ルミアチャンネル
「第一回ルミアチャンネル始まり始まり―」
「……は?」
気づくと、俺は見覚えのない教室にいた。
黒板。
机。
夕焼け空。
そして。
「そーれ託宣♬託宣♬!」
女教師姿のルミア。
問題はそこじゃない。
「……なんで2.5等身なんだよ」
ルミアが、ぬいぐるみみたいなデフォルメ姿になっていた。
しかも妙にぷにぷにしている。
「夢空間ですから!」
胸を張るルミア。
そこでふと、自分の視界が低いことに気づく。
「……え」
見下ろす。
短い手。
丸い足。
学生服。
「俺もデフォルメされてる!?」
自分自身も2.5等身ぬいのようになっており(しかも学生服だ)、意味が分からない。
「やっぱりこういうサービスシーンも必要なのかと思いまして」
「サービスなのか??」
「まあまあ、トールさんもそろそろこちらの世界の情報が欲しくなってきたころかと思い、
特別授業をですね、開催してあげようという優しさですよ」
「やり方はともかく情報は必要だったから有難いと思ってしまう。悔しい」
「我々神はですね使徒の夢に現れて、お告げを託すことができるんです。
その権能をちょっーーと改造してルミアチャンネルを開催します。
トールさんがやってた配信ってやつ見てたら面白そうだなーって思って、やってみたかったんですよね!」
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「それで調子のほうはどうですか?」
「ああ、≪撮影≫のおかげで、薬草拾いが順調でな、この分なら生活には困らなそうだ。
それにしても、ハイライト機能がついてるなら最初から言ってくれればいいのに意地悪すんなよ」
「って違いますよ!トールさんの異世界ホームレス生活はどうなってもいいんで、
布教のほうはどうなんですか?布教のほうは!?」
「あぁーそっちね、布教、まあそれなりに仲良くなった街の人とかには話してるんだぜ、
でも、そもそもルミアって誰?とかマイナー神はちょっと…とかって断られてしかいないのよ」
器用にぬいの足を折って崩れ落ち絶望を表現する女神。ちょっと可愛いかもしれんなこれは。
「まあ分かってはいましたよ、信者数全然増えないから…なんならちゃんと布教してくれてて嬉しいまであります……」
「えーっとまあ気を取り直して、授業してくれるんだろ?早く頼むよ、な?」
「しょうがありませんね!ここは魅惑の女教師ルミアちゃんが、迷える生徒に教えを授けましょう!!」
ルミアは女教師コスプレを思い出したのか、やる気を取り戻したようだ。
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「それでは本日の授業を始めます!」
ばんっ、と黒板を叩くルミア。
どこから出したのか分からない指し棒まで持っている。
しかも黒板には、
【異世界の基本!】
とカラフルなチョーク文字。
「……なんか妙に気合入ってるな」
「配信はサムネと導入が大事って学びましたからね!」
学ぶ方向性が若干ズレてる気がする。
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「まずはトールさんが現在住んでいる地域についてです!」
黒板へ地図が表示される。
かなりざっくりしていた。
「雑っ!?」
「だって信者少なくて情報精度低いんですもん!」
威張るな。
地図の右端あたりをルミアが指し棒で叩く。
「トールさんが今いる街は、田園都市!」
「おお、なんか田舎だなあー」
「《アルスベルグ王国》の端っこですね」
王国。
やっぱりそういう感じなのか。
「ちなみにアルスベルグ王国は、かなり信仰重視の国です」
「へぇ」
「神殿も多いですし、神官の立場も強いです。加護持ちは優遇されますし、信仰を持つこと自体が半ば常識ですね」
「なるほど」
だからギルドでも普通に信仰とか加護の話してたのか。
「逆に西側には《ゼノバル帝国》という大国があります」
黒板の反対側を叩く。
「こちらはかなり実力主義寄りです」
「実力主義?」
「神なんて信用できるか筋肉と技術が全てだ!!みたいな人たちが多いですね」
「脳筋国家?」
「あと無神論者も多いです」
「無神論ってあるんだな異世界にも」
「ありますよー。というか神の存在は認識してても、“信仰する価値ある?”みたいなスタンスですね」
現代人っぽい。
「なのでアルスベルグ王国とは結構仲悪いです」
「宗教戦争?」
「そこまで大規模ではないですが、国境沿いで小競り合いはありますね」
ルミアは黒板へ、
王国 VS 帝国
と雑に書いた。
「ちなみにこの大陸、細かい小国とか都市国家とかは色々ありますが、大きいのは大体この二国です!」
「へぇ」
「たぶん!」
「たぶん!?」
「いやぁ、信者少ないと情報更新遅いんですよね!」
駄目なソシャゲWikiみたいなこと言い始めた。
「なので辺境情報とか結構ふわっとしてます!」
「お前ほんと観測神か?」
「観測したいんですけどねぇー!」
ルミアがぷんすかしている。
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「次!」
ルミアが気を取り直して黒板を書き換える。
【魔物について】
ゴブリンの雑イラストが描かれた。
ちょっと下手だった。
「トールさんが戦ったゴブリンですが、あれは《魔物》です」
「魔物」
「人類の敵です!」
ズバッと断言するルミア。
「魔物は基本的に人間を襲います」
「本能的に?」
「はい。生態は色々ですが、“人を害する”方向性を持つ生物ですね」
「怖っ」
「しかも魔物は体内に《魔石》を持っています」
黒板にキラキラした石の絵が追加される。
「魔力の結晶ですね!」
「倒すと取れるやつか」
「そうです!魔道具燃料になったり素材になったり、結構高価ですよ」
だから討伐系は稼げるのか。
「あと魔物を倒すと、経験が蓄積されます」
「経験値!?」
「近いです!」
ルミアがビシッと指差す。
「この世界の人間は、魔物を倒すことで少しずつ肉体や魂が成長します!」
「じゃあレベルアップあるのか!」
「レベルという概念が見えるわけではないですが、感覚としては近いですね」
おお。
ちょっと異世界っぽくなってきた。
「筋力、耐久、魔力、反応速度などが少しずつ向上します」
「おおー」
「なので冒険者は実戦で強くなります!」
なるほど。
理にかなってる。
「ただし」
ルミアが急に真顔になる。
「基礎性能依存です」
「……はい?」
「例えば筋力が高い人は、大きく伸びます」
「うん」
「魔力才能が高い人は、めちゃくちゃ伸びます」
「うん」
「でもトールさんは」
嫌な予感。
「元が一般人寄りです」
「やめろ」
「しかも戦闘適性低めです」
「やめろ!!」
「なので成長しても、“頑張ってちょっと強い一般人”くらいかもしれません」
「夢がねぇ!!」
ルミアが咳払いする。
「まあでも」
「?」
「観測系スキルは珍しいので、伸び方次第ではかなり厄介ですよ?」
「厄介って言い方やめろ」
「あと隠密と組み合わさってるのもズルいですね」
「まだ盗撮言う?」
「一生言います」
理不尽だった。
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「それでは本日の授業はここまでです!」
ルミアが教鞭をビシッと振る。
すると教室の照明が何故か暗転した。
「……なんだ?」
次の瞬間。
どこからともなく壮大なBGMが流れ始める。
『次回!トール、初めての討伐依頼!?』
黒板へ謎のテロップが表示された。
『そして迫る借金返済!』
『ルミアの信者は増えるのか!?』
「いや勝手に次回予告すんな」
『チャンネルっぽいかなって!』
ルミアがドヤ顔でサムズアップする。
その瞬間。
世界がふわりと白く霞み始めた。
「あ、これ目覚める流れか」
『それでは皆さん!』
ルミアがくるりと回転し、ポーズを決める。
『皆さんの信仰が、女神ルミアの力になります!』
『お気に入り登録とご入信、よろしくお願いします!』
「だから配信じゃねぇって――――」
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「……朝か」
目を開ける。
見慣れた宿の天井。
周囲から聞こえる冒険者たちの寝息。
窓から差し込む朝日。
そして。
頭の中へ通知音が響いた。
【観測の女神ルミアから神託が届いています】
「……ほんとにチャンネル化する気か?あいつ」
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ルミア『ご入信もお待ちしております』




