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異世界攻略チャンネル

若葉の風が森で半壊したことを聞いたのは翌朝だった。


ギルドの前で顔なじみの冒険者が、落ち着かない顔で小声にそう教えてくれた。


俺はいつものように薬草とって走り込みして宿に戻って。


夕飯時にレオ達居ないなあとか、のんきなことを考えてた。


朝いつものようにギルドに行くと、どこか薄ら寒い様子で、血の匂いがした。


いつもの受付嬢に促され医務室に向かうと、レオを除いた3人が眠っていた。


リズは特に重症のようで、顔中に包帯を巻いていた。


医務室は消毒液の臭いと血の匂い濃くなって、よどんだ空気が手足にまとわりついてくるようだった。


「レオは、どこだ?」


答えは聞きたくなかったが、気持ちが口をついて出てきていた。


「レオは俺たちを守って死んだ」


見たことある若手パーティーの剣士が、いつの間にいたのか医務室のドアあたりに立っていた。


「レオが死ぬかよ、冒険が順調だって笑ってたんだぜ?」


「すまん」


「すまんじゃねぇ——」


受付嬢に腕をとられて止められていた。殴ろうとしていたのかもしれない。


「彼らもパーティーメンバーを亡くしているんです。おやめなさい」


震える手は行き場を失くして、下ろされた。


感情は行き場を失くして、どうすればいいかいまだに分からない。


---


ギルドの隅。


回収品置き場。


そこに見覚えのある剣が立てかけられていた。


レオの剣だった。


刃は欠け、柄には深い傷が走っている。


血までついていた。


「……」


隣には、焼け焦げた革鎧。


回収できた遺品らしい。


でも。


レオ本人はいない。


戻ってこなかった。


それだけで、胸の奥がぐちゃぐちゃになる。


しばらく何をするでもなく、ギルド内をうろうろして、ベテラン冒険者に窘められた。


それでもうろうろしていたら、殴られて床に転がされた。


医務室の前で「レオはどこだ」と何度も詰め寄って、邪魔になっていたのも自覚はあった。


「ほかの冒険者が死んだくらいで、ピーピー鳴くな!消耗品がまた一つなくなっただけだ!!」


そんなことに納得しなくちゃいけないなら、この世界はクソだなと言い返そうとした。


だけど、世界に抗ってもいないお客さんの俺が何を言うんだと思って口を閉じた。


どこか、本当にどこか分からないけど、心のどこかに、火が灯った気がした。


---


自分の気持ちがどこ向いているのかわからないまま、トマたちが目を覚ますのを待っていた。


その間、若葉の風に何があったのかとか、この街の冒険者の死に方とか、そんなことを聞いていた。


夕方頃になり、医務室のほうから騒がしい声が聞こえてきた。


トマたちが目覚めたのかと思い医務室に向かう。


「なんで!レオが死ななくちゃいけないのよ!!!!」


目覚めたミーシャが、同じく目覚めていたトマに食って掛かっている。


「ごめん」


トマは肩を震わせ、ミーシャのほうを見れないようだ。


「ごめんじゃなくて!!!」


ミーシャはレオと恋人同士だったこともあり、気持ちのコントロールができていない。


「ミーシャ、トマは皆を助けたんだ。レオの気持ちを無駄にするなよ」


「あんたに何が分かるのよ!!レオじゃなくてトマが代わりに死ねばよかったの―――――」


パンッ!


ミーシャの頬をいつの間にか起きたのかリズが叩いていた。


「トマに謝って」


静けさが医務室を支配しているようだった。


「ごめんなさい……ごめんなさい、ちがうの……っ、ごめんなさい……!」


正気を取り戻したミーシャは、泣きじゃくりながら謝罪を繰り返す。


うずくまって震えるミーシャにトマは優しく語り掛ける。


「大丈夫、気にしていないよ。それにレオの仇は僕が取るから待っててよ」


どこかうつろな表情で杖を持ち、装備の準備を始めるトマ。


「私も行く」


リズも準備を始める。


あっけにとられて俺は二人を見つめることしかできなかった。


あっという間に準備を整えた二人が、医務室を出たときようやく我に返る。


「おい!お前らどこに行くんだよ!!死ぬ気か?!」


「トールさん、ごめんねでもこのままじゃ終われないし、他にできることもない」


「しょうがない私たちは冒険者」


「このままいっても何にもならないだろ!」


「死ぬ気で行けばゴブリンリーダー1匹くらいは倒せる」


この時、心の灯の向き先が分かった気がした。


俺がこの世界でなすべきことってやつだ。


「馬鹿野郎!!勝手に絶望してるんじゃねえ!そんなに希望が見えないなら、俺が見せてやる!


冒険者の希望ってやつを俺が見せてやるよ!!」


そのまま、ギルドの入り口に向かう。


俺は、後ろからついてきていたトマ達に、怒鳴りつける。


「三日だ!三日以内に俺が森でゴブリン攻略法を見つけてくる。


それまでに俺が戻らなかったら、勝手に森に行け!」


「トールさん、でもそれは危険ですよ…」


「だれがどの口で言ってんだ!いいか三日でもどるからそれまでにけがを治しておけよ!」


そのままの勢いでギルドを後にする。


向かうは森、ゴブリンの棲み処。


---


「ルミア、観測の女神様の力を貸してくれ。迷える馬鹿どもに光を見せるんだ!」


『はいっ!』


また盗み見してたのか、鼻水をすする音も聞こえる。


手の中の魔導カメラが、微かに震えていた。


違う。


震えているのは、俺の手だ。


怖い。


当然だ。


レオは死んだ。


次は自分かもしれない。


それでも。


「異世界攻略チャンネル撮影開始だ…!」

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