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救助配信、開始します

鉱山ダンジョン入口。


崩れた岩山の前には、人だかりができている。


冒険者。


採掘師。


鉱山関係者。


そして野次馬。


皆が固唾を飲んで見守っている。


その中心に立つのは俺とステューだった。


「本当にやるんだな」


ギルドマスターが言う。


「やるしかないだろ」


俺は答えた。


奥にはレンたちがいる。


助けを待っている。


なら行くしかない。


ギルマスは懐から小さな箱を取り出した。


黒い木箱だ。


慎重に蓋を開く。


中には銀色のスクロール。


見たことのない魔法文字が刻まれている。


周囲がざわついた。


「あれは……」


「本物か?」


俺も知らなかった。


「脱出用のスクロールだ。これを広げれば、20人くらい一気に外に出られる」


ギルドマスターが言う。


空気が変わった。


「一枚しかない。途中で無理だと思ったら自分で使え」


静寂。


「王国から預かっていた緊急用」


「都市級災害対応品だ」


「本来ならそう簡単に使う代物じゃない」


ギルマスターはステューを見る。


「だから」


銀色の巻物を差し出す。


「絶対に辿り着け」


「17人分の命が入ってる」


ステューは真剣な顔で受け取った。


「任せろ」


猫耳が真っ直ぐ立つ。


騎士の顔だった。


その姿を見ながら。


俺は少しだけ思う。


やっぱり、こいつは格好良い。


そして、無茶をする。


だから、今度は俺が支える番だ。


「準備できたぞ」


ステューが魔導カメラを構える。


『配信設定完了です!』


ルミアの声。


『映像送信!』


『音声接続!』


『コメント機能開放!』


『異世界初生配信スタートです!!』


うるさい。


でも、助かる。


聖書が光り、半透明の画面が空中に映る。


そこには鉱山ダンジョンの中が映っている。


「おお……」


誰かが声を漏らす。


そこにいた皆が映像を見ていた。


まるで、全員で中にいるみたいだった。


コメントが流れ始める。


>> 映った


>> 本当に見えてる


>> 猫姫だ


>> 頑張れ


>> 生きて帰ってこい


ステューが眉をひそめた。


『猫姫言うな』


>> 言われてて草


『草って何だ』


「気にするな」


思わずいつものやり取りになる。


少しだけ、空気が軽くなった。


ギルドマスターが言う。


「始めろ」


全員の表情が引き締まる。


俺は深呼吸した。


《撮影》


鉱山。


崩落箇所。


過去映像。


鉱脈。


全部重ねる。


光る線が見える。


銀鉱脈。


鉄鉱脈。


崩落の中で。


唯一残った道。


「ステュー」


『なんだ』


「左」


『左?』


「そっちは崩れる」


ステューは何も言わず従う。


数秒後。


ドガガ!


落石音。


さっきまで立っていた場所が崩れた。


周囲がざわつく。


「マジか……」


「本当に見えてるのか」


ステューも振り返る。


「……あ、あぶねー」


小さく呟いた。


『だから言っただろ』


猫耳がぴくりと動く。


『お前ならできる』


少しだけ、胸が熱くなった。


---


崩れゆく鉱山を進む。


不幸中の幸いか、鉱脈ルートは読み通り安定している。


ただ、少しでもルートを見誤れば、大けがでは済まないだろう。


落石。


崩落。


割れた足場。


ステューはその卓越した身体能力で全てを避ける。


見えないところはこちらが指示を出してカバーできている。


「右」


『了解』


「飛べ」


『了解』


「しゃがめ」


『了解』


反発はない。


言い争いもない。


ただ、前へ進む。


それだけだ。


コメント欄が流れる。


>> すげぇ


>> 本当に攻略してる


>> これが生配信か


>> 猫姫かっこいい


『だから猫姫言うな』


>> 可愛い


『うるさい』


猫耳が動く。


コメント欄が盛り上がる。


その時だ。


ガラッ


足場が崩れた。


『っ!』


ステューの身体が傾く。


奈落。


真下は真っ暗だ。


「右手!!」


反射的に叫ぶ。


ステューが壁へ飛びつく。


ガシッ!!


片手で岩へ掴まる。


直後、足場が完全に崩落した。


ギルドから悲鳴が上がる。


「おい!」


「大丈夫か!?」


ステューは片手でぶら下がったまま。


ふっと笑った。


『誰に言ってる』


その顔を見た瞬間。


思わず笑いそうになった。


久しぶりだった。


本当に久しぶりに。


こいつが笑ったのを見た。


片手の力だけで飛び上がり、崖の上まで跳躍する。


どこで覚えたのか、自撮りをするようにカメラを自分に向ける。


『うまく録れているか?今助けに行くからな』


決め台詞まで入れなくていいんだよ。


---


再び鉱山を進む。


そこかしこでの崩れがひどくなっている。


崩落の影響か粉塵も濃くなってきている。


それでも鉱脈の光は見失わない。


銀。


鉄。


銅。


崩落した鉱山の中。


唯一生き残った道。


「そのまま真っ直ぐだ」


「あとどれくらいだ」


「三百メートル」


「遠いな」


「文句言うな」


その時だった。


コメント欄が動く。


>> 光が見えました


全員が固まった。


>> ステューさんですか?


レンだった。


ギルド中が静まり返る。


ステューも足を止める。


俺は即座に打ち込んだ。


>> 待ってろ


数秒後、返信が届く。


>> 信じてました


その一言だけだった。


だが、それだけで十分だった。


ギルドの誰もが拳を握る。


採掘師たちは涙ぐんでいる。


ギルドマスターですら目を閉じた。


レンは待っている。


17人も待っている。


だから。


絶対に辿り着く。


「ステュー」


『なんだ』


「迎えに行くぞ」


銀髪の剣士は笑った。


『ああ』


『任せろ』


そして。


騎士は再び走り出した。

面白かったら評価・ブクマお願いします。


ルミア『ご入信もお待ちしております』

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