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第七羽:飛べない鳥と飛べる鳥

 バサリと音のした方向を振り向く。右からかと思ったが、右を向いても何も見当たらない。


 ……っいや違う上だ!?咄嗟にその場から飛び退く。別に右側なのは間違っていなかった、ただそれが右上を飛んでいただけの話。小さいペンギンの視界では意図的に上を向かない限りは、空など見えやしないのだ。


 さっきまで、自分がいたところを何かがか通る。なにかが、くちばしを開けながら急降下し迫っていた。もし咄嗟に飛び退いていなければ、今頃アレのくちばしに挟まれ空を飛んでいただろう。


 俺を仕留めることのできなかったそれは、バサリバサリと音を立てながら黒褐色の翼を振り余裕の表情で降りてきた。そこには、俺の2倍以上はあるであろう大きな体躯をした鳥がいた。さしずめ怪鳥とでもいったところだろうか。


 そいつはくちばしを開き襲いかかってくる。しかし、俺のことを単なる餌としか見ていないその攻撃はあまりにも遅すぎる。俺は、やられたままではいけないと思い、そのくちばしを避けると同時に俺はぶっつけ本番でスキルを発動する。

 

 [ビートフリッパー]


 俺が発動したスキルによって、いつもの数倍の速度でフリッパーが相手のくちばしに迫る。そのままくちばしに俺が振るった腕がヒットする。ぶっつけ本番かつ初めてのスキルは発動した。異世界のテンプレ的にスキル名を唱えればいけると思ったら、本当に可能だった。あとゲームで言うところのMP的なものが減ったのも感覚的にわかった。少し倦怠感を感じるので使いすぎないようにしたい。


 残念なことにくちばしは硬かった。スキルによって通常で殴るよりも大きなダメージが入るはずが、くちばしにダメージが入った様子はなかった。だが、くちばしを叩かれた衝撃から顔ごと体が地面に倒れ込む。


 やつはこちらからの反撃を予想していなかったのか、呆けた顔をしている。そんなアホ面に更に追撃を叩き込むべくヤツの顔面に近寄る。しかし、それよりも先にやつは体を起こす。これ以上近づかずいて攻撃されるわけにもいかないので一歩手前で立ち止まる。


 一歩手前それでは遅かった、起き上がりざまにくちばしを閉じたま叩きつける。油断していた俺はそれをモロに食らってしまう。


 あーくっそいてぇ。そもそも一般的な男子高校生はこんな痛い経験ねぇんだよ。しかし、ここで痛みに悶えてる暇はない。そうすればすぐに食べられてしまうだろう。


 痛む体を無理やり立たせる。内心痛みで悲鳴を上げまくっているが、死ぬくらいならと割り切り根性で立った。立ち上がったところにやつは迫りくる。丸呑みにする気だ。咄嗟に横に飛ぶがびぎゅうとペンギンとは思えないような声が喉から漏れる。


 間一髪で避けたところで、苦痛に耐えつつも今度はくちばしではなく目に向かって発動する。


[ビートフリッパー]


 2回目のスキルは完璧なタイミングで発動した。やつの目元でそのスキルを受けたからか、ギャオギャオと目を押さえて悲痛な声を上げる。よく見ればやつの抑えた手から、赤く滴るものが見える。ダメージは確実に入った。


 追撃を入れたいところだが、相手は痛みによって我を忘れているのかむちゃくちゃに暴れまわる。少し離れていれば当たらない。相手も次第に落ち着いてきたのか、暴れるのをやめこちらに狙いを定める。


 しかし、こちらができるとことといえば相手の攻撃を避けて繰り出すカウンターのみ。絶体絶命の状況だが、カウンターしかできない相手の様子を俺は伺う。相手もさすがに逃げるかと思ったが、たかがペンギンのヒナにここまでやられたのがひどく腹に立ったのか逃げにらしい。


 相手はバサリと羽ばたく、最初の一撃と同じように上空から狙うつもりだ。やつは急降下の姿勢に入った。翼を少したたみ、くちばしを開けとてつもない速度で迫ってくる。


 こちらも無料(ただ)でやられるわけにはいかないので、避けて左の腕で目を殴ろうとする。しかし、やつは体を飛行中に少し斜めに傾けた。カウンターを狙っていた俺は出して左腕をそのまま引き千切られる。


 このまま泣きながら逃げ出したいところだが、やつは逃がしてくれない。再度羽ばたき急降下の姿勢に入る。こうなれば背に腹は代えられない、こちらもサイドカウンターの姿勢を取る。


 今回も同じように体を少し傾ける。だが、俺はそれを読んでいた。俺はほとんど飛べない足で()()、体を傾けるために高度を通常より落としていたやつのくちばしの上に着地する。傾けるために高度を変えたのが仇となった。このまま高度を上げに行ったやつだが、俺はそれを許さない。


[ビートフリッパー]


 残された右上だけで放たれたそれは、やつの脳天に直撃。高度を上げることなく地に落ちる。


 地に落ちたやつの瞳に光は宿っていなかった。俺の勝ちだ。


 だが左腕を引き千切られ出血は止まらない、これでは相打ちになってしまう。しかし、見るも無惨な俺の体を謎の白い光が包んだ。


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