初めての出会い1
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古代ノ扉
そこから繋がるのは、遥か昔
まだ世界がまどろんでいた時代
人と自然が交じり合い、
世界はゆっくりと目を覚ます――
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『…………』
色のない世界だった。
空も、地面も、立ち並ぶ石造りの遺跡も、すべてが灰色に沈んでいる。
巨大な石柱には見たことのない紋様が刻まれ、その隙間から伸びた樹木が崩れかけた建物を覆い隠していた。
風は吹いているはずなのに音は聞こえない。
まるで、時の流れから切り離された場所のようだった。
『(あれ……?)』
レッドはぼんやりと周囲を見回した。
『(ここは……)』
自分がどうしてここにいるのか分からない。
それどころか、今までどこにいたのかさえ思い出せなかった。
灰色の遺跡の向こうから小さな人影が歩いてくる。
蒼銀の髪を揺らし、白い衣を纏った少女。
『(る、な……?)』
名を呼んだ瞬間、世界が白く染まった。
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眩い光が消えると、失われていた色が一斉に戻ってきた。
青い空。
陽光を浴びて輝く草原。
遺跡の間に根を張る大木から、鮮やかな緑の葉が風に乗って舞い落ちている。
先ほどまで見ていた灰色の光景と同じ場所だった。
だが、そこには確かな生命の息吹が満ちていた。
『……ここが、扉の向こう……。
鏡ノ扉の世界、なのね。
時ノ大地とは全然違うわ』
ルナは初めて見る景色を確かめるように、ゆっくりと周囲へ視線を巡らせた。
その隣でレッドだけは言葉を失っていた。
『……?』
『?
レッド?
どうかしたの?』
ルナに声をかけられ、レッドは我に返る。
『あ……ううん。
なんだか、ここ……
夢で見たような気がして』
『夢……?
レッド、この場所に来た事あるの?』
『記憶はないんだけど……
どうしてかな、なんだか知ってる気がする』
レッドは背後にそびえる石の門を見上げた。
胸の奥に残る懐かしさのような感覚は、目を凝らしても形にならない。
『でも、今は僕の事より女神ノ涙を探さないと。
何か方法はあるの?』
『ええ。
私の持っている女神ノ涙が導いてくれるはずよ』
ルナは胸元から涙型の宝石を取り出した。
青い宝石を両手で包み静かに目を閉じる。
風に舞う葉の音だけが二人の間を通り過ぎた。
『…………』
『何か見える?』
『ええ……
……果てしないもの……
すごく広い、何か……』
ルナは目を開いたがその表情は晴れなかった。
『これって、どうやって
探したらいいのかしら……』
女神ノ涙が示したのはあまりにも曖昧で広大な気配だった。
どちらへ向かえばよいのかすら判然としない。
『……仕方ないわ。
まずは、誰かに話を聞いてみましょう』
ルナは遺跡の先へ続く道を見据えた。
『森を出れば誰かいるだろうし……
とにかく先に進まなくちゃ』
『……!』
その時、レッドの視線がルナの背後へ向いた。
草むらの向こうから何かが猛烈な勢いで飛び出してくる。
『あ……ルナ、危ない!』
『え?』
振り返る間もなかった。
水色の塊が勢いよくルナへ衝突する。
『きゃっ!?』
弾むように地面へ着地したのは、透き通った水色の身体を持つ奇妙な生き物だった。
丸い身体には赤い兜を被り小さな剣と盾まで携えている。
『なんなりか!
邪魔しないでほしいなり!』
『ぶつかってきたのはあなたでしょ?
危ないじゃない!』
『スラちゃんは急いでるなり!
これはスライムの未来に関わる大変なミッションなりよ!』
『……スライム……?
変な生き物ね。
こんなの見た事ないわ』
ルナは警戒するように杖を構えたまま、目の前の生き物を観察した。
スラちゃんは怒っているというより、ひどく慌てているように見える。
『ルナ、せっかくだし、
この子に聞いてみたらどうかな?
何か知ってるかもしれないよ』
『……そうね。
話は出来るみたいだし……』
ルナは杖を下ろし、スラちゃんと目線を合わせるように少し身を屈めた。
『ねえ、あなた、
女神ノ涙……えっと、涙の形をした宝石を知らない?』
『宝石なりか?
スラちゃんはそんなの……』
スラちゃんは答えかけたところで不自然に言葉を止めた。
小さな目がルナとレッドの間を忙しなく往復する。
『!』
『…………』
『……知ってるなり!
でも、教えてほしいならスラちゃんを手伝うなり!』
レッドはわずかに眉をひそめた。
『……取引って事か。
ルナ、どうする?』
『女神ノ涙についてわかるなら引き受けないわけにはいかないわ』
たとえ僅かな手がかりでも今の二人には必要だった。
ルナは頷くと森の奥へ続く道へ向き直る。
『レッド、行きましょう!』




