薪すら奪う実家。「土下座するまで凍えていろ」ですって?ならば利息として領地の小霊脈を枯らします。〜私が裏金で買ったストーブで暖まる頃、お父様は莫大な赤字に絶叫しているはずですわ〜
冬の入り口の冷たい風が、窓のわずかな隙間から吹き込み、離れの書斎はいっそう寒々と感じられた。
扉の外の回廊から、乱雑な足音が近づいてくる。
先ほど銅の火鉢を運び出していった下男たちが戻ってきたのだ。先頭に立つのは、伯爵夫人付きの侍女長である。
彼女の手には、当主の赤い印章が押された羊皮紙の公文書が握られており、その顔には隠そうともしない傲慢さが浮かんでいた。
「ルシアナお嬢様、伯爵様からの当主令により、離れの物資配給を再確認させていただきます」
侍女長は部屋に踏み入ると、室内をねめ回すように見渡した。
ルシアナは机の傍らに立ち、先ほど受け取った当主令を引き出しの奥にしまった。
そして、純銀の髪飾りを外し、机の端にそっと置いた。
「確認なさい」
体格のいい数人の下男が進み出て、予備の厚手毛布を抱え上げた。
続いて、隙間風を防ぐための分厚いタペストリーを壁から引き剥がす。
部屋の隅に積まれていた質の悪い薪すらも、麻袋に詰め込んで持ち去っていった。
侍女長の視線が机の上に留まり、銀の髪飾りとルシアナを交互に見た。
しかし、彼女はすぐに目を逸らし、伯爵家の公用帳簿から支給された品々だけを下男たちに運び出させた。
どうやら当主令に従い、伯爵家の所有物を取り立てるだけで、個人の私財まで公然と奪う度胸はないらしい。
それを確認し、ルシアナは銀の髪飾りを再び髪に挿した。
部屋の中はさらに殺風景になった。
タペストリーと毛布を失い、冷え切った四方の壁から寒気が滲み出してくる。
弟のテオは部屋の隅の古いベッドに座り、寒さに肩を微かに震わせていた。
唯一残された薄い掛け布団にくるまり、うつむいて、必死に咳を飲み込もうとしている。
彼はルシアナを見上げ、少しでも安心させようとするような目を向けた。自分は耐えられると伝え、姉に余計な苦労をかけまいとしているのだ。
「あら、離れはずいぶんと冷えますわね」侍女長はわざとらしく二の腕をさすり、ルシアナを見た。「お嬢様。伯爵様は、あなたがリリアンお嬢様に頭を下げて謝罪しさえすれば、ここの薪と炭はすぐにでも元通りにすると仰っております」
「この気候で暖を取るものがなければ、ご病気の坊ちゃまは三日も持たないでしょう。どうぞよくお考えくださいませ」
「運び終わったのなら、下がってちょうだい」ルシアナは侍女長を見て、扉を指し示した。
侍女長は鼻で笑った。
「お望みどおりに。明日の今頃も、その強がりが続くことを祈っておりますわ」
重い木の扉が再び閉ざされ、部屋から最後の人の熱気まで持ち去られた。
ルシアナはベッドの傍へ歩み寄り、テオの薄い布団を掛け直した。
「もう少しだけ、待っていてね」彼女は弟に言った。
テオは頷き、布団に顔をうずめた。
ルシアナは振り返り、書斎の一番奥の隅へと向かった。
薄暗い光がドレスの裾に落ちる。
彼女は目を閉じた。
暗闇の中、金色の魔力の糸が光を放ち、複雑な網の目となって交錯する。
一番太い糸はすでに彼女自身の手で断ち切られていた。本来ユリウスへと流れていた糸である。
その傍らには、わずかに細い数本の金色の糸が、静かに外へと伸びていた。
それはガーラン伯爵領の霊脈へと流れる供給の糸だ。
伯爵領が毎年豊かな魔法作物を産出し、ガーラン伯爵が貴族の社交界で富をひけらかすことができるのは、すべて彼女が密かに送り続けてきた清浄な魔力のおかげだった。
ガーラン伯爵はその事実に全く気づいておらず、領地そのものが持つ恩恵だと信じ切っている。
「なら、まずは少しだけ利息をいただきましょう」ルシアナは静かにつぶやいた。
彼女は指を伸ばし、脳内の魔力帳簿を弾いた。
『伯爵領東区の小霊脈』を示す金色の糸が引き出される。
あっさりと、無造作に断ち切る。
金色の光が散り、伯爵邸の富の源へと繋がる供給が完全に途絶えた。
ルシアナは目を開けた。
次は、目の前の生存の危機を解決しなければならない。
彼女は本棚に向かい、一番下の隠し棚を開け、中から小さなベルベットの袋を取り出した。
袋の口を開けると、中には輝く数枚の金貨が入っている。
亡き母が密かに遺した金であり、テオを連れて逃げる時のために用意していたものだ。
今これを使えば、逃亡資金が減ってしまう。
ルシアナは手の中の金貨を見つめ、袋の口をしっかりとしばり直してポケットに入れた。
彼女は離れの裏手にある古い窓を押し開けた。
飛び降りて、雑草の生い茂る小道に着地する。小道に沿って歩き、伯爵邸の厨房裏にある勝手口のそばにたどり着いた。
この時間、買い出しを担当する下男のトムが、こっそりくすねた残り物や食材をそこで確認していることが多い。
トムは小銭にがめつい男で、金さえ払えば何でもやる。
「トム」ルシアナは暗がりに立ったまま、彼を呼び止めた。
振り返り、そこにルシアナがいるのを見たトムは、あからさまに面倒そうな顔をした。
「おや、これは離れのお嬢様じゃありませんか。あいにく、おすそ分けできる余り飯なんてありませんぜ……」
一枚の金貨が放り投げられ、弧を描いてトムの胸元にすっぽりと収まった。
慌てて受け取ったトムの目が途端に輝く。金貨を軽く噛んで確かめると、顔いっぱいにへつらうような笑みを浮かべた。
「お嬢様、何かご用で?」
「街の商会へ行って、新品の真鍮のストーブと、最上級の無煙炭を二袋買ってきなさい」ルシアナは彼を見た。「残りの金はあげるわ。三十分以内に、離れの裏窓へ届けること」
「しかし、伯爵様の命令が……」トムは少し言い淀んだ。
ルシアナは二枚目の金貨を投げた。
「行くの? 行かないの?」
「行きます! すぐに行ってくらあ!」トムは二枚の金貨をブーツにねじ込み、手押し車を押して外へ駆け出した。
本物の金貨を前にすれば、伯爵の禁令など無意味だった。
三十分と経たないうちに、離れの裏窓が叩かれた。
ルシアナが窓を開けると、息を切らしたトムが真新しい真鍮のストーブと、ずっしりと重い無煙炭の袋を二つ差し出した。
「お嬢様、ご注文の品で。この炭は煙が全く出ねえから、坊ちゃまの療養には一番ですぜ」トムは揉み手をして笑った。
ルシアナは品物を受け取り、窓を閉めた。
真鍮のストーブをベッドの傍に置き、黒々とした無煙炭をたっぷりとくべて火をつけた。
炎が炭を舐め、すぐに赤々とした炎が上がった。
真鍮の表面から熱気が広がり、少しずつ、部屋に満ちていた底冷えを追い散らしていく。
冷たかった四方の壁が暖色の光に照らされ、空気が久方ぶりの熱を帯びた。
テオは布団から顔を出し、火の光に染まったその頬に少し赤みが差した。彼はそっと手を伸ばし、ストーブに近づけた。
ルシアナは机に向かい、日々の冷遇を記録している実体の帳簿を開いた。
羽根ペンを取り、空白のページに今日の日付と、ストーブを買うのに使った金額を書き留める。
揺らめく火の光の中、彼女の視線は羊皮紙に落ちていた。
ガーラン伯爵の後見権に対抗するには、離れに隠れ潜んでいるだけでは足りない。
血の繋がりという抑圧を打ち破る外部の力が必要だ。実権を握り、明確な対価で取引ができる同盟相手が。
貴族社会の慣習に従い、婚約によって後見権を移動させるというのなら、絶対に揺るがない強固な契約書を見つけるべきだろう。
ルシアナは帳簿を閉じ、燃えるストーブを見つめた。
同じ頃。
ガーラン伯爵邸、本邸の大書斎。
分厚いベルベットの絨毯が敷き詰められ、暖炉の薪が勢いよく燃えている。部屋全体が春のように暖かかった。
ガーラン伯爵はワイングラスを手に、壁に掲げられた家紋を満足げに眺めていた。
バンッ!
書斎の扉が乱暴に開け放たれ、領地の帳簿係が転がり込むように入ってきた。分厚い帳簿を高く掲げ、額には大量の汗をかいている。
「伯爵様! 大変でございます!」帳簿係は声を震わせ、絨毯の上に這いつくばった。
ガーラン伯爵は眉をひそめ、グラスを置いた。
「無礼な。何事だ」
「東区の霊脈……東区の小霊脈が、突如として枯渇いたしました!」帳簿係は帳簿を開き、ずらりと並んだ赤い数字を指差した。「収穫間近だった魔法作物が広範囲で枯死し始めており、今年の実りは全滅です!」
「帳簿に莫大な損失が生じております。おまけに商会からは、前受金の返還を催促されておりまして!」
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