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 ぐずぐずとまだ鼻が鳴る。

 泣きすぎてまぶたは腫れぼったく、少しだけ頭も重い。


 それでもしゃくりを上げて大泣きするほどだった気持ちは涙で洗い流されたように落ち着いてきた。


「ーー……落ち着いたか?」


 そのタイミングを見計らったかのようにオスカーが問いかけてくる。

 その声にエリシアは顔を覆い隠したまま頷いた。


「それなら良かった。たくさん泣いて喉が渇いただろう。後で冷たいレモネードを差し入れるように厨房に伝えておく。今は顔を洗っておいで」

「あ、の……」

「ん?」


 優しい言葉におずおずと顔を上げるとオスカーが軽く首を傾いだ。

 泣いてくちゃくちゃになったままの顔を晒すのが恥ずかしくて両手で顔を覆ったまま、エリシアは覆った手の指の隙間からオスカーを見つめる。


「…………殿下は……どうしてそう……優しいのですか……?」


 エリシアの問いにオスカーがきょとんと目を丸くするのがわかった。


「……どう考えてもめんどくさい女ではないですか。怯えるし、我儘や刺々しい言葉を言うし、何かとすぐに泣く女だなんて……呆れられて見捨てられても文句は言えません。なのにあなたは……どうして優しくしてくださるのですか。私が妃だから……そうせねばならないと義務感に駆られているなら、その……」

「義務感のように見えたかい? そうだと思ったのなら、それは違うと言わせてくれ」


 エリシアの言葉にオスカーはそう言った。


「俺は…………うーん、そうだな。例えば釣り糸で雁字搦めに絡め取られた小鳥がもがいているのを見て、自分が手助けをして釣り糸がほどけるなら手を貸したいと思っただけなんだ。その小鳥が自由に羽ばたくのを見れたら嬉しいし、その小鳥が誰かの元に幸せを運ぶならもっとだ」


 その言葉をエリシアは理解ができない。


 例え話の小鳥が自分のことなのだろうとは察せる。

 わからないのは彼が彼にとって見返りにも、何にもならないことを嬉しいと言ったことだ。


「君も余裕ができればきっとわかるよ。誰かの笑顔は、幸せは見ているだけで笑顔がこぼれるものだよ」

「余裕…………」


 オスカーの言葉をエリシアは繰り返す。

 今はまだピンと来なかった。

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