【神の目】鉱脈だけ見えてしまった件【採掘効率3倍】
『どうも、異世界攻略チャンネルです』
画面が切り替わる。
薄暗い坑道。
岩壁。
木製の支柱。
所々に設置された魔導ランタン。
そして。
つるはしを担いだ採掘師たち。
『今回は鉱山ダンジョンです』
『冒険者といえば魔物討伐を想像する方も多いと思いますが』
『実際には資源回収も重要な仕事です』
『鉱石は武器になります』
『鎧になります』
『お金になります』
『つまり大事です』
「最後だけ本音だろ」
隣でステューが呆れた声を出した。
『全部本音だ』
「そうかよ」
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画面が切り替わる。
採掘パーティの紹介。
ベテラン採掘師、護衛役、若手の採掘師たち。
ヒゲもじゃのドワーフたちだ。
そして、一人の少年。
またドワーフ。
だけどまだ若く、髭が生えていない。
採掘師見習い兼ポーター。
要するに荷物持ちである。
そしてなぜか細工用の工具袋までぶら下がっていた。
採掘師なのか細工師なのかよく分からない。
だが、その目は妙に輝いている。
鉱脈を見つけた時でもなく。
鉱石を見つけた時でもなく。
俺を見た時に!
なんか嫌な予感がした。
「トールさんですよね!」
元気よく声をかけてきた。
『そうだけど…』
「やっぱり!」
少年は目を輝かせる。
「レンです!」
「動画見てます!」
「ゴブリン回も!」
「薬草回も!」
「猫姫回も!」
「猫姫言うな」
即座にステューが反応した。
レンは少し慌てる。
「すみません!」
「でも本物だ……」
そう言いながら、レンは胸元から銀色の本を取り出した。
【観測の女神ルミア公式攻略聖書】
特定の神の信者になると、その神の聖書が神殿からもらえるらしい。
そんなシステムになってたのか、神様はちゃっかりしてるな。
角が擦り切れている。
かなり使い込まれていた。
「ほら! サインとか貰えませんか!?」
「できるか!!」
「ですよね…」
ステューが頭を抱えた。
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採掘が始まる。
カン。
カン。
カン。
坑道に金属音が響く。
採掘師たちは慣れた様子で岩を調べていた。
『さて』
『今回は鉱脈を探します』
「毎回思うんだけど」
ステューが言う。
「なんでそんなに見つけられるんだ?」
『コツがある』
「ほう」
採掘師たちも耳を傾ける。
『まず岩肌の色を見ます』
「なるほど」
『次に水分量』
「ふむ」
『さらに魔力の流れ』
「おお」
『最後に観測の女神ルミア様への信仰です』
「ん?」
『信仰心が高まると鉱脈が見えます』
「待て」
『見えます』
「待て待て」
『私には見えてます』
「……」
沈黙。
採掘師たちが顔を見合わせた。
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「それ絶対最後関係ないだろ」
ステューが言う。
『どうかな』
「どうかなじゃない」
『信じる者は救われる』
「採掘で?」
『採掘で』
「胡散臭ぇ……」
頭の中で。
『もっと言ってください』
ルミアが満足そうだった。
『今なら入信キャンペーン中です』
「やめろ」
『採掘効率アップ!』
「やめろ」
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実際には。
俺の《撮影》で見えている。
一度観測した物体は魔導カメラ越しにハイライトできる。
壁の向こう。
岩の奥。
鉄。
銅。
銀。
そして金。
ミスリルとかもあるらしいけどまだ実物を見たことがない。
しかし一般流通している金属だったらハイライト可能。
しかも、信者数アップのおかげか、ある程度埋まってても見える。
全部見える。
だから。
『こっち』
俺が指差す。
採掘師たちが掘る。
カン。
カン。
カン。
数分後。
「出たぞ!」
鉄鉱石だった。
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また移動。
『次こっち』
掘る。
出る。
『次』
出る。
『次』
また出る。
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三時間後。
採掘師たちは若干引いていた。
「おかしい」
「おかしいですね」
「なんで全部当たるんだ」
『信仰の力です』
「……」
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レンは目を輝かせていた。
「すげぇ……」
「本当に見えてるんですね」
『まあな』
「俺、最初動画見た時も疑ってたんです」
レンが少し照れ臭そうに笑う。
「でも」
「ゴブリン回見て」
「右足だって覚えて」
「実際助かったんです」
『そうか』
「はい」
レンは真っ直ぐ言った。
「俺、あの動画なかったら死んでたと思います」
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少しだけ。
胸の奥が温かくなった。
レオのことを思い出す時、思うことがある。
もっと助けられる命があるんじゃないかと。
動画が。
攻略法が。
誰かの役に立つんじゃないかと。
それが。
今目の前にいた。
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『さて』
話題を変える。
『次は少し奥へ行きます』
『良い鉱脈があるので』
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その時だった。
「おっ!」
ステューが声を上げる。
「見ろ!」
壁の一部が光っている。
銀鉱石だ。
かなり大きい。
採掘師たちも色めき立った。
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「私がやる!」
ステューがつるはしを奪う。
『待て』
「任せろ!」
振りかぶる。
全力。
猫耳全開。
そして。
ドゴォォォン!!
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壁が吹き飛んだ。
光ってた部分が、粉になって散っていた。
「……」
「……」
「……」
大量の鉱石。
そして。
周囲の岩盤まで崩れていた。
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採掘師が頭を抱える。
「猫姫ぃぃぃぃぃ!!」
「なんだ!」
「鉱脈削るなぁぁぁ!!」
「えっ」
「えっじゃない!!」
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ステューはしばらく説教された。
猫耳がぺたんとなっている。
尻尾もしょんぼりしていた。
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『反省してますか』
「してる」
『本当に?』
「してる」
『本当に?』
「してるってば」
耳がしゅんとしていた。
分かりやすい。
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だが。
良いところもあった。
護衛戦闘。
魔物襲撃。
その全てを。
ステューが一人で捌いていた。
剣技は圧倒的。
判断も速い。
戦闘能力だけなら間違いなく一流だった。
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帰還前。
動画の締めを撮る。
『今回の成果です』
映像には大量の鉱石。
採掘師たちの笑顔。
そして。
通常採掘量との比較。
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『結果』
『通常比約三倍』
『知識は力です』
『そして』
『観測の女神ルミア様への信仰も力です』
「まだ言うのか」
『大事な事なので』
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その時。
ふと。
視界の奥に違和感を感じた。
カメラをズームして様子を見てみる。
坑道のさらに奥。
巨大な空洞。
不自然な亀裂。
歪んだ支柱。
崩れかけた天井。
『……』
嫌なものが見えた。
すごく見えた。
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「どうしました?」
レンが首を傾げる。
『この辺の支柱とかって誰か整備してるのか?』
「いや、そういう話は聞いたことがありませんね」
『気のせいだと思いたいが……』
「結構ベテランの山師の方も入ってますし、問題ないとは思いますよ」
『まあ、一応見えちゃったしな…』
『今回、鉱山の支柱にひびなどが確認されました。ギルドには報告しますが、皆様ご注意ください』
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頭の中で、ルミアが呟く。
『フラグですね』
「言うな」
『百パーセントフラグです』
「言うなって」
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映像はそこで終わる。
『以上、異世界攻略チャンネルでした』
『皆さんのご視聴が、観測の女神ルミア様の力になります』
『お気に入り登録とご入信、よろしくお願いします』
動画終了。
だが。
その時の俺はまだ知らない。
あの坑道の奥で見た違和感が。
数日後。
カナンベルクを揺るがす大事件へ繋がることを。
面白かったら評価・ブクマお願いします。
ルミア『ご入信もお待ちしております』




