ルミアチャンネル ~風雲立志編~
ぎらつく太陽、波の音、ヤシの木。
どこだここ…?
ベルクハイムを出立して、確か宿場に泊まって…
夢?いやこれはっ……!?
「ようやくお気づきかな。使徒トールよ」
神の声が聞こえる。
声の主のほうに進む。
神の御姿が見える。
どデカいバカみたいなサングラス、白い肌に花柄のビキニ。そして2.5頭身デフォルメキャラ。
パラソルの下、ビーチベッドに寝そべった女神は、
左団扇でトロピカルジュースを飲んでいる。
「此度は、信者の獲得ご苦労」
「いや、成金ムーブがひどい!!」
「いやーでも、こんなに信者さんが増えたらウハウハですよ?ウハウハ」
「信者がトマ達に加えて、ベルクハイムの若手が加入してくれてるからって調子乗りすぎじゃないか?」
「否、否、否!断じて否ですよ!!これは増えた信仰に対する正当な対価です。
見てくださいよ、信仰力でつくったこの神界リゾートを」
そういわれて、周囲を見回してみる。
LUMIAとロゴの入ったパラソル。
豪華に見えないこともないフルーツ盛り。
あれ?空き缶流れ着いてる?
よく見るとヤシの木も張りぼてだ。
「お前も苦労してるんだな。」
「ちっがーう。もっといいところ見てくださいよ。イ・イ・ト・コ・ロ♡」
「は?」
「命がけで頑張って信者も増やしてくれたトールさんへのサービス回です」
「?」
「もー気づかない振りしても無駄ですよ?水着です水着!!
さすがにあの時みたいに裸は見せられませんが、
超大サービスのビキニですよ!!」
「流石にぬいぐるみモードの水着でサービスも何もないし、それに…」
「それに?」
「いやーあの時はめっちゃ神秘的で魅力的だったのは間違いないんだけど、
性格を知っちゃうとなー…やっぱ中身が大事なんだなって」
「がーん…」
ルミアがショックを受けたように、ビーチベッドの上で崩れ落ちる。
サングラスがずり落ちた。
「わ、私は一応女神なんですよ!?」
「知ってる」
「もっとこう……畏怖とか……神秘とか……!」
「最初はあった」
「最初は!?」
「今はなんか、配信者仲間みたいな感じ」
「降格してるぅ!?」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、ルミアはジュースを一気飲みした。
そして。
何かを切り替えるように咳払いする。
「まあいいでしょう!今日はサービス回だけじゃありません!」
「サービスでもないけど…」
「第二部開幕前の、重要設定解説回です!」
パァン!!
どこからともなく黒板が出現した。
ビーチなのに。
しかも。
【ルミアチャンネル ~風雲立志編~】
って虹色テロップまで浮かんでいる。
「演出だけは無駄に凝ってるな……」
「配信は見栄えが大事ですからね!」
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「まずは信仰力について!」
黒板へ、どーんと文字が浮かぶ。
【信仰力=神パワー】
「雑」
「でも大体合ってます!」
ルミアがふんぞり返る。
「信仰力っていうのはですね、“どれだけその神が敬われているか”です」
「なるほど」
「信者が増えるほど、神は現世へ干渉できるようになります!」
「加護とか?」
「そうそれ!」
ルミアが指を鳴らす。
すると俺の周囲へ、淡い光が浮かんだ。
「ミーシャさんが祈った時、敵の動きが見やすくなったでしょ?」
「あー……あれか」
確かに。
ゴブリンリーダーの動きが急に“見えた”。
「あれ、加護出力アップです」
「そんなゲームのバフみたいな……」
「実際かなりゲーム的ですよ、この世界」
神が言うな。
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「そして!」
ルミアが急にドヤ顔になる。
「今回最大の成果はこちら!」
黒板が切り替わる。
【配信聖書システム】
「うわ急に胡散臭くなった」
「失礼ですね!?」
ルミアはパラソルを指し棒代わりに使い始めた。
「元々、聖書っていうのは神託を人々に伝えるための端末なんですよ」
「端末なんだ……」
「神の言葉を地上へ送るための媒体ですね」
なるほど。
だから神殿に置いてあるのか。
「でも私は気づいたんです」
ルミアがサングラスをくいっと上げる。
「文字情報が送れて、それを描画できるなら、パワーさえあれば暗号化した映像も送れるのでは?と」
「発想がエンジニアなんよ」
「そこでハックしました」
「神がハックって言うな」
「トールさんが神界へアップロードした映像を、聖書経由で出力できるよう改造しました!」
どーん!!
謎の爆発エフェクト。
ビーチなのに。
「いや待て、それ普通に革命じゃないか?」
「そうですよ?」
ルミアが当然のように言う。
「しかも」
ニヤリ。
嫌らしい笑みだった。
「なんと動画を見てもらうだけで、広告収入的に信仰力が入ります」
「広告収入」
「微量ですけどね!」
「完全に動画配信サイトじゃねぇか!!」
「なのでトールさんには是非これからも動画を増やしていただきたい(切実)!」
両手を合わせて拝まれた。
弱小個人神の必死さがすごい。
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「ちなみに今後も機能追加予定です!」
黒板に、
【アップデート予定】
って文字が出る。
「信者が増えれば、もっと色々できます!」
「例えば?」
「高画質化」
「YouTubeか?」
「長時間配信」
「配信なんだ……」
「リアルタイム神託通信」
「ライブ機能!?」
「あとコメント欄とかも将来的には……」
「絶対荒れるじゃん、でも欲しいか…」
「ですので、リリースノートはちゃんと確認してくださいね!」
「運営みたいなこと言い始めたな……」
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「次!冒険者都市について!」
黒板が切り替わる。
【冒険者都市】
「トールさんが向かってる次の街ですね!トマさんたちとは別行動になっちゃったんですよね?」
「ああ、あいつらは訓練だとかで、魔法学校がある学芸都市に向かうから別れたんだ」
「うんうん青春ですねぇ」
閑話休題。
地図が浮かぶ。
ベルクハイムより、かなり帝国寄りだ。
「カナンベルクはダンジョン都市です」
「ダンジョン」
「この世界には、“魔力溜まり”みたいな場所があって、そこから魔物が湧くんですよ」
「うわゲームっぽい」
「それを人類はダンジョンって呼んでます」
そして。
「このへんもゲーム的なんですが、ダンジョンでは魔物由来の資源を無尽蔵に手に入れられます。
モンスターは尽きず、宝箱はリポップするって感じですね!
まあ鉱石みたいなものは減ったりするとかって聞きますが…」
カナンベルクは、そんな理由でダンジョン群を目当てに発展した街らしい。
「つまり」
ルミアが真顔になる。
「ベルクハイムより、もっと危険です」
「……」
「でも、その分」
ニヤリ。
「攻略情報の価値も高い」
なるほど。
だから。
動画が武器になる。
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「あと上位冒険者は普通に化け物です」
「雑な説明だな」
「勇者級がいますからね」
「は?」
ルミアが黒板へ、
【勇者】
と書いた。
空気が少し変わる。
「勇者は、人類の敵である魔物や魔族に対して、神界が送り出した決戦兵器です」
「兵器って言った?」
「兵器です」
即答だった。
「複数神から強力な加護を受けています」
「じゃあ、使徒の上位互換みたいな?」
「まあそんな感じです」
ルミアが頷く。
「ただし、勇者は布教とかしません」
「へぇ」
「あくまで“戦うための存在”ですね」
だから。
強い。
純粋に。
ただ強い。
「現時点で、ギルドが確認してる勇者は二人らしいです」
「二人……」
「ちなみに片方は帝国側で活動してます」
「うわ、絶対面倒なやつじゃん」
「面倒ですよぉ」
ルミアが遠い目をした。
「戦神系の企業勢なんで……」
「また配信者みたいなこと言ってる」
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「まあでも!」
ルミアがぱっと笑う。
「トールさんはトールさんの戦い方でいいんですよ」
「戦い方?」
「勇者は強いです」
「でも、“観測”はできません」
ルミアがこちらを見る。
「誰かが攻略法を見つけなきゃ、結局人は死ぬんです」
「……」
「だから」
ルミアがジュースを掲げる。
「攻略チャンネル、伸ばしていきましょう!」
「完全にプロジェクトのキックオフなんだよなぁ……」
でも。
少しだけ。
悪くないと思った。
2章開始の前に本編で説明しきれなかった設定の紹介回です。
コメディ会話は勝手に筆が進むので、逆に設定側の文量が減ってしまう、、、
私としては駄女神結構気に入ってますので、感想などあったら教えてください。
面白かったら評価・ブクマお願いします。
駄女神ルミア『ご入信もお待ちしております』




