果てしない夢3
道中でも敵の小部隊との戦いは何度も起きた。
斥候。
補給を運ぶ兵。
遺跡の陰から奇襲を仕掛ける魔物たち。
イスカンダルの軍は襲撃を退けながら少しずつ前進していく。
戦いの合間、レッドは遠くまで続く敵軍の足跡を見つめた。
『軍の数……
かなり多いですね』
『そうね……。
話を聞くためとはいっても、簡単には近づけそうにないわ』
ルナは敵が進んできた道へ目を凝らす。
『何がしたいのかしら』
土地を奪うため。
人を支配するため。
宝を得るため。
ルナにはそこまでして争いを広げる理由が理解できなかった。
『土地に財宝。
理由は色々さ』
イスカンダルは淡々と答える。
『まあ……
僕も戦って倒して進んでいるのは同じだけれど』
『進んでる……?』
レッドがイスカンダルへ顔を向けた。
『あなたはここを守るために来たって聞きましたけど……』
『……それもある。
だけど、そのためだけに来たわけじゃない』
イスカンダルは足を止め、敵軍が現れた東方を見つめる。
『彼らはオケアノスから来たという。
それも伝説だと聞いていたけど……』
その声には敵への警戒とは別の感情が宿っていた。
憧れ。
期待。
長い間抱き続けたものへ、ようやく手を伸ばせるかもしれないという喜び。
『……ずっと夢だった場所に』
イスカンダルは短く息を吐く。
『だから、僕はここに来た。
守る事もだけど……
夢を叶えるために』
『夢……ですか?』
レッドが問いかける。
『そう。
先生から聞いた、伝説の場所……』
イスカンダルの視線は、遺跡のさらに向こうを見ていた。
『オケアノスを……見たいんだ。
世界の最果ての海を……
永遠に続く、果てしない氷の大地を、ね』
『果てしない……?』
レッドの言葉にルナがはっと顔を上げる。
『ええ……!』
女神ノ涙が見せた景色。
果てしなく広がる何か。
遠くまで続き、終わりの見えない場所。
『私が見たもの……
そのオケアノスなのかもしれない』
これまで森や人里を巡っても辿り着けなかった答え。
それがようやく一つの名前へ繋がった。
『遠回りしてきたけど、やっと繋がってきたわ』
『女神ノ涙……
その軍隊を調べれば見つかりそうね!』
ルナは敵軍がいる方角を見据える。
『なんとしても……
話を聞かなくちゃ!』
女神ノ涙を探すルナたち。
夢の地オケアノスを目指すイスカンダル。
目的は違っても進むべき方角は同じだった。




