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悪魔の住処1

ミシェルから悪魔たちの本拠地を聞いたルナとレッドは、赤い山々を目印に進んでいた。


『地獄にあるっていう火の山があっちに見えるから……

 この方向でいいのよね』


『ミシェルの言ってた悪魔の本拠地の場所が正しければ……だけど』


レッドは遠くの火山を見つめる。


『女神様の記憶にも会えたし、後は女神ノ涙だけか……

 でも、それが難しいね』


『そうでない事を祈るしかないわ』


その時だった。


『レッド!

 避けて!』


何かが横から飛び出した。


鋭く地面を擦る音。


二人が身を引くと、そこには大きな蛇を従えた小柄な少女が立っていた。


淡い桃色の髪。

大きな帽子のような装飾。

周囲には複数の蛇が身体をうねらせている。


『……誰……?

 この子たちは……』


少女は怯えたように二人を見つめた。


ルナも警戒を解かない。


『……あなた……

 悪魔なの?』


『僕ら、探し物があって――』


レッドが説明しようとした瞬間、少女の蛇たちが威嚇するように身を持ち上げた。


『戦う……?』


『しないわ。

 あなた……その子たちを落ち着かせて』


少女はしばらく二人を見つめた。


『……ほんと?』


『ほんとよ』


敵意がないことを確かめると、ようやく肩の力を抜いた。


『……うん。

 わたし、サッハーク……』


名乗ったあと、サッハークは蛇たちを優しく撫でた。


『悪魔さんたちは……

 いないよ……

 みんな、いなくなっちゃった……』


その言葉に、ルナとレッドは顔を見合わせる。


ミシェルの話は本当だった。


悪魔の本拠地まで来ても、肝心の悪魔たちが見当たらない。


『ここで何があったの?』


レッドが尋ねる。


サッハークは首を横へ振った。


『……わたしも、わからない……

 わたしはここで蛇たちの面倒を見るの……

 それなのに……

 急にみんな、いなくなっちゃった……』


周囲を見れば、確かに誰かが暮らしていたような痕跡はある。


だが、動く者はサッハークと蛇たちしかいない。


『お姉ちゃんたちは、悪魔さんになんの用?』


ルナは女神ノ涙について説明した。


『私たちは宝石を探してるの。

 涙の形をした綺麗な石……

 どこにあるかわからないから、悪魔たちに何か知らないか聞こうと思ってたの』


『そうなんだ……』


サッハークは考え込んだ。


『宝石……

 わたしは見た事ない……

 悪魔のお姉ちゃんやお兄ちゃんなら、知ってたかもしれないけど……』


そして、小さく目を伏せる。


『みんな、どこに行ったんだろう……

 わたし……

 やっぱり、ひとりじゃ心細いよ……』


広い本拠地に一人残された少女。


その声を聞き、ルナはすぐに背を向けることができなかった。


『悪魔がいないんじゃ、ここにいても手がかりは見つかりそうにないわね』


ルナは周囲を見渡した。


聞こえてくるのは、蛇の這う音と地面の奥で溶岩が弾ける音だけ。


サッハークは申し訳なさそうに俯いた。


『……ごめんね……

 わたしがしっかりしなくちゃだよね……』


その言葉とは裏腹に、蛇たちの動きは鈍い。


『お腹空いたよね……

 ごはん、探さなくちゃね……』


ルナは蛇たちを見て眉を寄せた。


悪魔たちがいなくなった今、餌を用意する者もいないのだろう。


『……あの子をひとりぼっちで置いていくのもどうなのかしら……』


レッドも同じことを考えていたらしい。


『この辺りに誰かいないか、もう少し探してみようか。

 サッハークも、他に誰かいれば大丈夫じゃないかな?』


『そうね……

 私たちもここからどこへ行けばいいかわからないし』


ルナはサッハークへ向き直る。


『サッハークがごはんを探すなら、しばらくの間一緒に行ってみましょう』


『……お姉ちゃんたち……

 一緒に来てくれるの?』


サッハークの表情が明るくなった。


『嬉しいな……

 この子たちも、きっと喜ぶよ』

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