新しい総本山
そして突然、
「ぅ、きゃあああぁぁ・・ぽぽぽ・・」
と奇声を上げると、両手でもった棒の先端を壷の口を覆っている紙のふたに突き刺した。
「かぁーーー」
道師さまは念を送っているらしい。その時、棒の先端のガラスがピカッと光った。
「フンッ」
そう言うと、道師さまは棒を生き抜いて、次の壷に突き刺した。
「かぁーーー」・・「ピカッ」と同じ行程を繰り返し、最後の一個が終わり棒を引き抜くと、その棒をうやうやしく上に掲げ、さらに大きな声で
「かあああああーーーーー」と叫んで頭の上で振り回した。
それに伴い、会員たちは手を合わせ頭をたれて、自らの邪気を払ってもらうかのように神妙にしていた。
「はい、道師さまありがとうございました。これで皆様がお持ちになった気は浄化されました。お帰りの際、スタッフが新しい壷をお渡しいたしますのでお持ちください。この頃は気候がよく、悪い気は薄れておりますので、次回は10日後位で大丈夫かと思います。もちろん個人差がございますので一杯になったな~と思われた方は、お早めにおいでくださいませ。大変お疲れ様でした。」
ラメの紫服男は、そう言うと後ろに控えているスタッフに目配せし、部屋のドアを開け会員の退出を促した。
合図を受けた女性スタッフは、巫女の格好をしており、退出する会員ひとりひとりに新しい壷の入った風呂敷包みをうやうやしく手渡し、最後の一人が退室するとスタッフ自身も外に出て部屋のドアを閉めた。
それまで、ガラスの付いた棒を頭の上に掲げていた道師さまは、大きなため息をついて腕を下ろした。
「ふうううぅ。あと何人ぐらい待っているのかな。」
「そうだな。まだ100人位はいるみたいだなぁ。本日締めて、200人位ってとこか。」
とラメの紫服男が答えた。
「てぇことは、5千円×200人で・・ウホホ100万くらいだな?」
「まぁ、そんなとこだ」
「しかし、こんなに儲かるとは思わなかったな」
「いやあ、まだまだ、そのうちもっと広いところに総本山を作って、全国から会員が集まるようにしてやるぜ」
「よし、じゃあまず今日の分を片付けちゃおうか」
道師さまがそういうと、ラメの紫服男は近くの壁にある小さなスイッチを押した。
すると、その合図を待っていたかのように、さっき会員達が出て行った扉が音もなく開き、女性スタッフが新しい会員達を引き連れて入ってきた。
と、その時、女性スタッフは偶然にもオイラとばっちり視線が合ってしまった。
「か・からすがこっちを見てるぅ~!」
この女性スタッフは、オイラ達カラスに何か特別な恨みでもあるのか、すっとんきょうな声をあげてオイラを指差した。その声につられ道師さまとラメの紫服男もオイラの方を振り返った。
3人に注目されたオイラは、本能的に身の危険を感じ、電柱を思いっきり蹴って大空に飛び立った。
アブナい、アブナい、ニンゲンに注目なんかされたら、たまったものではない。
仲間の中には、逆切れしてニンゲンを襲うやつもいるが、そういうやつは例外なく早死にしている。




