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賀茂光栄 時空を駆ける  作者: 屯田 水鏡
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七、光栄、蜘蛛丸を伴って、時空を駆ける

七、光栄、蜘蛛丸を伴って、時空を駆ける


いつか、光栄の幽体は彼の思う儘に屋根を突き抜けて空を飛び地に潜っては地中の堅い岩をも難なく通り抜けるようになった。

意のままに幽体を操ることが出来るようになっていたのである。

その間の光栄の身体はというと横たわって眠っているのである。

「そうか、幽体となれば、重力を感じずに移動できるのか」

幽体、つまり魂となって時間と空間を自在に移動する技を遂に会得した光栄は、ある夜、とうとう、時空の旅へ出発しようと決心したのであった。

先ず、横になって眠った。

そして、幽体となって身体から離れてふわりと浮かび、天井の隅に暫く留まったのちに桧皮葺ひわだぶきの屋根に出て、上から庭を見回した。

縁側のすぐ下で蜘蛛丸が眠っているのが目に入った。

「異空間への旅のつれづれにこの下人を供に連れて行こう、何かの役に立つかも知れぬ」

そう思った光栄は、ふわりと庭に下りて、庭の木に寄りかかって眠っている蜘蛛丸の背後に回ると、首の後ろから蜘蛛丸の身体にすっと手を差し込んで幽体を引き抜くと、そのまま天空高く飛び上がった。

「これは若、どうしたので御座るか」

眠そうな声を上げて光栄を見ていた蜘蛛丸は足元を見て驚いた。

「わわっ、これはどうしたことで御座りましょうや、空に浮かんでいるではありませぬか、ひゃあ、恐ろしや」

「下を見てみよ、そなたはあそこにおる」

「ぎゃあ、あそこで眠っておるのがそれがしで御座るか、それでは今ここにいる、この私めは何者で御座るか。もしや、若、また陰陽の術を使ったので御座るな、もう、勘弁して下され」

「そなたは、幽体、つまり魂と言う存在なのだ、おれは、これから未知の世界に行ってみることにした。そなた、俺の供をしてついてまいれ」

「とんでもございませぬ、ご辞退申し上げます。有体ありていに言えば、嫌で御座ります。それに足手まといでもございましょう、どうぞ、若お一人で行ってらっしゃいませ」

蜘蛛丸は、空中でじたばたと騒ぎ、納得できないというそぶりを見せた。

「蜘蛛丸、帰ったならば、少しばかりであるが、褒美を取らし、且つ、酒と馳走は思いのままとするがどうだ」

「それならば、致し方御座いませぬな、参りましょう」

二人は空高く舞い上がった。

そして、僅かに聞こえる、悲しげなか細い声に向かっていった。


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