犬たちが儀式をしてるせい……?』


『ドロシーたちが言ってたのって、この事だったのね……』


レッドも険しい表情になる。


『……裏で誰かが命令してるみたいだけど……』


その先を言う前に。


『ちっ……』


隣から低い唸り声が聞こえた。


ケルベロスの三つの顔が、牙を剥いている。


『飼い犬根性の駄犬が……』


『ケ、ケルベロス?』


『おい』


ケルベロスは二人へ顔を向けた。


『探しもんはこの先なんだろ』


『え!?

 ちょ、ちょっと――』


止める間もなく、ケルベロスは魔界犬たちを追って駆け出した。


二人も慌てて後を追う。


------------------------------------------------------------


岩場を抜けた先で、景色が変わった。


黒い石柱が並ぶ巨大な空間。


壁の向こうでは炎が燃え上がり、まるで古い神殿の内部のような造りになっている。


『……神殿みたい……』


ルナが足を止めた。


その言葉に、レッドの目が大きくなる。


()殿()みたい……?』


『レッド、もしかして夢で見たのってここ?』


レッドは周囲を見回す。


黒い柱。


炎に照らされた床。


形こそ完全には同じではない。


けれど、胸の奥に残っていた夢の感覚と重なる。


()()()()が魔界犬……』


『それに、女神ノ涙を見つける夢に出てきた神殿……』


前方へ逃げていった二体の魔界犬。


その先へ進めば――。


『……さっきの魔界犬を追いかければ』


『女神ノ涙が見つかるかもしれない』


『ええ……!』


ルナは強く頷いた。


『行ってみる価値はありそうね』


そしてケルベロスを見る。


『ケルベロス……』


『ふん、止めやしねぇよ!』


ケルベロスの三つの口元が吊り上がる。


『俺もアイツらは気になるからなぁ。

 儀式だなんだ、まだるっこしいのは悪魔がやる事だ』


地面を踏み鳴らす。


『ここは地獄!

 下らねぇ事してる奴は、この俺が骨まで砕いてやるぜぇ!!』


咆哮が神殿を揺らした。


ルナは杖を掲げる。


レッドは剣を抜く。


前方から、魔界犬たちとその仲間が次々と姿を現した。


逃げ道はない。


地獄の異変を止める戦いが、始まろうとしていた。


最初の一団が、黒い石床を蹴った。


小柄な魔族と獣型の魔物。


その後方から、魔法を操る者たちが光弾を放つ。


『来るよ!』


レッドが正面へ出た。


剣で最初の爪を受け流し、身体を捻って二体目の攻撃をかわす。


ルナの杖が輝いた。


刻ノ力が敵の足を僅かに鈍らせる。


その間に、鏡ノ扉から呼び出された英雄たちが左右へ散った。


黄金の翼を持つ英雄が上空から突撃する。


黒い帽子の術士が魔法を放つ。


もう一人の英雄が側面へ回り込み、レッドの死角を埋める。


第一の一団が崩れる。


だが、すぐに次の敵が押し寄せた。


今度は魔力を纏った獣が前に出る。


一体を倒しても、別の魔物がその隙間を埋める。


連続する攻撃に、レッドの呼吸が少しずつ荒くなっていった。


『無理に押さないで!』


ルナの声が飛ぶ。


レッドは一度後退し、敵を引きつける。


そこへ英雄たちの魔法が集中した。


紫と黄金の光が、炎に照らされた神殿を染める。


第三の一団を退けると、奥から大きな影が現れた。


魔界犬。


背には鋭い棘を持ち、周囲の魔物たちを従えている。


突進してきた獣を、レッドは真正面から受け止めなかった。


直前で横へ跳ぶ。


空いた側面へ黄金の英雄が一撃を叩き込む。

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