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それから数日。
エリシアは部屋に引きこもった。
世話役のミレイユには体調不良だと伝え、そのままベッドの上で丸まって過ごした。
オスカーから見舞いの品や手紙が毎日欠かさず届いたが、エリシアはその一切を無視した。
彼の気遣いを感じて申し訳ないと思う一方で、それがたまらなく恐ろしかった。
彼の優しさに触れることできっと期待してしまう。自分はまた舞い上がるのだろう。
だが結局のところ自分は空っぽの何もない人間で、期待したところで本当は見向きもされていなかったのだとまた奈落に突き落とされる。
それを思うと怖くて怖くてたまらなくて、そんな意気地のない自分がオスカーの厚意を無視していると思うとますます自分が嫌いになる。
彼の優しさに耐えきれなくて、こんな自分など早く見捨ててほしいと潜り込んだベッドの中で体をできるだけ小さく丸めていた。
それでも見舞いの贈り物も、手紙も毎日欠かさず届いた。
「--………………」
そんな日々を過ごしたある晩にエリシアはようやくベッドから体を起こした。
机の上に積み重なった手紙。
毎日ミレイユが活けてくれる美しい花束。
お腹が空いた時にいつでも食べられるようにと差し入れられた夜食。
オスカーの心遣いを眺め、その重みにエリシアは胸元で手を握りしめる。
このままではダメだ。
自分がここにいる限り、彼にはずっと迷惑をかけてしまうだろう。
これから先、延々と迷惑をかけてしまうくらいならいっそ。
と、エリシアはそっと抜け出す。
ここに来てから真夜中に部屋を抜け出すのは初めてだ。
頼りなく蝋燭の火が揺れるだけの廊下は真っ暗で昼間の時とはまるで様相が違う。
震えそうになる足を叱咤して、エリシアはそろそろと静かに廊下を進んだ。
やがて城の外に出る。
薄く雲がかかる月はぼんやりとその輪郭を歪ませていた。
淡く薄暗い月明かりの下、エリシアは小さな裏門へと辿り着く。
使用人のための通用門であるそこには門兵は立っていなかった。
エリシアはそっと内鍵を開けるとその門をくぐって逃げ出す。
どこに行くかなんて当てなどなかった。
だがとにかく遠くへ。ここではないどこかへ。
とにかくオスカーのそばでない場所に行きたかった。
「エリシア」
--なのに、不意に背後からかけられた声にエリシアは金縛りになったように動けなくなった。
「夜の散歩をするなら塀の中だけにした方がいい。夜は特に魔獣が活発だから危ない」
低くしわがれた獣の唸り声のような声。
今、一番聞きたくない声だった。




