果てしない夢4
それから間もなく前方の偵察へ出ていた兵士が駆け戻ってきた。
『大王!
前方から敵軍がどうやら本隊のようです!』
イスカンダルの周囲に兵士たちが集まる。
先ほどまで相手にしていた小部隊とは違う。
地面を震わせる無数の足音。
遺跡の向こうに掲げられた幾本もの旗。
整然と並びこちらへ近づいてくる兵の列。
本隊を名乗るにふさわしい規模だった。
『全軍に陣形を整えるように伝えて』
『はっ!』
命令を受けた兵士たちは、迎撃の隊列を組み始める。
『引くわけにはいかないわ』
ルナは胸元の時計を押さえた。
残された時間は少ない。
ようやく掴んだ手がかりをここで逃すわけにはいかなかった。
『イスカンダルさん。
僕らも一緒に行かせてください』
レッドが剣を構える。
『手がかりはこれしかないの。
可能性があるならやってみる価値はあるわ』
イスカンダルは迫る敵軍を見据え静かに答えた。
『……わかった。
なら、行くよ』
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イスカンダルの軍が正面で敵本隊を受け止める。
槍と剣。
盾と盾。
無数の武器がぶつかり合い、古代遺跡の一帯へ轟音が響き渡った。
敵軍は大きく四つの隊を連ね、波のように攻撃を繰り返してくる。
ルナたちはイスカンダルの陣形を突破しようとする部隊の迎撃を任された。
第一の一団は素早く動く小柄な兵と、淡い緑の髪を持つ術士たちだった。
敵は左右へ大きく広がり、正面に立つレッドを避けて後方のルナを狙おうとする。
『通さない!』
レッドは左へ走り、最初の一人へ斬りかかる。
敵は短い刃で受け止め、そのまま身体を低くしてレッドの足を払おうとした。
レッドは地面を蹴り攻撃を飛び越える。
空中で身体を捻り、着地と同時に剣を振り抜いた。
敵の武器が弾き飛ばされる。
一方、右側から術士の放った緑色の光がルナへ迫った。
黄金の英雄が翼を広げて前へ出る。
光は翼へぶつかり、無数の火花となって散った。
二人の術士が反撃する。
紫色の斬撃が左右から敵を挟み込み、第一の一団の隊列を崩した。
レッドは倒す必要のなくなった相手へ追撃せず、武器を失った兵の間を駆け抜ける。
残る術士の杖を剣の腹で叩き落とし第一波を退けた。
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第二の一団は、大盾を持つ重装兵と青い髪の剣士によって構成されていた。
重装兵二人が並び、隙間なく盾を重ねて前進する。
その背後では剣士がいつでも飛び出せるよう腰を落としている。
レッドが盾へ剣を打ち込む。
だが、厚い金属は僅かに揺れただけだった。
盾兵はそのまま突進しレッドを押し潰そうとする。
『レッド、下がって!』
ルナが杖を掲げた。
刻ノ力が盾兵の動きを僅かに鈍らせる。
レッドは正面から離れ、敵の側面へ回り込んだ。
しかし、その動きを待っていた青髪の剣士が飛び出す。
鋭い突き。
レッドは剣で軌道を逸らすが、続けて二撃、三撃と刃が迫る。
一歩ずつ後退させられ、背後には重装兵の盾が迫っていた。
黄金の英雄が空から急降下する。
光を纏った一撃が盾の上部へ叩き込まれ、重装兵の姿勢が崩れた。
二人の術士も同時に魔法を放つ。
盾の左右で紫色の光が爆ぜ、隊列に隙間が生まれる。
レッドは青髪の剣士の刃を弾き上げ、その胸元へ剣の柄を叩き込んだ。
敵がよろめく。
すぐに身を翻し、二枚の盾の間へ剣を差し入れ力任せに横へ払う。
重なっていた盾が左右へ開き、防御陣形が完全に崩れた。
第二波もこれ以上の進軍を断念して後退した。
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第三の一団は再び術士を中心とした部隊だったが、今度は盾兵が一人ずつ術士の前へ立ち、それぞれを守りながら別方向から攻撃を仕掛けてくる。
一方向へ意識を向ければ、もう一方から魔法が飛ぶ。
黄金の英雄が盾兵を引きつけ、二人の術士が敵の魔法を相殺する。
だが、互いの力はほぼ拮抗していた。
紫と緑の光が空中でぶつかるたび、激しい衝撃がルナたちの身体を揺らす。
『このままじゃ、押し切られる……!』
ルナは女神ノ涙へ手を重ねた。
『お願い……
少しだけ、力を貸して!』
杖から伸びた光が巨大な時計盤を描き出す。
回転する針が戦場の時を一瞬だけ歪めた。
敵の魔法が遅くなる。
盾兵の踏み込みが止まる。
対して、レッドと召喚された英雄たちの動きだけが、僅かに先へ進んだ。
黄金の英雄が盾兵の頭上を越える。
二人の術士もそれぞれ敵の側面へ移動する。
刻が元へ戻った瞬間、三方向から一斉に攻撃が放たれた。
盾兵は誰を守るべきか判断できない。
遅れて盾を動かした時には、術士の杖がレッドの剣によって弾かれていた。
魔法を封じられた敵は、第三波を維持できず撤退する。
そして最後に、敵将を守る精鋭が姿を現した。




