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第六章:泥の迷宮とテラシの絶叫

 エド、愛子、朱里の三人は、狭く苔むした地下排水路へと滑り落ちた。――バシャーン! 彼らが着地した膝丈まである水は、市場のゴミ溜めよりもひどい悪臭を放っていた。


「最悪! 私の新しいジーンズが! これ、限定版なんだからね、兄ちゃん!」

 背後から迫るナナの唸り声が聞こえているというのに、愛子は泥を払おうと必死に泣き言を言った。


「愛子、助かったらジーンズショップを丸ごと一軒買ってやるから! 今は走れ!」

 エドは愛子のジャケットを力任せに引っ張った。


 この排水路は、どうやら「失敗作」の廃棄場所だったらしい。胴体のない何千もの人形の頭が水面に浮かび、空虚なボタンの目で彼らを見つめていた。一歩進むたび、足元では腐った藁の塊が、まるで人間の肉のような生々しい感触で踏みつけられた。


「なんでこんなに人形がいるの!? 藁でアベンジャーズでも作る気なの!?」

 ずぶ濡れになったコモドドラゴンのぬいぐるみを抱きしめたまま、朱里が叫んだ。


 ドサッ! ドサッ! ドサッ!


 頭上で、排水路の鉄格子が乱暴に引きずられる音がした。隙間からナナの顔が覗く。その目は真っ赤に腫れ上がり、涙に濡れていた――先ほどの愛子のサンバル・テラシの効果だ。その姿は、まるでメイクに失敗したホラー映画のモンスターのようだった。


「忌々しいガキども……。ナナの目はよく見えないけどねぇ、その安物の唐辛子の臭いはプンプンするよ!」

 ナナが上から叫び声を上げた。


「安物じゃないわよ、クソババア! カリマンタン産の本物よ! 腎臓まで染みる辛さなんだから!」

 走りながら愛子が言い返した。


「愛子! 議論してる場合か!」

 エドが絶望混じりに怒鳴った。


 突如、前方から巨大な影が現れた。排水路の合流地点に、黒い液体を滴らせた斧を手にポップポップが立っていた。彼は低く笑い、その声がトンネルの壁に反響して、おぞましい残響を作り出した。


「どこへ行くんだい、可愛い孫たちよ。ここには電波もなければ警察もいない……あるのは藁だけだ……」


「エド兄、なんとかして! 空手の技を使ってよ!」

 朱里が泣き叫ぶ。


絶体絶命だった。背後からは蜘蛛のようにナナが這い降りてき、前方には斧を持ったポップポップ。エドは靴下のポケットを探った。――空っぽだ。


「愛子! サンバルは! まだあるか!?」

「もうないわよ! 最後の一袋はナナの目にぶち込んだわ!」


「……クソ、なら最後の手段だ!」

 エドは覚悟を決めた。「朱里、そのコモドをポップポップに投げろ!」

「嫌だ! コモ公は無実だもん!」


 パニックの中、エドは壁にある古いガス管からガスが漏れているのを見逃さなかった。狂気じみたアイデアが浮かぶ。彼は先ほど箱で見つけた親父のジッポーライターに火を灯した。


「全員、水に潜れ! 今すぐだ!」


 ナナが彼らに飛びかかろうとした瞬間、エドはそのライターをガス管に向かって投げつけた。


 ドォォォォン!


 小規模だが、ナナとポップポップを吹き飛ばすには十分な火球が膨れ上がった。エドはその爆煙を利用して、二人の妹を引き寄せ、村の外の川へと続く小さな隙間へと滑り込んだ。


「走れ! 振り向くな! 振り向いたら、一生テザリングのパスワードを教えないからな!」

 エドが脅した。


「インターネットなしの死」という最悪の脅しに、愛子と朱里は光の速さで駆け出した。失敗作の人形の山を飛び越える姿は、まるでプロのハードル選手のようだった。


背後の炎の中から、ナナの耳を切り裂くような絶叫が響き渡った。


「お前たちの皮をぉぉぉ! ナナには新しい皮が必要なんだよぉぉぉ!!」

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