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異世界で「生まれ変わるなら、綺麗な人に……なりたい」そう願ったのに、美人だけが嫌われる。  作者: HARUHANA


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22/31

22.贈り物

 翌朝、アイリさんがいつも通り執務室にやってきた。


「アイリさん、おはようございます」

「おはようございます。ケイトさん、お一人ですか? リク様は……」

「リク様は、急遽ウェルネシカに戻りました。今日中には帰ると思いますが、私は別件で用事を仰せつかりましたので留守番です」

「そう、でしたか」


 自分のデスクに辿り着いたアイリさんへ、頼まれた書面をヒラリと置いた。


「これは、正社員登用に関する契約書です。一読し、ご納得頂けるようでしたら署名をお願いします」

「承知しました」

「それと、こちらの書類ですが……」


 ここ数日、リク様がやり取りしていた隣国ユータン公国からの資料だ。

 分厚い資料をデスクの空いたスペースに置いた。


「ユータン公国から拝借した資料の一部です」

「ユータン公国……」

「リク様から預かりましたので、本日からこちらの確認をお願いします」

「分かりました。ありがとうございます」


 早速手を伸ばした一番上の資料を捲ると、そこにはリク様の字でメモが挟まれていた。

 何と書かれているのか、自分には分からない。

 だけど……メモの内容に、クスリと笑うアイリさんを見て、このお二人の間に生まれた関係に心底安堵する。


「アイリさん」

「……はい?」

「ありがとうございます」

「え? 私、何かしましたか?」

「いえ。お気になさらず。では、また後ほど参ります」


 この方なら、きっとリク様の隣を歩んでくれる。

 さて……私は、そんな二人の未来が明るくなるよう、今日も動くとしよう。



 ***



 リク様がいないと分かっているのに……時折、視線が隣のデスクに向いてしまう。癖、というわけでも……ないと思うけど。


 メモに書かれた、“なるべく早く帰ります。無理、しないで“ の文字を隣に置いて、資料に目を向き直した。

 資料の気になった箇所に紙を挟み、箇条書きで分類毎に書き写していく。


 お昼が過ぎた頃、大きくなった違和感を整理するため、図書室へ向かった。


「確か……この辺だったような……あ、あった」


 手に取ったのは、法律書。

 各国の言葉で書かれた法律書がずらりと並んだ中から、イースタンの法律書を取り出した。ただ……法律が書き連なる分厚い本の中から該当項目を探すのは、容易ではない。見逃さないよう、慎重に読み進めた。



「――アイリさん!」

「……っ、」

 

 あまりに没入してたせいで、突然呼ばれた自分の名前に驚いた。


「探しました……こちらでしたか」

「申し訳ありません。あら、いま何時で――」

「もう、終業時間を過ぎていますよ」

「えっ!?」


 窓の向こうが薄暗くなってきてる事にも気付かず、読み込んでしまっていた。


「いちお確認ですが……昼食、食べられましたか?」

「あっ……」


……食べてない。


「リク様に殺されるな」

「あ、あの、リク様には内緒に――」


「何が内緒だって?」


 少し遅れて図書室に入ってきたリク様が、不気味な笑顔で登場した……。


「お、お帰りなさいませ」

「うん。只今、帰りました。それで、何が内緒なんですか?」

「いえ……あ、約束の時間に執務室に戻らなかったから――」

「そうですか。なるほど、昼食も食べずに仕事に耽っていたと」


 ……聞かれてた。


「リク様も、たまにありますよね……昼食を食べず仕事すること……」

「あります。が、一緒にされては困ります。あぁ、良い事を思いつきました。今度、食事を抜いたら正社員登用は白紙、それからケイトの手当てを一部カットしましょう」

「えっ……? リク様、ケイト様は関係――」

「ありますよね。だって今日、僕はアイリさんのことをケイトに頼んだのですから。監督不行届です、よね。連帯責任です」

「そんな……」


不敵な笑みを浮かべたリク様が、本棚に寄り掛かった。


「良いですね?」

「……はい」

「宜しい。では、行きますよ」

「どちらに、ですか?」

「一緒に来て下さい」


 机の資料と法律書をひとまとめにして、リク様が抱えた。持ちます、と伝えても聞いてはくれない。

 言われるがまま後ろを歩き、着いたのはリク様のお部屋。


「開けてみて下さい」


 そこに置かれた可愛らしい、リボンに巻かれた箱。

 恐る恐るリボンを解き、箱を開けると――


「……可愛い」

「貴女にお土産です」


 箱から出てきたのは、可愛い首飾りの付いたクマのぬいぐるみ。

 しかも、ぬいぐるみが更に小さな箱を持っていた。この、あまりに小さい箱まで「どうぞ」と言うので、そっと落とさないように開けた。


「これ……」

「ぬいぐるみに付いたペンダントとお揃いです。ね、同じでしょ?」

「い、頂けません」

「では……仕方ありません。返品も出来ませんし、ケイトが持つにはあまりに可愛いから……処分するしかありません」

「処……分……」

「貴女のために買ってきたものです。他の人にあげるつもりはありません」

「……本当に、頂いて良いのですか?」

「勿論です。ぜひ、可愛がってあげて下さい」


 抱え上げたぬいぐるみと目が合う。

 クリっとした綺麗な目を見て、思わず抱き締めてしまった。小さい頃からずっと憧れた、ぬいぐるみ――


「リク様、ありがとうございます……。ずっと、ずっと大事にします。……嬉しい」


 笑いながら涙が流れるなんて、人生で初めてだった。

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