↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で「生まれ変わるなら、綺麗な人に……なりたい」そう願ったのに、美人だけが嫌われる。  作者: HARUHANA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/31

11.品とは何か

 ガーデンパーティーは、想像以上に情報合戦の様で、リク様は引っ切り無しに挨拶を受けている。

 

 そんな中で、ノースポーター王国から来たと言う外交官は、熱烈なまでに質問の嵐だった。しかも内容が……私のことばかり。


『領主会議の時に用意した資料は、一人で作ったのか』

『なぜ、リク大使を選んだのか』

『他にやりたい仕事は無いのか』


 どの質問にも誠実に対応したつもりだけど……。

 リク様は別の方と話しをされていたし……相手が満足行く答えになっていたか、確かめる術がない。

 ただ、どんなに『ノースポーターで仕事をしませんか?』と問われても、全く心が動かなかった。


『私には、やるべき仕事があります』


 少し誇らしげに言ってみせた。

 少し前の自分では、考えられないくらい堂々と。


『諦めませんよ。また口説きにきます』


 そう言って、去って行った。社交辞令も欠かさないとは、さすがだ。


「ふぅ……」

「疲れましたか?」

「いえ、大丈夫です」

「少し食べませんか? 実は、僕の好物がありまして」


 再び手を腕に乗せられ、料理が並ぶテーブルへやって来た。ズラッと並べられた色とりどりの食事に、思わず声が出てしまう。


「……凄いです」

「これが、美味しいんですよ」


 私の分まで取り分けて、空いてるテーブルへと運んできた。わざわさ椅子まで引いて、紳士的な振る舞い。


「これは、ビスケットの上にチーズと生ハムが乗っているんです。イースタンでは、どちらも手に入りにくいので食卓に出るのは限られるんです」


 一口食べたリク様の口元から、サクッと楽しい音が聞こえた。頬張りながら笑う、お茶目なリク様に思わず笑ってしまう。


「……私も――サクッ」


 ビスケットの割れる音と、口に広がるチーズと生ハムの味わいに、目を見開いてしまった。

 リク様がお勧めするのも納得だ。


「美味しいです!」

「ですよね。見た目も可愛いし、ワインにも合うから好きなんです」

「色々なトッピングが合いそうですね」

「そうそう、ローストビーフにバジル――」


 リク様が、言いかけた言葉を飲み込んで、私を覆う様に何かから庇った。


 ――バシャッ

 

「……っ、」

「申し訳ございません!」


 ……イースタン語。しかも、聞き覚えのある声……。


 顔を上げてリク様を見ると、袖からポタポタとワインが溢れている。慌てて、ハンカチを取り出し、雫の飛んだリク様の顔にハンカチを当てた。


「リク様、お洋服が……」

「これくらい何ともありません。アイリさんのドレスは、無事ですか?」

「私は何ともありません。それよりリク様が――」


 ワインを溢した当人が、わざとらしく言う。


「失礼。手が滑ってしまいました」

「……手が滑ったにしては、随分と真っ直ぐこちらへ来ましたね」


 わざとらしく肩を竦めながら、男は口元だけで笑った。


 給仕服を着てはいるものの、その訛りも、こちらを値踏みする視線も見覚えがある。

 イースタン外務局――以前、監査資料の提出を渋っていた官僚の一人だ。


「大国ウェルネシカの大使が、まさかそんな品のない女性と公の場で同席とは……クスッ、実に微笑ましい」

「……」


 ――まずい……。

 私を使って、リク様の評価を下げる気だ。

 腹いせなのか、嫌がらのためにこの場を選ぶなんて。


「……失礼ですが」


 居てもたっても居られず、声を上げた。


「品がないのは、どちらでしょう。このような場で、謝罪よりも嘲笑を優先するのがイースタン代表と思われる方が恥ずかしいです」

「なっ……」

「リク様は、私ではなく“イースタンの信用”を庇われたんです。ここでワインが掛かっていたら、管(・)理(・)も(・)出(・)来(・)な(・)い(・)国(・)と笑われるのは、イースタンですから」


 静まり返る会場で、男は言葉に詰まり、周囲の他国の外交官達が冷めた目を向け始める。


「……なるほど」


 周囲の誰かが、くすりと笑った。


『実に聡明なご令嬢だ。イースタンも、人材不足では無かったらしい』


 聞き取れた人にだけ分かる、言葉の意味。

 ……イースタン側の外交官には伝わらない。


「リク様、着替えましょう」

「そうですね」


 側にいたメイドさんにお願いして、部屋へ案内してもらった――



 ***



 彼女が持ってきたタオルのおかげで、絨毯に染みを残さず済みそうだ。

 僕があの場を収めても良かったのに……彼女は、震えながらも立ち上がった。その姿を側で見れただけで、今日来た価値があったかもしれない。


「こちらのお部屋をお使いください」

「ありがとうございます」


 予備だと持参してくれてたシャツに着替えた。

 室内にある水道でワインの染みと戦う彼女に、「ありがとう」と伝えた。すると、不意に肩を落とし僕に謝罪をするのだ。


「私のせいで……リク様にご不快な思いを……本当に申し訳ありませんでした。ケイト様となら、こうはならなかったでしょうに……」

「貴女は、何か誤解しています」

「……え?」


 彼女の生い立ちと環境が、そう思わせてるのは重々承知している。

 だけど、今大事にして欲しいのはそこじゃない。


「正しい正義と戦った。その事実だけで十分です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。