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森の異変5

木々の間から一人の狩人が姿を現した。


青い獣の頭を模した頭巾。

顔を隠す布。

そして、エスと同じく長い弓を手にしている。


その背後には、まだ数体の白骨兵が従っていた。

狩人は荒らされた森と、立ちはだかる一行を見回す。


『……見つかったか』


低く呟くと迷うことなく矢を放った。

狙いはエスだった。


エスも同時に弦を弾く。


二本の矢が空中でぶつかり、乾いた音を立てて軌道を逸らした。


狩人はすぐに二射目をつがえる。


今度は連続して三本。


エスは横へ跳び、一射目をかわす。

二射目を弓で叩き落としたが、三射目が頭巾をかすめた。


布が裂け、エスの頬へ細い傷が走る。


『エス!』


『大丈夫。

 前を見て!』


狩人の援護を受け、残っていた白骨兵が一斉に突進してくる。


レッドは正面の二体を引き受けた。

振り下ろされた剣を受け止め、反対側から迫る盾を肩で受ける。


鈍い衝撃に身体が揺れた。


それでも踏み止まり、敵の間へ剣を差し込む。

力任せに振り抜くと、二体の骨が同時に弾き飛ばされた。


翼の英雄がその頭上を越え、狩人へ光を放つ。

狩人は身を翻して直撃を避け、石壁の陰へ飛び込んだ。


そこへエスの矢が追う。

狩人が隠れた石壁へ矢が突き刺さり、逃げ道を塞いだ。


黒衣の術士たちは、それぞれ別の方向から魔法を放つ。

狩人は後退しながら矢を射ち返すが、次第に足場を失っていく。


なおも狩人は諦めなかった。

矢筒から残った矢をまとめて抜き、弓へ重ねてつがえる。

一度に放たれた矢が扇状に広がり、ルナたち全員へ降り注いだ。


『伏せて!』


エスの声が響く。


レッドはルナを庇うように覆い被さった。


召喚された英雄たちは武器と魔法で矢を弾くが、すべてを防ぎ切ることは出来ない。


一本がレッドの腕をかすめる。

もう一本がエスの肩へ突き刺さった。


『っ……!』


エスは苦痛に顔を歪めながらも、弓を手放さなかった。

肩へ刺さった矢を折り、狩人へ向けて弦を引き絞る。


相手もまた次の矢を構えている。


二人の弓が互いの胸を捉えた。


先に放ったのは狩人だった。


エスは身体を逸らして矢をかわすと、遅れて指を離す。

放たれた矢は狩人本人ではなく、その手にある弓を射抜いた。


弦が切れる。

狩人の弓が大きく弾かれ、地面へ転がった。


『今だ!』


レッドが残る白骨兵の間を駆け抜ける。

一体目の剣を弾き、二体目の盾を踏み台にして飛び越える。

着地と同時に剣を振り抜くと、狩人の足元へ鋭い剣閃が走った。


狩人は後方へ倒れ込み、追撃を避ける。

だが、逃げた先には召喚された英雄たちが立っていた。


左右を魔法で塞がれ、正面にはレッド。

背後では、負傷したエスが新たな矢をつがえている。


狩人はようやく抵抗を止めた。


最後に残った白骨兵たちも英雄の一撃を受け、青い霧となって消えていく。


森には荒い呼吸と、風に揺れる葉の音だけが残った。

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