人里の異変3
『……森の異変ってそんな重大な事だったのね』
しばらく歩いたあと、ルナが呟く。
『エスはひとりで森にいて大丈夫なのかしら』
狩人たちを追い払った時も、エスは自分の傷より森のことを優先していた。
今後さらに大勢の人間が押し寄せれば、彼一人で守り切ることは難しいかもしれない。
『助けに行きたいのは山々だけど……』
ゲオルギオスは険しい表情で答えた。
『こっちもドラゴンで手一杯だわ』
守らなければならない場所は森だけではない。
集落の守りは薄く、ドラゴンの居場所も分からない。
さらに東方の進軍が事実なら、いつ別の危険が迫ってきてもおかしくなかった。
『ドラゴンか……
全然見つからないですね。
どこに行ったんでしょう』
レッドは木々の間や上空へ目を凝らす。
巨大な翼を持つ生き物が近くにいれば、何らかの痕跡を残すはずである。
だが、鳴き声も羽音も聞こえない。
『急に現れたっていうのもよくわからないけど……
今までどこにいたのかな』
『わからないわ。
わかってる事なんて、何もないのよ』
ゲオルギオスは悔しそうに唇を噛む。
『私たちが知ってるのは、古のドラゴンが封印された地があるって伝説だけなの』
『その場所もわからないの?』
『ええ。
手がかりは目撃証言だけ。
本当に厄介だわ』
伝説に残る古のドラゴンが封印された地。
それが本当に存在するなら、突然現れたドラゴンとも関係している可能性がある。
しかし、肝心の場所が分からない。
ドラゴンを見たという者たちの証言も、出現した方角や時間が一致しているとは限らなかった。
それでも、立ち止まることはできない。
『だけど……
放っておく訳にはいかないし。
なんとかしないとね』
『ええ……』
ルナは頷いた。
女神ノ涙を探すこと。
自分の呪いを解くこと。
エスが守る森の異変。
人々の戦。
そして、伝説から現れたドラゴン。
目的は一つだったはずなのに、進むたびに新たな問題が姿を現していく。
それでも、女神クロノアは言っていた。
この世界の住人に力を借り、探していけば、必ず女神ノ涙へ辿り着けると。
ゲオルギオスとの出会いもまた、その道の一つなのかもしれない。
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三人は周囲を警戒しながら、さらに山の方角へ進んでいく。
見えないドラゴンを追って。
人里を揺るがす異変の正体へ近づくために。
そして――
「果てしないもの」に隠された、
女神ノ涙の手がかりを探すために。




