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果たして王子妃の役目とは何なのか。
オスカーに何かを命じられる度にエリシアは戸惑い、そんな自問を繰り返した。
君の面白いと思った図書を教えてほしい。この通り、本を読める体ではないから読み聞かせてくれると嬉しい。
茶会を開いてくれないか。君が美味しいと思う菓子と茶を揃え、共にゆっくり楽しめるものがいい。
城の広間の花を君に選んでもらいたい。何、外からやたら滅多に人が来るわけでもないのだから毎日目にする君の心を和ますものがいい。
「ーー………………」
ここ最近にオスカーに命じられたことを思い返しながら、エリシアは俯く。
オスカーは色んな屁理屈を捏ねて王子妃の役目とこじつけてはいたが、所詮は屁理屈。これが求められた役目とは何も関係ないことぐらいエリシアにもわかる。
彼は一体何がしたいのか。どういうつもりなのか。
「………………ああ」
ふとエリシアは自分が泣き喚き、無様に彼に八つ当たりしたことを思い出す。
ああやって自分が八つ当たりをしたから、彼は自分を黙らせるために屁理屈でこじつけてどうでもいいことを命じているのか。
そう気がつくとエリシアは自分が急に恥ずかしくなってきた。
子供のように泣き喚いて我儘を言って手を煩わせているのと同じだと気がついたからだ。
「エリシア」
と、エリシアが己を恥じているとのしのしと緩やかな足音を立ててオスカーが現れた。
「ここにいたか。実はそろそろ庭園の花の植え替え時期でな。スティーブ爺と相談してどんな花を植えるか……ーー」
「殿下」
オスカーが話すことを遮るのは無礼だとはわかっていたが、エリシアは彼の話を遮っていた。
己の恥のせいで彼を煩わせたくなかったのだ。
「……今まで申し訳ありませんでした」
「……? それは何の謝罪だ?」
「今まで私の我儘で煩わせてしまいました」
きょとんと首を傾いで問うオスカーにそう告げれば、オスカーはますます不思議そうに目を丸くした。
「……もう……結構ですから。私の我儘で煩う必要はありません。大変申し訳ありませんでした」
そうして深く頭を下げれば、オスカーはしばらく無言でエリシアを見つめた。
「…………んー」
それからややあってオスカーが首を捻る気配がした。
エリシアは深く頭を下げたまま動かない。動けなかった。
彼がどう反応するか恐ろしかったからだ。
「エリシア、どうして君がそう思ったかを尋ねてもいいかな」
「それは……その、殿下がお命じになられることが他愛もなく、妃の役目とは思えないものばかりですので……」
「ほう」
エリシアの言葉にオスカーが頷く。
その声が妙に恐ろしかったのは、エリシアが返答を間違って機嫌を損ねた時の父親と同じ言い方だったからだろう。
エリシアは頭を下げたまま、次に怒号が来るだろうと背筋を強張らせてただオスカーの次の言葉を待つ。




