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異世界で「生まれ変わるなら、綺麗な人に……なりたい」そう願ったのに、美人だけが嫌われる。  作者: HARUHANA


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18/31

18.可愛い対立

 薄く開いた瞼に、優しい光が差し込む。

 開ける視界に映る、見覚えのない天井……ん?


 横になったままで、何度か瞬きする内に、鮮明になった視界が何処なのか……察してしまった。


 ハッ、と起き上がった瞬間。


「まだ起きないで下さい」


 真横にいるリク様が、心配そうな表情で私の肩に触れた。頭を整理したくても、飲み込めない状況に……思わず。


「申し訳ありませんっ……」


 そう謝りながら、ベッドから降りようと布団を捲ったのに、もう一度肩に触れて、リク様が名前を呼んだ。


「アイリさん」

「はい……」

「良くなるまで、ここにいて良いんですよ」

「よ、良くありませんっ。だって、ここ……リク様のお部屋ですよね? ベッドまでお借りしてしまって――」

「ふふっ……」


 不意にリク様が、口元を押さえて笑った。


「すいません、予想が的中したら笑ってしまいました」

「予想……?」

「はい。貴女がここで目覚めたら、最初に何て言うか想像したんです。見事に当たりました」


 ……は、恥ずかしい。

 でもだからと言って、ここにいて良い理由にはならない。


「仕事も暫くセーブしましょう」

「……私が、倒れたからですか?」

「そうです」

「大丈夫です、今度はきちんと自己管理を――」

「アイリさん」


 柔らかい表情だけど、真っ直ぐに私を見つめるリク様から視線を逸らした。


「……はい」

「僕は、貴女の上司です。心配もしますし、状況判断もします」

「ですが、もうすぐ試用期間も終わるんです。きちんと評価して頂きたいんです」

「評価なら既に十分――」

「十分ではありません」

「十分です」

「ありません」

「……」


 即答で返してしまってから、ハッとした。

 ……なんか、子どもみたい。けれどリク様は、困ったように笑ったあと。


「では、交渉しましょうか」


 そう言って、椅子に座り直した。


「まず、今日から三日間はケイトか僕が渡す資料の整理をお願いします」

「……はい」

「それから、重い資料を運んだり、他の人からの頼まれ事も禁止です」

「……過保護です」

「それから、きちんと夜寝ているか確認出来ないので、三日間はここで寝てください」

「リ、リク様。最後のは、容認出来ません」

「では、交渉決裂です」


 微笑みながら言うので、全く説得力はない。

 だけど、譲るつもりも……ないらしい。


「……では、一日だけ」

「二日です」

「一日半」

「半日単位なんですか?」

「そ、そう言うわけでは――」


「まるで、夫婦の会話のようですね。微笑ましい」


 いつの間にか、側にいたケイト様がトレーに薬を乗せて待っていた。


「「違います」」


 不覚にも、声を合わせて返答してしまい……慌てて下を向いた。


「と、とにかく。二日は、ここで休んでください。資料の持ち込みも禁止です」

「……分かりました」


 ケイト様から薬を受け取り、二人の目の前で飲み干した。これで、解放される――


「ベッドから降りて、どちらへ?」

「……え? 仕事に……」

「貴女という人は――」


 リク様が呆れた顔で私に何か言いかけたところで、「それならば」とケイト様が間に割って入った。


「私に良い案があります。仕事をしても問題ないのでしたら、支度をして執務室へお越しください」

「ありがとうございます。支度を済ませたら、向かいます」


 ケイト様に背中を押してもらい、漸くリク様の部屋を出れたのだった。



 ***



「ケイト、彼女はまだ――」

「リク様。アイリさんの性格上、一日中休んでる方が滅入ると思います。それなら仕事をしてもらえば良いんですよ」

「しかし……」

「心配なんですよね? 側で無理してないか確認したいんですよね?」

「当たり前だ」

「それなら――」


 耳打ちされた提案に、目を開いたものの、「それなら準備を頼む」とケイトを送り出した。


 それから自分も支度を済ませ、執務室へ向かう。

 そこへ丁度、いつもの仕事着を着た彼女がやってきた。


「本当に、体調は大丈夫なんですね?」

「はい、心配には及びません。そう言えば、ケイト様が仰った『良い案』というのは、何だったのですか?」

「……まぁ、入れば分かると思います」

「……?」


 二人で執務室に入ると、周囲にいた職員の方々が一斉にこちらを向いた。


「お、おはようございます。休んでしまい申し訳ありませんでした」


 あちこちから「大丈夫?」とか「無理しないでね」と、優しい言葉を沢山貰った。

 それだけで胸がいっぱいになる。

 ……でも、掛けられる言葉の中に「大使様もよっぽど心配なのね」なんて声を拾ってしまった。どういう……意味だろう。


「アイリさんの仕事場は、今日から暫くここです」


 リク様が私の机を指差す。

 それは、今までの位置とは明らかに違う。


「……リク様? 私の机……」

「はい。ケイトが動かしました。今日から、僕の隣で仕事をして下さい。そしたら、過剰な仕事を監視出来ますし、振りたい仕事もすぐに渡せます」

「いや、あの……」

「何か、問題ありますか?」


 ――ケイトに、感謝だ。

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