仇討ちはスッキリするし、草葉の陰でアイツも喜んでいる
「第二ラウンドだ、化け物」
ゴブリンリーダーが吠える。
片目。
毒で荒い呼吸。
それでも。
まだ速い。
だが。
今は見える。
肩。
腰。
右脚。
重心。
全部。
“観測できる”。
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リーダーが踏み込む。
「右ッ!」
横回避。
斧が空を裂く。
今度は避けられる。
完全に。
『すごいですトールさん!!』
「っ、まだギリギリだ!!」
余裕なんかない。
一撃食らえば終わる。
でも。
さっきまでと違う。
読める。
だから。
時間を稼げる。
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「前衛下がるな!!」
後ろで若手冒険者たちが叫ぶ。
痺れたゴブリンを各個撃破している。
巡回班も戻ってこない。
ギルド側が止めている。
全部。
全部繋がっていた。
“攻略”できている。
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ゴブリンリーダーが苛立ったように咆哮する。
ギャアアアッ!!
斧。
連撃。
横薙ぎ。
振り下ろし。
踏み込み。
「っ!!」
避ける。
避ける。
避ける。
でも。
速い。
重い。
肺が焼ける。
脇腹が痛い。
『トールさん後ろ!!』
「分かってるッ!!」
後退。
斧が地面を砕く。
土が爆ぜる。
木片が頬を切る。
それでも。
避けられる。
“見えている”から。
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その瞬間だった。
ヒュッ!!
矢。
一本。
ゴブリンリーダーの首へ突き刺さる。
ギャッ!?
リーダーが振り向く。
木柵の裏。
そこに。
リズがいた。
片目へ包帯を巻いたまま。
短弓を構えている。
「……待たせた」
そして。
次の瞬間。
轟音。
ドゴォォォンッ!!
爆炎。
リーダーの背後で炸裂。
熱風。
火炎。
土煙。
「なっ……!?」
トマ。
杖を構えていた。
震えている。
でも。
目は逸らしていない。
「レオの仇だ……ッ!!」
ゴブリンリーダーが怒り狂う。
だが。
振り向いた。
それが。
終わりだった。
「隙だらけだ!!」
俺は木の棒を叩き込む。
目。
じゃない。
肩。
斧側。
毒で鈍った腕へ。
ゴッ!!
体勢が崩れる。
そこへ。
リズが飛び込む。
短弓を捨てる。
逆手ダガー。
迷いがない。
「終わり」
ザシュッ!!
腱。
膝裏。
切断。
巨体が崩れる。
「今だぁぁぁッ!!」
トマが叫ぶ。
魔力収束。
杖先。
炎。
今までで一番大きい。
「《爆炎》ッ!!」
轟音。
火柱。
ゴブリンリーダーを飲み込む。
ギャアアアアアアアアッ――――!!
断末魔。
熱風。
そして。
静寂。
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燃え残る火。
焦げ臭い空気。
ゴブリンリーダーは。
もう動かなかった。
「……勝った?」
若手冒険者の誰かが呟く。
誰もすぐには動けない。
実感がない。
でも。
少しずつ。
理解していく。
「……勝った」
「勝ったぞ!!」
「うおおおおおおお!!」
歓声。
崩れるように座り込む者。
泣く者。
笑う者。
俺も。
その場へ座り込んだ。
「はぁ……っ」
全身痛い。
死ぬほど痛い。
でも。
生きてる。
『やりましたね……!』
ルミアの声。
どこか泣きそうだった。
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トマが燃え尽きたリーダーを見つめていた。
杖を握る手が震えている。
「……終わった」
リズも黙っていた。
しばらく。
誰も喋らなかった。
そして。
トマがぽつりと言う。
「レオ、仇は取ったよ」
風が吹く。
森が揺れる。
返事はない。
でも。
少しだけ。
肩の重さが消えた気がした。
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その時。
『……増えてます』
ルミアが突然言った。
「は?」
『信者です!』
妙にテンション高い。
『増えてますよ!!』
すると。
トマとリズがこちらを見る。
「……トールさん」
トマが静かに言った。
「僕、正直まだ神様とかよく分からないです」
「私も」
リズも頷く。
「でも」
トマが続ける。
「レオの仇を取れたのは、あなたと……ルミア様のおかげです」
リズも小さく頭を下げた。
「……感謝してる」
その瞬間。
頭の中で。
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
ルミアが爆発した。
『信者増えたぁぁぁぁぁ!!!』
うるせぇ。
『三人!!』
『一気に三人ですよ!?』
「お、おう」
『中堅個人勢くらいあります!!』
「その例えやめろ、そしてそこまでじゃねえし」
でも。
少しだけ笑ってしまった。
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帰還は夕方になった。
森を抜け。
街へ戻る。
すると。
ギルド前でざわめきが起きた。
「帰ってきたぞ!!」
「若葉の風だ!!」
「生きてる!!」
人が集まる。
冒険者。
受付嬢。
街の人。
全員。
驚いた顔をしていた。
そして。
「……トール!」
医務室から飛び出してきたミーシャが。
俺たちを見る。
トマ。
リズ。
そして。
俺。
全員、生きている。
ミーシャの目から涙が溢れた。
「……勝ったの?」
トマが頷く。
「ああ」
「終わった」
ミーシャが口元を押さえる。
崩れるように座り込む。
泣いていた。
安心したみたいに。
張り詰めていたものが切れたみたいに。
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ギルドマスターが静かに言った。
「ゴブリンリーダー討伐確認」
一瞬。
静寂。
そして。
爆発みたいな歓声が上がった。
「うおおおおおおおおお!!」
「マジかよ!!」
「若葉の風の仇取ったぞ!!」
ギルドが揺れる。
誰かが俺の背中を叩く。
痛い。
やめろ。
でも。
悪くなかった。
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その喧騒の中。
頭の中で。
ルミアが小さく呟いた。
『……ありがとうございます』
珍しく静かな声だった。
『ちゃんと、届きました』
俺は少しだけ笑う。
「……ああ」
異世界攻略。
その第一歩は。
どうやら成功したらしい。
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ルミア『ご入信もお待ちしております』




