コメントがあると作者ってすごく嬉しいんですよの回
『トールさん!!』
ある日の朝。
頭の中へ響くルミアの声がやたらとテンション高かった。
『ついに!』
『ついにです!!』
『オラクルネットVer2.0実装です!!』
『信仰パワーの向上により実現しました!』
「朝からうるさい」
『聞いてくださいよ!!』
「嫌な予感しかしない」
『コメント機能です!!』
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俺は宿のベッドから起き上がった。
「コメント?」
『はい!』
『これまで動画は見られるだけでした!』
『でも今日から違います!』
『視聴者の感想が届きます!』
『双方向コミュニケーション!』
『エンゲージメント向上!』
『ユーザー定着率改善!』
「急に仕事できる配信サイト運営みたいなこと言うな」
『いやーやっぱり配信者のモチベーションを高める施策も必要というか』
「まあ、確かに肯定的なコメントだったらそうだろうけど……」
『ん?なんですかトールさんともあろうお方が、アンチコメントが怖いんですか?ん?ん??』
こんなに異常にムカつく煽りをしてくる女神が、信仰を集めていてよいのだろうか。
それはそれとして、やっぱりコメントは気になるところだ。
「あーもう!アンチだろうが何だろうが来てみやがれ、コメント確認しに行くぞ!」
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ギルドへ向かう。
いつもの聖書。
いつもの動画。
だが、確かに変化があった。
動画の下。
文字が浮いている。
「すごいけど、これどういう仕組みなんだ?」
『信者の方限定で、コメントしたいなーという祈りを集めて出力してます』
「分かったような分からないような」
『祈り自体は少し前から収集してたので、もうある程度見れると思いますよ。』
『ほら、これ見てください』
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【ゴブリン攻略回】
>> 右足助かった
>> 右足見てたら本当に避けられた
>> 最近ゴブリン怖くなくなった
>> 右足教に入信しました
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「宗教できてるじゃねぇか」
『良いことです』
「せやろか」
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さらに下へ。
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【薬草採取回】
>> 三倍は盛ってると思ったけど本当に三倍だった
>> 薬草臭そう
>> 猫姫かわいい
>> 耳かわいい
>> 耳が正直
>> 猫姫もっと出して
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「ん?」
俺は二度見した。
「ん?」
もう一度見た。
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「猫姫回じゃねぇぞこれ」
『薬草回ですね』
「薬草の話どこ行った」
『視聴者が求めているものが分かりましたね』
「なんか嫌な予感がする」
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その時、後ろから声がした。
「おはよう」
振り返る、ステューだった。
最近は普通に朝の挨拶をするくらいには仲良くなっている。
最初の頃みたいな
「お前」
「なんだ」
みたいな空気は減った。
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「何見てるんだ?」
「コメント」
「コメント?」
「ほら」
聖書を見せる。
ステューは数秒眺めていた。
そして。
固まった。
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>> 猫姫かわいい
>> 耳かわいい
>> 猫姫もっと出して
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「…………」
「…………」
「見なかったことにしていいか?」
「無理だな」
耳が真っ赤だった。
猫耳も真っ赤だった。
器用だな。
「いや」
ステューが慌てる。
「違うだろ」
「何が」
「攻略動画だろ」
「そうだな」
「攻略法とか見ろよ」
「見られてるぞ」
「そうじゃなくて!」
慌てるステュー。
耳ぴこぴこ。
尻尾ぶわぶわ。
忙しい。
『人気者ですねぇ』
ルミアが嬉しそうだった。
『私の次くらいには』
「コメント一個も無かっただろお前」
『…………』
沈黙した。
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その後。
二人でコメントを読み漁った。
意外と面白い。
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>> スライム回のおかげで武器代浮いた
>> 薬草回助かった
>> 沼地回やばかった
>> 謝罪動画から見始めました
>> なんで謝罪動画が入口なんだ
>> 爆発興奮したので、またお願いします。
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さらに。
採掘回。
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>> 猫姫またやらかしてる
>> 鉱脈削るな
>> 採掘師かわいそう
>> でも戦闘かっこいい
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ステューが頭を抱えた。
「なんでそこなんだ」
「面白かったからだろ」
「不本意だ」
でも。
少しだけ。
嬉しそうだった。
猫耳が。
ぴこっ。
動いた。
「なあ」
ステューが小さく言った。
「なんだ」
「……その」
珍しく歯切れが悪い。
「役に立ってるなら」
「うん」
「別に悪くない」
そう言って視線を逸らした。
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コメント欄には。
今日も誰かの感想が流れていく。
誰かが助かった話。
誰かが真似した話。
誰かが笑った話。
動画は。
ちゃんと誰かに届いていた。
『素晴らしいですねぇ』
ルミアが満足そうに言う。
『次は生配信機能ですかね』
「やめろ」
『えー』
「絶対ろくなことにならない」
『そういうこと言うと実装したくなるんですよねぇ』
「やめろって」
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その時、俺はこのまま何もかも順調に進むんだろうなと思っていた。
他の撮影クルーはどうしようかとか。
Bランクも狙えるんじゃない?とか
正直言ってかなり浮かれていた。
前の世界では上手くいっていなかった配信の閉塞感がなくなっていたこと。
未来への希望で胸がいっぱいだったこと。
だから、俺たちはちゃんと失敗をした。
その時初めて、俺とステューが本気でぶつかることになるんだ。
面白かったら評価・ブクマお願いします。
ルミア『ご入信もお待ちしております』




