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果てしない夢2

陣地の外へ出ると、古代遺跡の間を縫うように敵兵が押し寄せていた。


盾を構えた兵。

小柄な魔物。

杖を手にした術士。


それぞれの装備に統一感は薄い。

だが、ばらばらに襲いかかっているわけではなかった。


盾を持つ者が前へ出て、その背後から術士が魔法を放つ。

側面では小柄な兵が茂みに身を隠し、こちらの隊列を崩す機会を窺っている。

明らかに、指揮を受けた軍の動きだった。


『レッド!』


『うん!』


レッドが剣を抜き、ルナは杖を掲げる。


『鏡ノ扉の英雄たちよ……

 私の願いに応えて!』


青白い魔法陣が地面へ広がり、光の中から三人の英雄が姿を現した。


黄金色の翼を持つ戦士。

そして、広いつばの帽子を被った二人の術士。


敵兵が放った最初の矢が、

召喚の光を切り裂いて飛来する。


黄金の英雄は翼を広げ、その矢を正面から弾き落とした。


続いて盾兵が突進してくる。

レッドは真正面から受け止めず、斜めへ踏み込んで盾の縁へ剣を当てた。


ガキィンッ――!


金属音とともに盾の向きが外側へ逸れる。


無防備になった脇へ、レッドは剣の腹を叩き込んだ。


兵士の身体が大きく傾く。


その背後から小柄な魔物が棍棒を振り上げた。


だが、振り下ろされるより早く、二人の術士が同時に杖を振るう。

紫色の光刃が地面すれすれを走り、魔物の足元で弾けた。


『右からも来るよ!』


レッドの声に、黄金の英雄が空へ舞い上がる。

翼から放たれた光が、回り込もうとしていた敵兵の前へ降り注いだ。

地面が爆ぜ、敵の隊列が乱れる。


ルナはその隙を逃さず、杖へ刻ノ力を集めた。

敵の術士が放った魔法の動きが一瞬だけ鈍る。


ほんの僅かな時間。


それでも、レッドたちが射線から逃れるには充分だった。


二人の術士が反撃の光を放つ。

敵の魔法と紫色の光弾が空中で衝突し、激しい閃光が遺跡を白く染めた。


敵兵はなおも進んでくる。


しかし、イスカンダルの兵たちも、大王の指揮に従って左右から包囲を狭めていた。

敵がルナたちへ意識を向けた瞬間、側面から槍兵が突撃する。

逆にイスカンダルの軍へ向き直れば、レッドと召喚された英雄たちが前へ出る。

二方向からの攻撃に耐え切れず、敵の先遣隊は少しずつ後退を始めた。


最後に残った盾兵が、退路を守るように大盾を構える。

黄金の英雄が空から急降下し盾の上部へ重い一撃を叩き込んだ。

盾が下がる。


その瞬間、レッドの剣が横一文字に閃いた。


兵士の武器が弾き飛ばされ、敵はついに戦意を失って退いていく。


周囲へ一時の静けさが戻った。



------------------------------------------------------------


『……中々やる』


戦いを終えたイスカンダルが、ルナたちへ歩み寄る。


『ありがとうございます。

 でも、イスカンダルさん……』


レッドが言いかけると、イスカンダルは先ほど中断された話を思い出したように頷いた。


『それで……

 聞きたい事って……』


『私たち、涙の形をした宝石を探してるの』


ルナは手にしている女神ノ涙を見せる。

十二に分かたれた、刻ノ女神の力の結晶。


『宝石……?

 いや、最近は見ていない』


イスカンダルは首を横へ振った。


『この辺りの宝石は、多くが採掘されてしまったから。

 もうほとんど残っていないよ』


『そうなの……?

 でも……この世界……

 近くにはあるはずなの』


女神ノ涙が示した景色。

そして、記憶の欠片が導いた場所。


探している宝石がこの世界に存在することだけは、間違いないはずだった。


『そう言われてもな……』


イスカンダルは考え込み、先ほど退いていった敵軍の方角へ視線を向ける。


『……敵の、軍隊』


『彼らは遠くから来てる。

 もしかしたら、知ってるかもしれない』


『敵の軍隊……ですか。

 教えてくれそうにないな……』


レッドの言葉にルナは杖を握り直した。


『……力づくで聞き出すしかないわね』


『イスカンダル。

 もうしばらく一緒に行ってもいいかしら?』


敵軍を追えば女神ノ涙の手がかりが得られるかもしれない。


同時にイスカンダルたちにとっても戦力が増えることになる。


『……わかった。

 こっちも助かるし……

 構わないよ』


こうしてルナとレッドはイスカンダルの軍とともに敵の進軍を追うことになった。

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