表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
57/84

地獄の番犬2

『聞こえてるぞ』


『……』


少しだけ歩く速度を上げる。


けれど、ルナには別の疑問が残っていた。


『なんでタヌキムはケルベロスなんかと仲がいいのよ』


『私よりよっぽどケルベロスの方が怖いじゃない』


『う……うん……

 そう……だね』


レッドは答えに困った。


タヌキムには逃げ回られたルナ。


それなのに、この巨大な三頭犬には懐いている。


本人にとっては納得できないのだろう。


『あの子、見る目が変なのかしら……』


『たぶん、そういう問題じゃないと思うけど……』


レッドは苦笑した。


------------------------------------------------------------


それからも三人は、地獄の道を進み続けた。


周囲の景色はさらに険しくなる。


赤黒い岩。

流れ落ちる溶岩。

牙のように尖った岩山。


人が暮らす世界とは、とても思えない。


しばらくすると、ケルベロスが苛立ったように声を上げた。


『ったく……

 まだ見つからねぇのかよ?

 もう帰ったらどうだぁ?』


『地獄はまだ続いてるんでしょ?』


ルナは即座に言い返した。


『ここで帰るなんて出来ないわ』


『ケルベロス、忙しいなら』


レッドが気遣うように言う。


『後は僕らだけで行けるから』


その言葉に、ケルベロスの足が止まった。


『よそ者ほったらかして門に帰れるかよ!

 俺は地獄の番犬なんだよ』


『……な、何よ』


ルナは少し身構える。


『脅さないでよ』


『脅しじゃねぇよ』


ケルベロスは前方を睨んだ。


『地獄っつーのは、甘っちょろい場所じゃねぇんだ』


三つの瞳が、険しい地獄の奥を見つめる。


『タダでさえ……

 最近はキナくせぇからなぁ』


その言葉に、ルナとレッドの表情が変わった。


また、この世界の「異変」に繋がる話なのかもしれない。


『それって……

 "儀式"とかって何か?』


レッドが尋ねる。


ケルベロスは怪訝そうに振り返った。


『はぁ?

 儀式?

 何の事だ』


『ここに来る前に聞いたのよ』


ルナが説明する。


『儀式をしてるのかもって』


ドロシーと、その教官が口にしていた言葉。


悪魔たちが消えた理由を調べる中で、何らかの儀式が関係している可能性が示されていた。


だが、ケルベロスは鼻で笑う。


『けっ……

 馬鹿言ってるぜ。

 呪いなんざ回りくどい事、地獄でする訳ねぇだろ』


そして大きな牙を剥き出しにした。


『やるなら直接この牙でだ!

 俺たちの世界は弱肉強食。

 弱い奴は蹴落とされんだよ』


ルナは呆れたように眉を寄せる。


だが、ケルベロスは本気だった。


『闘争やらなんやらは日常茶飯事だぜぇ?

 帰る気になったかぁ?』


『もう……

 帰らないわよ!』


ルナはきっぱりと言い返す。


『宝石を見つけないといけないんだから!』


ケルベロスは三つの口から同時に息を吐いた。


そのまま歩き始める。


しばらくして、レッドは疑問を口にした。


『ケルベロスは……

 どうしてそんなに僕らを帰そうとするの?』


『ふん!』


ケルベロスは一度立ち止まった。


『わかった。

 そこまで言うなら教えてやる』


険しい地獄の奥へ顔を向ける。


『この程度の場所ならまだいいけどなぁ……

 奥に行きゃぁ話は別だ。

 さっきも言ったが、最近はキナくせぇ……

 悪魔が消えてると聞いたが……

 地獄の様子もおかしいんだよ』


ルナが目を見開く。


『地獄でも誰か消えてるの?』


『ああ』


ケルベロスの声から、いつもの荒々しさが少し消えた。


『モリガンって女なんだが……

 魔界の最奥に行ってそれっきりだ』


モリガン。


新たな名前を、二人は記憶する。


『モリガンはイカれた女だが、実力だけは確かだからなぁ』


『そんな奴が消えた所に行こうってんだ』


三つの顔が、二人を睨む。


『宝石探しもいいが……

 それで死にたかねぇだろ?』


一瞬、二人は言葉を失った。


ケルベロスは乱暴だ。


口も悪い。


それでも、二人が危険な場所へ進もうとしていることを本気で心配している。


『……ケルベロス……』


レッドが呟く。


『僕たちの事――』


『俺が通してやったんだからな!』


ケルベロスは照れ隠しのように吠えた。


『それで死んだら寝覚めが悪ぃんだよ!』


ルナは目を瞬いた。


そして――。


『……ふふっ』


思わず笑う。


『なんだ。

 あなた、荒っぽいし怖いけど。

 結構、優しいのね』


『はぁ!?』


『タヌキムが懐いて頼りにするの、少しわかった気がするわ』


『アイツは偶然拾ってから勝手に頼ってきてるだけだっつの!』


ケルベロスは大声で否定する。


『ちっ……

 軟弱そうなくせにめんどくせぇ奴らだな』


だが、歩みは止めなかった。


むしろ二人を守るように、少し前を歩いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ