ギルドの水晶で、おお!ってなるのが異世界での夢
森を抜けた頃には、空はすっかり茜色に染まっていた。
「見えてきたぞー!」
先頭を歩いていたレオが指を差す。
木々の隙間、その向こう。
石造りの高い壁。
そして、その奥に並ぶ赤茶色の屋根。
「……おお」
思わず声が漏れた。
煙突から立ち上る煙。
夕暮れの喧騒。
荷馬車。
武装した冒険者。
ゲームみたいな光景。
なのに、ちゃんと人が生きている匂いがした。
「なんかすげぇな……」
「だろ!」
レオが得意げに笑う。
森の中では生きることに必死だったが、こうして街を見るとようやく実感する。
俺は、本当に知らない世界へ来てしまったんだと。
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『あーあー、聞こえますかー?』
突然、頭の中へ聞き覚えのある声が響いた。
「うおっ!?」
「どうした!?」
レオがびっくりして振り返る。
「あ、いやなんでもない!」
危ない。
普通に声出た。
『ふっふっふ、通信時間回復です!』
「回線復活したのか……」
『神力が回復しましたので!』
さっきまで完全に沈黙してたから普通に焦ったんだが。
『いやぁ、使徒が野垂れ死にしそうだったので、私もヒヤヒヤしてました』
「切ったのお前だろうが」
『神にも通信制限あるんですぅ』
なんか急にスマホみたいなこと言い始めた。
『特に弱小神だと、安いプランしか入れないんです!』
「自信満々に言うな!!」
「トール?」
「ほんとになんでもない」
危ない危ない。
独り言ヤバいやつ認定されるところだった。
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街へ向かいながら、俺は気になっていたことを聞く。
「そういえば、みんなってどんな神を信仰してるんだ?」
「あー、信仰か!」
レオが胸を張る。
「俺は戦神グラム!」
やっぱり。
「強くて勇敢で、前へ進む戦士の神様だ!」
めちゃくちゃお前っぽい。
「私は癒しの女神フィリア様です」
ミーシャが柔らかく笑う。
「怪我人や病人を救う神様ですね」
なるほど。
「……私は狩猟神アルテ」
リズが短く答える。
「森と風、狩りの神」
「似合うな」
「……そう?」
少しだけ照れている。
「ぼ、僕は知識神マギウス様ですぅ……」
トマがおどおどしながら言う。
「魔法学院でも信仰してる人多いんです」
完全に学者系だ。
「トールは?」
レオが聞いてくる。
「あー……」
まあ隠す必要もないか。
「観測の女神ルミア」
一瞬、空気が止まる。
「……誰?」
レオが首を傾げた。
「聞いたことないですね……」
ミーシャも困った顔をする。
リズは少し考え込んだ後、
「……地方神?」
「た、多分……」
『地方神ってなんですか地方神ってぇ!?』
頭の中でルミアが叫ぶ。
うるさい。
『観測は文明発展に必要なんですよ!?』
でも現地知名度低いのは事実らしい。
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やがて街門へ到着する。
門番たちが列を確認していた。
「身分証あるかー!」
「冒険者証はこちらです」
「商人は荷物確認!」
わりとしっかりしてる。
「トール、冒険者証ないよな?」
「ない」
「じゃあ新規登録予定って言えば大丈夫!」
便利だな冒険者ギルド。
順番が回ってくる。
門番の視線が、まず俺の服へ向かった。
「……なんだその格好」
やっぱそこ突っ込まれるよな。
パーカー。
ジーンズ。
スニーカー。
周囲は革鎧やローブ姿。
完全に浮いている。
「遠方の民族衣装みたいな?」
「民族……?」
門番が微妙な顔をする。
するとレオが横から割って入った。
「この人、森で俺たち助けてくれたんだ!」
「ゴブリン相手に?」
「はい!」
ミーシャも頷く。
門番は少しだけ表情を緩めた。
「……まあいい。問題起こすなよ」
通れた。
よかったぁぁぁ。
異世界初日で牢屋はシャレにならん。
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門を抜けた瞬間。
街の熱気が押し寄せてきた。
「うお……!」
石畳。
露店。
肉を焼く匂い。
酒場の笑い声。
鍛冶屋の金属音。
全部が新鮮だ。
「すげぇ……」
完全に田舎から出てきた奴みたいになってる。
「まずは宿だな!」
レオが歩き出す。
「初心者冒険者御用達の安宿あるんだ!」
「安宿」
「雑魚寝!」
「あっはい」
現実。
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宿へ向かう途中。
ふと、服屋の前で足が止まる。
革シャツ。
外套。
丈夫そうなズボン。
どう考えても今の格好より馴染む。
「……服欲しいな」
「だよなぁ」
レオが苦笑する。
「その服かなり目立つし」
「やっぱり?」
「かなり」
リズが即答した。
傷つく。
「古着屋なら安いですよ?」
ミーシャが言う。
「ほんと!?」
「ただ、お金は必要ですけど」
「…………」
現実。
『がんばってくださいね使徒さん♪』
「お前あとで覚えてろよ……」
『理不尽!?』
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結局。
レオたちにかなり頭を下げ、最低限の着替え代まで借りることになった。
「ごめん、本当に助かる……」
「気にすんなって!」
レオが笑う。
「命助けてもらった借りの方がデカいし!」
「そ、そうです!ちゃんと返してくれれば!」
トマも慌てて頷く。
リズは腕を組みながら、
「……借金増えた」
「やめて、その言い方刺さる」
異世界初日。
所持金ゼロ。
借金持ち。
なかなかハードだ。
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着替えを済ませた後、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
二階建ての大きな建物。
入口からして騒がしい。
酒。
汗。
武器。
いかにも冒険者の溜まり場って感じだ。
「おぉ、新人か?」
「またガキ連中が増えたな」
「そっちの兄ちゃん変わった顔してんな」
視線が痛い。
するとレオが胸を張る。
「今日はゴブリン追い払ったんだぞ!」
「おー?」
周囲が少しざわつく。
「マジかよ」
「ガキどもにしてはやるじゃねぇか」
なんか褒められてる。
いや俺ほぼ棒振っただけなんだが。
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受付カウンターへ向かう。
そこには栗色の髪をした受付嬢が座っていた。
「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょう?」
テンプレ受付嬢だ。
ちょっと感動した。
「この人の新規登録をお願いします」
レオが言う。
受付嬢がこちらを見る。
「では適性確認を行いますね」
そう言って、水晶玉のようなものを取り出した。
「こちらへ手を」
「こう?」
水晶へ触れる。
次の瞬間。
淡い光が広がった。
受付嬢の表情が変わる。
「……使徒?」
周囲がざわついた。
「使徒だって?」
「マジかよ」
「どこの神だ?」
おお。
なんかすごそう。
「どちらの神の使徒様でしょうか?」
受付嬢が姿勢を正す。
「観測の女神ルミア様です」
沈黙。
「……申し訳ありません、存じ上げません」
『なんでぇ!?』
頭の中でルミアが叫んだ。
周囲も微妙な空気になる。
「あー……地方神系?」
「観測……?」
「聞いたことねぇな」
しょぼい。
めちゃくちゃしょぼい。
『しょぼくないですぅー!!』
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ルミア『ご入信もお待ちしております』




