第二章:幽霊学校とクローゼットの秘密
翌朝、食卓の空気は……奇妙だった。ナナはプロの料理人も真っ青なスピードで人参を切り刻みながら、鼻歌を歌っている。一方のポップポップは、壁をじっと見つめたまま座っていた。まるで彼にしか見えないサッカーの試合でも観戦しているかのようだ。
「エド兄」朱里が兄を肘で突きながら囁いた。「なんでおじいちゃん、さっきから壁を見てるの? あの壁、Wi-Fiでもあるの?」
「しっ、静かに」エドは小型カメラで隠し撮りを続けながら小声で返した。「……悟りでもダウンロードしてるんだろ。いいからおにぎり食え」
愛子が自分のおにぎりの匂いを嗅いだ。「これ、中身は何? なんだか……土みたいな味がするんだけど」
「それは村の秘伝のスパイスだよ、愛しい子」
突如、ナナの声が愛子の耳のすぐ後ろで響いた。愛子は驚きのあまり天井まで飛び上がりそうになった。「たくさんお食べ。学校へ行く体力をつけなきゃね」
名頃村の学校は、学び舎というよりは古い貯蔵庫のような木造の建物だった。生徒は? エド、愛子、朱里を含めてわずか五人。残りは? 空席に座らされた数百体もの案山子たちだ。それらは皆、使い古された制服を着せられていた。
「よし、決まりね。私たちは低予算版のホグワーツに入学したんだわ」
最前列に座る、ひび割れた眼鏡をかけた案山子を見て愛子が呟いた。
「ポジティブに考えろよ、愛子」エドがカバンを置きながら言った。「少なくとも、お前はこのクラスで一番の美少女確定だ。ライバルは口を縫い合わされた藁人形だけなんだからな」
「ちっとも嬉しくないわよ!」愛子が怒鳴った。
休み時間になると、雰囲気はさらに不条理さを増した。エドは、数少ない「本物の人間」の一人である地元の少年、ケンジに話しかけてみた。
「ケンジ君、なんでこの案山子たちは……新しい服を着ているの?」
ケンジは青ざめた顔で振り向いた。「この村から誰かが『去る』たびに、ナナが新しい服を縫うんだ。……エドさん、案山子のボタンには絶対に触っちゃだめだ。彼らが嫌がるから」
夕方、ナナとポップポップが上の畑の案山子たちに「餌をやる」と言って出かけた隙に、エドは小さな調査を行うことに決めた。
「よし、二人がいない間に上の物置を調べるぞ」
「嫌よ! 私はマンガの続きを読みたいの!」愛子が拒絶した。
「カバンの中に、最後の一つになった小袋のサンバルがあるぞ」エドが交渉を持ちかけた。「協力する奴には、今日の夕食に少し分けてやる」
『サンバル』という言葉を聞いた瞬間、愛子と朱里のインドネシア人の血が騒ぎ出した。二人はついに同意した。彼らは二階にある、ナフタリンと厚い埃の匂いが漂う、鍵のかかった部屋へと忍び込んだ。
部屋の隅、古い死装束のような布に覆われた大きな木箱を見つけた。エドがゆっくりと蓋を開ける。中に入っていたのは宝物ではなく、彼らの血を凍らせるような身の回り品だった。
「これ……お母さんの眼鏡?」朱里が、光のものにそっくりな壊れた眼鏡を拾い上げた。
「こっちは、去年失くしたお父さんの財布?」愛子の手が震える。ワヤンのキーホルダーがついた茶色の財布だ。
そしてエドは、箱の底でさらに恐ろしいものを見つけた。まだ血の付いた入れ歯と、一冊の古いフォトアルバム。最初のページには、幼い光を抱く本物のナナとポップポップの写真があった。
その顔は、今下にいるナナとポップポップとは全くの別人だった。
「兄ちゃん……もし、あの人たちが私たちのおじいちゃんとおばあちゃんじゃないなら」朱里が震える声で囁いた。「……今朝、鍋を作ってくれたのは誰なの?」
突如、重い足音が階段を上ってくるのが聞こえた。――ギィ……ギィ……ギィ……。
「子供たち……ナナ、予定より早く帰ってきたよ」
扉の向こうから、ナナの甲高い声が響いた。
「まさか、禁じられたお部屋にいるんじゃないだろうねぇ? ナナ、いいものを持ってきたんだよ……。お前たちにそっくりな、新しいお人形を縫い上げたところなんだ」
エドはすぐさまカメラを切った。三人は完全に、袋のネズミとなった。




