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プロローグ4

光の中から小さな生き物が飛び出してくる。


白く丸い身体。

紫色の帽子。

手には身体よりも大きな杖を持っている。


『まけちゃったんだもんね!』


『…………』


ルナとレッドは突然現れた生き物を無言で見つめた。


『……何これ』


『ぼくちゃんは、

 鏡ノ扉を守る精霊――』


小さな精霊は胸を張った。


『なーるほどー。

 へんなのいるし……

 たいへんなことになってるんだもんね!』


『鏡ノ扉を守ってたのか』


レッドは剣を収めながら精霊へ尋ねる。


『戦ったのは……

 僕らを試してたのか?』


精霊は得意げに頷いた。


レッドが隣を見ると、ルナがじっと自分を見つめていた。


『ルナ?

 そんなに見つめて、どうしたの?』


『!』


声をかけられ、ルナは慌てて顔を逸らす。


『何でもないわ』


鏡の精霊は二人の様子を気にすることなく杖を掲げた。


杖の先から光が伸び、黄金色の鏡ノ扉へ吸い込まれていく。


『鏡ノ扉は通れるようにしたもんね!』


鏡ノ扉の光が先ほどまでとは違う穏やかな輝きへ変わった。


『もう、だいじょうぶなのー』


精霊は鏡ノ扉の前をふわふわと漂う。


『いないあいだは、

 ぼくちゃんにおまかせなのー』


ルナは精霊を見つめ、少しだけ眉を寄せた。


『あなたを置いていくのは……

 ちょっと不安だけど……』


『鏡ノ扉もこれで通れるみたいだし……』


レッドは扉へ向き直る。


『準備はいいか?』


『……そう、ね……』


ルナはすぐには歩き出さなかった。

鏡ノ扉の向こうに、どのような世界が待っているのか。

彼女自身にも分からない。


『…………』


『レッド……』


『ん?』


ルナは不安を振り払うように、顔を上げた。


『私は、刻ノ大地以外の場所を知らないわ。

 外の世界については、本で読んだだけ……』


黄金色の光がルナの横顔を照らす。


『分からないことだらけなの』


ルナは隣に立つ少年へ向き直った。


『色々あると思うけど……

 助けてくれる?』


レッドは笑って頷いた。


『もちろん!

 これからよろしく、ルナ』


『ええ!』


ルナの表情にもようやく小さな笑みが浮かんだ。


『じゃあ……行きましょう』


二人は並んで鏡ノ扉の前へ立つ。


『今度こそ、

 鏡ノ扉は開くはずよ』


黄金色の光が強くなる。


ルナとレッドが足を踏み出そうとした、その時――。


『……あ、まってー』


背後から鏡の精霊の声が飛んできた。


『え!?』


二人が揃って振り返る。


鏡の精霊は大きな杖を振りながら声を上げた。


『このさき、

 ふたりぼっちじゃたいへんだもんね』


精霊の杖からいくつもの小さな光が零れ落ちる。


『召喚の間で、

 英雄に力を借りるといいんだもんね!』


『召喚の間……?』


新たな言葉に、ルナとレッドは顔を見合わせた。


女神ノ涙を探す旅は、まだ始まってすらいない。

これから二人が訪れる世界。

出会う英雄。

そして、カースの目的。


分からないことは、あまりにも多かった。


それでも――。


ルナの時計は止まることなく、今も刻を進めている。


残された時間の中で十二の女神ノ涙を集めるため。

記憶を失った英雄レッドと呪いを受けた刻ノ少女ルナ。


二人の物語は、黄金色に輝く鏡ノ扉の前から始まった。

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