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異世界で「生まれ変わるなら、綺麗な人に……なりたい」そう願ったのに、美人だけが嫌われる。  作者: HARUHANA


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13/31

13.ケイトの思考

 今日得た情報を整理しながら、主人であるリク様の帰りを待つ。本来であれば、ガーデンパーティーに同行するはずだったが、急遽予定を変更した。


「……そろそろ着く頃か」


 書き留めた書面を、リク様の机に置き、玄関まで移動する。別に、馬車の音が聞こえたわけでも、予知能力があるわけでもない。

 ただ……そんな気がするだけ。


 予想通り、少し玄関で待っていれば、大きな門を潜り抜けたウェルネシカの馬車が帰って来た。


「お帰りなさいませ」

「ただいま。ケイト、今日の夕食は、彼女の好きな物を沢山用意してくれ」

「かしこまりました。料理長も腕がなりますね」

「あぁ。今、彼女とゲームをしてるんだ。罰ゲームに持って行きたくてね。それと――」


 幾つか料理長への指示を聞いて、メモを取った。


「かしこまりました」


 察するに、アイリさんに罰ゲームをさせたいのか。

 ……どんな罰ゲームなのか、とても気になる。まぁ、リク様の考えることだ。どうせ、アイリさんにとってご褒美にしかならないだろう。


「夕食が整いましたら、お呼びします」


 二人それぞれの部屋に戻って行った。

 アイリさんの照れた様な苦笑い、あれはあれで人気が出そうだ。リク様のあんな笑った顔、はかな令嬢が見れば卒倒だな。


 とにかく、料理長は、張り切って腕を捲った。

 鼻歌を交えながら次々に下準備が進んでいく。


 ……と、その前にリク様へ今日の報告をしに行こう。



「失礼します。リク様、今日の報告を――リク様?」

「あ、あぁ……すまない」


 自分が置いた報告書を読んで、顔を強張らせていた。それもそうだ……だって――


「ケイト、これが事実なら……」

「はい。イースタンは、国ごと呪われている可能性があります。呪いよりも暗示、のようなものでしょうか?」

「……分からない。過去に実在した絶世の美女ヒリアによって、国が滅び……一度イースタンは消えた」

「そして、再び国を再建するために、国を覆う力によって被害者が生まれた……」


 歴史上、悪女と呼ばれる存在は度々登場する。

 頂点を弄び、他者を蹴落として地位を得る。


 しかし……それを、何かしらの力でねじ伏せるとは。


「お伝えするんですか?」

「いや、もう少し様子を見たい。せっかく、笑って打ち解ける場が出来て来たんだ……今は、あの笑顔を崩したくない」

「解決の糸口を探します」

「ケイトの負担が大きすぎるだろ……」

「内偵もいますし、何より――」


 幸せになって頂きたい。

 多くの者が救われている様に、リク様自身にも。


「ん?」

「いえ、内偵もいます。それに、未来は明るいと信じています」


 フッと、リク様が笑った。

 そう……いつまでもそうやって笑っていて欲しい。


「そろそろ夕食も出来る頃でしょう。ゲームを、されているんでしたっけ」

「あぁ、彼女を甘やかすゲームだ」

「甘やかす?」


 廊下を歩きながら、楽しそうに話をする。


「本人は、ここにきてから甘えっぱなしと言うんだ。甘えてるのは、どう考えても僕らなのに」

「確かに。それは言えてますね」

「だろ? もう少し解してあげようと思ってね」

「……随分と楽しそうですね」

「楽しいのは間違いない。僕自身も、ここに来てからずっと肩に力が入ってた気がするよ」


 廊下の角を曲がると、食堂の扉の前にアイリさんが立っている。

 入ろうか悩んでいるのか?


「どうされたのですか?」

「あっ……すいません。いつもなら中から声が聞こえていたので……先に入って良いのか悩んでしまいました」

「お待たせして申し訳ありませんでした。中へ、どうぞ」


 扉を開け、ぺこりと頭を下げたアイリさんが、いつも通りの席に座ろうとしている。


「アイリさん、今日は少し楽しい食事にしませんか?」


 リク様が、一枚のお皿を手渡した。

 いつもならダイニングテーブルに置かれるはずの食事が、サイドテーブルにズラリと並べられ、大きなスプーンが添えられた。


「今日は、バイキングにしてみました」

「こんなに沢山のお料理……」

「料理長も楽しかったんでしょう。僕らの後に、使用人たちも同じようにバイキングを楽しんで貰いますから、残っても気にしないで下さいね」

「ありがとうございます。どれも、とっても美味しそう」


 二人で会話しながら皿に盛り付けていく。

 それにしても……この微笑ましい状況で、どうやって罰ゲームに持って行くのか?


 何度かお皿が空になり、新しいお皿へ盛り付ける状況が続いた。リク様のことだ、きっと狙いを定めてると思ったが……思い違いだったか?


「アイリさん、デザートは如何ですか?」

「デザートもこんなに……どれもとっても可愛いですね。この光るのは、まさか――」

「金箔です。入手が難しい品ですが、今日は特別です」

「き、金箔!? あの……私は一つで……」

「もっと取って下さい。遠慮しなくて良いんですよ」

「で、でも……私ばかり頂くのも申し訳なくて……」

「アイリさん」


 ぴたり、とリク様が動きを止めた。


「……あ」


 しまった、と言いたそうな顔に、私も思わず口元を押さえた。


「今、自分を責めましたね?」

「えっ!? い、いえ、そんなつもりでは……!」

「残念。罰ゲーム決定です」

「そ、そんな……!」


 これは……リク様の完璧な作戦勝ちだった。

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