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第五章:地下室の死体ギャラリー

「臭う……。なんてこと、エド兄のフットサルの後の靴下よりひどいじゃない」

 愛子が服の袖で鼻を覆いながら囁いた。


「おい! こんな切羽詰まった時にディスるんじゃない!」

 エドが言い返した。

「いいから降りるぞ。ナナは外の井戸で目を洗うのに必死なはずだ」


 彼らは朽ちかけた木の階段を降り、地下室へと向かった。エドのスマホのライトが、湿った土の壁を不気味に照らし出す。底に辿り着くと、空気はひどく冷たく、澱んでいた。


 エドがカメラを周囲に向ける。次の瞬間、三人はその場で凍りついた。


部屋の中央に、小さな食卓に向かい合うように二つのロッキングチェアが置かれていた。その椅子に座っていたのは、ひどく「身なりを整えた」二つの人影だった。彼らは豪華な和服を纏っていたが、その肌は灰色に変色し、ミイラのように干からびていた。


「おじいちゃん……? おばあちゃん……?」

 朱里が弱々しく呟いた。


 エドがゆっくりと近づく。机の上には、生前の二人の顔が写った家族写真が置かれていた。それは二階で見つけたアルバムの写真と同じだった。ここにいるのが、本物の、血の繋がった祖父母なのだ。


何より恐ろしかったのは、その「保存状態」だった。空っぽになった眼窩には透明なビー玉が埋め込まれ、口元は無理やり上向きに縫い合わされ、永遠に微笑むことを強要されていた。


「二人とも……巨大な人形にされちゃったんだ」

 愛子がすすり泣き始めた。

「兄ちゃん、もし二人がここにいるなら……じゃあ、上にいるのは誰なの?」


 突如、暗闇の隅から木の椅子が擦れる音が聞こえてきた。――ギィ……ギィ……。


 藁の山の陰から、一人の老人が姿を現した。斧を持ったポップポップではない。顔が崩れ、無数の縫い傷だらけの、別の男だ。まるで手術台から逃げ出してきた患者のような姿をしていた。


「おや……新しい客人が来たようだね」

 男が低く呟いた。

「ナナが言っていたよ……冬のコレクションには、もっと新鮮な素材が必要だってね。若者の生命力は……この枯れ果てた場所に彩りを与えてくれる。」


「近づくな!」

 エドが構えをとった(空手というよりは、かくれんぼの鬼に近いポーズだった)。

「俺には……俺には、めちゃくちゃ気が強い妹と、激辛のサンバルがあるんだぞ!」


「兄ちゃん、私を巻き込まないでよ!」

 愛子が震えながら抗議した。


「愛子、朱里、よく聞け」

 エドは男から目を逸らさずに早口で囁いた。

「男の背後に、村の排水路に繋がってそうな小さな扉がある。俺がこの三脚を投げたら、全力で走れ。振り向くな、止まるな、人形が名前を呼んでも無視しろ」


「エド兄はどうするの?」

 朱里が不安そうに尋ねた。


 エドは膝を激しく震わせながらも、薄く笑った。

「安心しろ、俺はヒロ親父の長男だ。インドネシアの血を引く俺が、こんな不気味な奴にみすみす負けるかよ。それに……靴下の中にもう一つ、予備のサンバルが隠してあるんだ」


 男がメスを手に躍りかかってきた瞬間、エドが叫んだ。


「今だッ!」

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