金色の光
久しぶりに満腹になったオイラは、昼間だというのに珍しくねぐらのある鉄塔に舞い戻り、いつもの留まり具合のよい鉄骨にとまって食休みを取っていた。
満腹のせいか、なんとなくボヤーっとした目で周囲を眺めていると、少し離れた場所に建っている10数階建てのマンションの一室に金色にキラリと光るものが見えた。
ご存知かと思うが、オイラたちカラス族は光り物が好きだ。なぜかは解らないが、光っているもの、目立つものを見ると無性に近づきたくなる。若いニンゲンの女もそうらしいが「うっとり」してしまうのだ。
その時も、その輝きに惹かれふわふわと飛び上がりそのマンションに近づいていった。
その輝きは、マンションの6階あたりの一室から放たれていた。
オイラは、その部屋に近づくと、人気がないのを十分確認しベランダの手すりに忍者のように音もなく取り付いた。
いくら光り物の輝きに惑わされているとはいえ、むやみに危険を犯すつもりはないが、どうしても正体を確かめたくなるような妖しい光りだ。
手すりにつかまって見てみると、ベランダにはエアコンの室外機の他に、50センチ位の大きさの花瓶のようなものが数個転がっている。
部屋の方は、6階という高階のため外の視線を気にしていないのか、ガラス窓が開いていて、カーテンなどの視界を遮るものもない。
ベランダにいるオイラからは部屋の中が丸見えである。
せっかくなので中を覗いてみると、金色に輝く門のような形をした飾り棚が一方の壁面いっぱいに取り付けられており、その門のなかには丸いプレートのようなものが貼ってある
。
その丸いプレートは、白と黒の2匹のおたまじゃくしがくっついているような模様で、縁は深みのある金色。天井に取り付けてある照明器具から、そのプレートに向かってスポットライトが当たっており、カラスをも惑わせる輝きは、そのプレートが放っていた。
と、その時、部屋の中に男の声が響いた。
「そうです。こーの世は陰―んと陽―ぉうで成り立っていまーす。」
オイラはギョッとして、思わず手すりから落ちそうになった。妖しい輝きに見とれていたオイラは、すっかり油断してしまい、部屋の中にいるニンゲンの確認を忘れていたのだ。




