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22/33

仇討ちはスッキリするし、草葉の陰でアイツも喜んでいる

「第二ラウンドだ、化け物」


ゴブリンリーダーが吠える。


片目。


毒で荒い呼吸。


それでも。


まだ速い。


だが。


今は見える。


肩。


腰。


右脚。


重心。


全部。


“観測できる”。


---


リーダーが踏み込む。


「右ッ!」


横回避。


斧が空を裂く。


今度は避けられる。


完全に。


『すごいですトールさん!!』


「っ、まだギリギリだ!!」


余裕なんかない。


一撃食らえば終わる。


でも。


さっきまでと違う。


読める。


だから。


時間を稼げる。


---


「前衛下がるな!!」


後ろで若手冒険者たちが叫ぶ。


痺れたゴブリンを各個撃破している。


巡回班も戻ってこない。


ギルド側が止めている。


全部。


全部繋がっていた。


“攻略”できている。


---


ゴブリンリーダーが苛立ったように咆哮する。


ギャアアアッ!!


斧。


連撃。


横薙ぎ。


振り下ろし。


踏み込み。


「っ!!」


避ける。


避ける。


避ける。


でも。


速い。


重い。


肺が焼ける。


脇腹が痛い。


『トールさん後ろ!!』


「分かってるッ!!」


後退。


斧が地面を砕く。


土が爆ぜる。


木片が頬を切る。


それでも。


避けられる。


“見えている”から。


---


その瞬間だった。


ヒュッ!!


矢。


一本。


ゴブリンリーダーの首へ突き刺さる。


ギャッ!?


リーダーが振り向く。


木柵の裏。


そこに。


リズがいた。


片目へ包帯を巻いたまま。


短弓を構えている。


「……待たせた」


そして。


次の瞬間。


轟音。


ドゴォォォンッ!!


爆炎。


リーダーの背後で炸裂。


熱風。


火炎。


土煙。


「なっ……!?」


トマ。


杖を構えていた。


震えている。


でも。


目は逸らしていない。


「レオの仇だ……ッ!!」


ゴブリンリーダーが怒り狂う。


だが。


振り向いた。


それが。


終わりだった。


「隙だらけだ!!」


俺は木の棒を叩き込む。


目。


じゃない。


肩。


斧側。


毒で鈍った腕へ。


ゴッ!!


体勢が崩れる。


そこへ。


リズが飛び込む。


短弓を捨てる。


逆手ダガー。


迷いがない。


「終わり」


ザシュッ!!


腱。


膝裏。


切断。


巨体が崩れる。


「今だぁぁぁッ!!」


トマが叫ぶ。


魔力収束。


杖先。


炎。


今までで一番大きい。


「《爆炎》ッ!!」


轟音。


火柱。


ゴブリンリーダーを飲み込む。


ギャアアアアアアアアッ――――!!


断末魔。


熱風。


そして。


静寂。


---


燃え残る火。


焦げ臭い空気。


ゴブリンリーダーは。


もう動かなかった。


「……勝った?」


若手冒険者の誰かが呟く。


誰もすぐには動けない。


実感がない。


でも。


少しずつ。


理解していく。


「……勝った」


「勝ったぞ!!」


「うおおおおおおお!!」


歓声。


崩れるように座り込む者。


泣く者。


笑う者。


俺も。


その場へ座り込んだ。


「はぁ……っ」


全身痛い。


死ぬほど痛い。


でも。


生きてる。


『やりましたね……!』


ルミアの声。


どこか泣きそうだった。


---


トマが燃え尽きたリーダーを見つめていた。


杖を握る手が震えている。


「……終わった」


リズも黙っていた。


しばらく。


誰も喋らなかった。


そして。


トマがぽつりと言う。


「レオ、仇は取ったよ」


風が吹く。


森が揺れる。


返事はない。


でも。


少しだけ。


肩の重さが消えた気がした。


---


その時。


『……増えてます』


ルミアが突然言った。


「は?」


『信者です!』


妙にテンション高い。


『増えてますよ!!』


すると。


トマとリズがこちらを見る。


「……トールさん」


トマが静かに言った。


「僕、正直まだ神様とかよく分からないです」


「私も」


リズも頷く。


「でも」


トマが続ける。


「レオの仇を取れたのは、あなたと……ルミア様のおかげです」


リズも小さく頭を下げた。


「……感謝してる」


その瞬間。


頭の中で。


『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


ルミアが爆発した。


『信者増えたぁぁぁぁぁ!!!』


うるせぇ。


『三人!!』


『一気に三人ですよ!?』


「お、おう」


『中堅個人勢くらいあります!!』


「その例えやめろ、そしてそこまでじゃねえし」


でも。


少しだけ笑ってしまった。


---


帰還は夕方になった。


森を抜け。


街へ戻る。


すると。


ギルド前でざわめきが起きた。


「帰ってきたぞ!!」


「若葉の風だ!!」


「生きてる!!」


人が集まる。


冒険者。


受付嬢。


街の人。


全員。


驚いた顔をしていた。


そして。


「……トール!」


医務室から飛び出してきたミーシャが。


俺たちを見る。


トマ。


リズ。


そして。


俺。


全員、生きている。


ミーシャの目から涙が溢れた。


「……勝ったの?」


トマが頷く。


「ああ」


「終わった」


ミーシャが口元を押さえる。


崩れるように座り込む。


泣いていた。


安心したみたいに。


張り詰めていたものが切れたみたいに。


---


ギルドマスターが静かに言った。


「ゴブリンリーダー討伐確認」


一瞬。


静寂。


そして。


爆発みたいな歓声が上がった。


「うおおおおおおおおお!!」


「マジかよ!!」


「若葉の風の仇取ったぞ!!」


ギルドが揺れる。


誰かが俺の背中を叩く。


痛い。


やめろ。


でも。


悪くなかった。


---


その喧騒の中。


頭の中で。


ルミアが小さく呟いた。


『……ありがとうございます』


珍しく静かな声だった。


『ちゃんと、届きました』


俺は少しだけ笑う。


「……ああ」


異世界攻略。


その第一歩は。


どうやら成功したらしい。

面白かったら評価・ブクマお願いします。


ルミア『ご入信もお待ちしております』

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