プロローグ
オイラはカラス。
都会に住む若いハシブトカラスだ。
名前は「かぁ吉」。
少々ダサいネーミングだが、オイラのねぐらの近くに住んでいる小学生のお譲ちゃんがつけてくれた名前なので、まあ気に入っている。
近頃オイラの仲間たちは、だんだん数が増えてきて、ごみ置き場をあさったり残飯を狙ったりする競争が激しくなってきた。
中にはニンゲンに直接攻撃するバカな輩も出てきた。
元々、集団で生活するのがオイラ達の習性だが、この都会では、逆に集団行動するとニンゲン達に目の敵にされるということにオイラは最近気がついた。
まあ、オイラとしては、ニンゲンのような危険な大型動物に無理に逆らって怪我でもしたら馬鹿馬鹿しいので、仲間が暮らしている神社の森から数キロ離れた住宅街にある鉄塔の片隅を住処にしてひとり暮らしをしている。
この住宅街は、戸建住宅が多いものの、特別な建築規制もないのか、アパートやマンションも立っている。今回はその中のとあるマンションで見かけたニンゲン達の様子をお話しよう。
それは、ニンゲンがいうところの6月の中旬あたり。
梅雨の中休みなのか天気の良い日だった。
その日、オイラは朝から運がよかった。
ゴミ捨て場のネットがずれていて、剥き出しになった残飯を発見。
ボリュームたっぷりのトンカツにありつくことができたからだ。
燃えるごみの日の月曜日は、ご馳走に出会える確率が高い。
えっ?カラスに暦が解るのかって?バカにしないでもらいたい。
生まれたときから都会で育ち、ニンゲンの生活からでるゴミがオイラたちの主な食料なのだ。
その食料が出てくる日を覚えておくのは当たり前である。
それどころか、ニンゲンの話す言葉だってある程度理解している。
オイラのくちばしがニンゲンと同じような唇だったら、流暢な日本語を話して聞かせてやりたいところだ。




